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ソアラが王太子妃の座に就くルートは、既に白紙撤回される事で封じられている。だが、そもそもそんな常識が通じるのなら、教育代行諸々の問題を起こしたりはしない。
つまり…だ。
『馬鹿の考え休むに似たり』…である。
まぁ『下手の思案は休むに同じ』『何の成果も得られ…以下略』等々、どれでも構わない。
しかし、馬鹿は馬鹿でも行動力のある馬鹿だった。
最早王太子妃になる未来なんてないのに、無い知恵を捻り出した挙句、ルナリス誘拐、そして自殺偽装なんて事を計画したのだ。
ガモールの手も借り、まんまと一人別室に置かれていたルナリスを、王宮から連れ去る事に成功してしまう。
そして冒頭のシーンとなる訳だ。
一方、疲労感に苛まれる別室。
「それにしても…どうしたものかしらねぇ」
王妃が蟀谷を揉みながら呟いた。
あまり人前でするのはよろしくない所作だが、最早そんな些細な事を気にする者等いない。。
宰相もがくりと肩を落としながら、どんよりと床を見つめる。
「どうするもなにも…同じ主張を繰り返すしかないでしょう。
調査班が何か朗報を持ち帰ってくれると良いのですが」
「あぁ、メゾット家の調査はまだ続けているのだったわね」
「はい。
正式な報告は追ってまた…。
ただまぁ、色々と出て来てますね。ルナリス嬢の虐待については、証人もいます。……が、まぁ同じく認めないでしょうし、あーだこーたと言い訳因縁てんこ盛りで、最悪開き直るでしょうな」
「よくもまぁ、あんなのが貴族家…しかも公爵家なんてねぇ」
「先代御夫妻は名に恥じぬ方々でしたが」
王妃と宰相は同時に溜息を吐いた。
そんな様子を見ていたセリオールだったが、少し落ち着きがない。そわそわと扉と王妃達との間を交互に見ている。
「セリオール……視線が喧しいわ…一体何?」
げんなりと、胡乱な目を向けてくる母である王妃に、ハッとした様にセリオールは向き直った。
「ぁ……ぃえ、その……少し席を外しても構いませんか?」
「あ”?」
更に機嫌を下降させた王妃の半眼が怖い。
「まさかメゾットの連中の様子でも探りに行くつもり?
はぁ…今は大人しく休憩しておきなさい」
真面目なセリオールだが、別にそんな事をしようと思った訳ではない。
「違います。
その……」
しかし、余程言い難いのか、口籠ってしまう。
怪訝に片眉を跳ね上げた王妃は、セリオールを更に目力を籠めながらギロリと睨んだ。
「何処へ、何をしに行くつもりかしら?」
「……………」
「「………」」
「………ぁ~…はい、降参です。
その…ルナリスの顔を見に行きたいなと…」
思わぬ言葉に、セリオールと彼の護衛騎士であるキドニー・ビッテン以外は、目をパチクリさせている。
その中で一番最初に我に返った王妃は、ニッと笑み扇を開こうとした。
残念ながら扇は職務を全うし、既に二つ折りとなってその寿命を終えている。
一瞬『ぅ…』と小さく唸った王妃は、手持無沙汰になりつつも更に笑みを深めた。
「あら、そう。
関係は良好だと聞いているわ。
でも、今はまだ仕事中よ? しかも、酷く疲れる仕事なのだから、しっかりと休んでおきなさい」
ルナリス側に色々ありはしたが、セリオールはきちんと交流していると聞いている。自分で選んだ婚約者だからと言うのもあるだろうが、仲が良さそうで安心していた。




