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交易では通るたびに関税がかかり、旅人には通行税が課された。それらは、決して豊かとは言えないミッケン王国の財政を圧迫していた。
ミッケン王家及び貴族達は、可能な限り穏便な解決方法を模索したいが、ヨーゴン王国もイヤノグ帝国も、積極的な解決姿勢は見せない。
兵士…を装ったミッケン王国第4王子ガモール・ミッケンが、自身の功績の為に無謀とも思える策を弄した結果である事は間違いない。しかし国としても、現状では八方塞がりになっているのだ。
そんな折、ガモールはヨーゴン王国の秘された姫が、初めて国外へ出ると言う話を、何処からともなく耳にした。
ヨーゴン王夫妻に愛され、宮殿の奥で隠されるように守られた姫とは、驚くなかれ、実は第1王女フールの事を指す。
彼女は馬鹿で我儘で尊大だが、それはヨーゴン王夫妻…特に王が溺愛し、厳しい躾けから遠ざけた結果だった。
3人いる王女の中で一番の器量好しで、幼い頃は天使とも妖精とも噂されていたほど。あまりの愛らしさに王も王妃も叱る事が出来なかったとか何だとか…。
まぁ、トーマスが美人なソアラを蹴ってフールに求婚したのも、頷ける者がいるかもしれない。
そんな猫可愛がりした姫なのに一度の帰国も許さなかったのは、帰国させれば再び手元から離せなくなるから…だそうで、決して憎まれているとか、蔑まれている等ではない。
尤も、真偽は不明だ。
それは兎も角、ガモールはフール王女を帰国途中で誘拐する計画を立てた。
溺愛された王女を誘拐して上手く操れば、ミッケン王国の目の前を封じている2国――ヨーゴン王国とイヤノグ帝国の間に、不和を齎せるのではないかと考えたのだ。
成功していれば可能性はゼロではなかった…かもしれない。
しかし現実は……フール王女は帰国の途につかなかった。
トーマスは、好みドストライクな王女を離したがらなかったし、ヨーゴン国王夫妻も手元に置いておきたい感情を何とか抑えようと、帰国は不要と決めてしまった。実際には妹王女2人に諫められたとか何とか…そんな噂もちらほらで、全ては伝聞でしかない。
ならばブルームロード王国内で何とか接触し色仕掛けで自分に溺れさせようと、ガモールは予定を変更する。
警戒の目を掻い潜り、王宮…そして王太子妃候補の部屋へ忍び込んだ…までは順調といえた。
夜が更けるまで何とか隠れ、寝室に踏み込んで襲い掛かったまでは計画通りだったが、事が終わった後によくよく見れば、フール王女ではなくソアラだった…と言うオチまでついている。
ガモールの脳内は一瞬で真っ白になった事だろう。
その上ソアラは、ガモールを気に入ったと、メゾット家に縁のある家の騎士を脅し、架空の身分を与えてまで傍に置く事を望んだ。
「んふ…そんなのはどうでもいいでしょう?
ガモールはわたくしを手に入れられたのだし、わたくしも…あんなちんけな弟王子の相手をしなくて済んだもの。WIN-WINと言うものでしょう?」
いつの間にか回り込んできていたソアラが、ガモールの隣に座ってしな垂れかかってくる。
彼女の白い指先が、ガモールの衣服の合わせ目にゆっくりと伸びた。
「おいおい、お前正気か?
親の前だろうがよ」
「あらぁ、大丈夫ですわ。
二人共、愛人との情事を隠したりしませんでしたもの。ねぇ?」
流石に他国の王族の前で、暴露されたくないと思う程度の羞恥心は持ち合わせていたらしい。
メゾット夫妻は揃って苦い顔をした。




