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そんな日々を過ごすうち、妃教育も滞る事なく、やっとセリオールの婚約発表できる日を迎えた。
流石にトーマスの方は、どんなに腐っても相手は隣国の王女だ。相手国の手前、あまり梨の礫を貫く訳にもいかず、少し前に公表している。
一連の騒動で蚊帳の外に置かれていた貴族家は、何となく事情を察しながらも口を噤んで冷静に受け止めたが、国民向けの発表には別のシナリオが用意されていた。
『トーマス殿下は隣国であるヨーゴン王国との関係を重んじ、彼の国の王女フール殿下との婚姻を望まれ、無事に成立した。
しかし姫君への愛が深く、王太子の座は第2王子セリオール殿下へ譲り、御自身は隣国との縁を深めつつセリオール殿下の助けとなる事を希望された。
また、セリオール殿下も、かねてよりメゾット公爵家の秘された才女ルナリス嬢を見染めており、是非とも…と願った末に婚約が成立した事を広く告げる。
なかなか公表に踏み切れなかったのは、両殿下が婚約者の体調他を気遣っての事であった』
……と。
民達は作られたストーリーを歓迎した。
誰だってゴタゴタな舞台裏なぞ知りたくないし、生々しい話より美しく整えられた話の方が受け入れやすいし、何より耳障りが良い。
やっとこれで落ち着いて話が進められる…と、一同がホッと胸を撫で下ろしたのだが……。
これに納得していなかったのは、ルナリス以外のメゾット公爵家面々である。
「わたくしが戻ってきましたわ!!」
と、すでに過去の人になりつつあったソアラが、公爵夫妻と共に王宮へ現れたのだ。
これまでも、メゾット夫妻が抗議に来るたび、王宮正門前で騒がれては困る…と、中門までは通していたのだ。その場で留め、奥へ通す事は許可していなかった。
しかしこの時、運悪く他の馬車が通る予定があり、隙をついて中門を通り抜けられてしまう。
慌ててなんとか止めようとするが、ソアラと公爵夫妻は王宮の中央廊下を堂々と通り、広間まで辿り着いてしまった。
だが、そこで騒がれるのは流石に不味い。仕方なく奥の一室で話す事となった。
まさかその席で、あんなに話が通じない相手がいるのかと、一同が唖然する事になるとは思わなかった事だろう。
いざ対する…となって王は逃げた。
居たとしてもなんの助けにもならなかっただろうから、別に構わないと言えばそうなのだが、あまりに情けなさすぎる。
仕方なく、王妃とセリオールが受けて立つ事になったが、対面するなりメゾット公爵が口を開いた。
「アレは外に出せる様なモノじゃない。
当家の面汚しなのだ。此方の面子も考えて欲しいものですな。
なんだね? 王家は我が公爵家を愚弄したいと??」
実の子に対する言葉とは思えない。
礼儀もなっていないし、その上どう聞いても、喧嘩を吹っ掛けているようにしか聞こえない。
言い捨てた公爵にも怒りが湧いたが、メゾット公爵夫人もブチ切れそうになる。
「アレが妃に…なんて聞いておりませんわ。
王太子妃となるのはソアラ以外におりません。
その辺の雑草が珍しかったのかもしれませんが、雑草如きが王妃になれる訳がないでしょう…国母でしてよ?
はぁぁぁ~~~~ありえませんわ!」
クイっと厭味ったらしく眉尻を引き上げながら、扇を閉じて目線の温度を下げる夫人の言葉に、調子に乗ったソアラも頬を膨らませ、上目遣いで捲し立てた。




