14
どんな理由・事情があるにせよ、ソアラを自分達の手の内に連れ戻している間に、ルナリスは王家に囲い込まれ、やっとソアラを領地と言う安全圏に戻した頃には調査も進み、面会も不可能になっていた。
それでも諦める事が出来ず、メゾット公爵夫妻は、ルナリスに会わせろ、連れ帰させろと何度も王宮にやってきては抗議を繰り返していたようだ。
あの手この手で面会を阻止する王宮側に、メゾット公爵夫妻が出した抗議はかなりズレた内容だった。
「ルナリスには王宮なんて不釣り合い」
それはまぁ…頷ける言い分だ。否定要素がルナリス自身にも見つけられない。
「ソアラが寂しがっている」
それは絶対にない、断言出来る。
妃教育前倒しで、王宮に入るとなった時に初めて会ったのだ。ソアラの方もルナリスと言う妹の存在を知っていたかどうか怪しい。
「姉妹を引き離すなんて」
実の姉妹である事は嘘ではないようだが、それを実感した記憶なんてない。
それ以前で家族扱いされた事もない。第一先述したように、互いの存在を知らなかった可能性まであるのに、通用する言い分ではない。
そんな抗議を後目に、セリオールの采配でルナリスの周辺は静寂が保たれた。
当然だが妃教育代行疑惑については、その後も色々と問われた。
ただ、その追及は緩やかなもので、王宮側の思惑はわからないが騒ぐつもりはないように見える。
結局、済し崩し的に、ルナリスが妃教育を続ける事になった。
いや…済し崩しと言うのは間違いだ。
セリオール自身が希望していたように、ルナリスを含む数名の婚約者候補の資料は揃えられた。それらの資料を見比べ、過去の対面時の印象諸々まで比較した結果、ルナリスが続ける事になった…と言うのが正解である。
そう、セリオールが自身の婚約者に…と、ルナリスを希望した。
とは言え、そんな諸々はルナリス本人には何も告げられていない。
その為、引き続きうけている教育が、王太子妃としての物だとは思っていなかった。単に貴族令嬢としてあまりに情けない姿を憐れまれたのだろうと、教育を施してくれる事に心底感謝していたくらいだ。
勿論、憐れだからと言ってこんなに良くして貰って良いのか…と言う不安や罪悪感はあった。
ルナリスは、強要されていたとは言え王家を騙そうとした側なのに、こんなに穏やかで、しかも教育迄与えて貰えるなんて、普通ならば有り得ない。
そのくらいは、ずっと外界と遮断されて育ったルナリスにもわかる。
今にして思えば思考が回っていなかったのだろう。気付ける要素はそこかしこにあった筈なのに、まさか自分がセリオールの婚約者候補だったなんて思っても居なかった。
一応証人だし、公爵家に戻すのは不味いのかな…? とか、考えたのはその程度。
ルナリスにしてみれば、公爵家に思い入れはないし、帰りたいとも思わない。
自分の為に手を尽くそうと足掻いてくれた使用人達が無事なら、もうそれだけで良かった。心残りはそれだけだったから…。
なのに、穏やかで充実した毎日に、心はどんどんと落ち着いて行く。受ける教育そのものは厳しいのに、初めての貴族令嬢らしい生活に心から感謝していたのだ。
それで周囲を見る余裕が出来たのだろう。
あの時はセリオールもそうだが、ルナリスが見掛ける事が出来る人々は、皆一様に疲れ切っていた。
明日は投稿が12時と17時です。




