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初めて対面した姉ソアラは、息を呑むほど美しかった。
しかも実の姉と聞いて、信じられないと首を横に振ってしまう程。
ルナリスの様子に満足したのか、ソアラは見下すように笑んだ。
そんな姉ソアラと共に、これまた初めての外…そして初めての王宮へと足を踏み入れた。
聳り立つ白亜の城壁が、まるでルナリスを拒んでいるように見えて、逃げ出したくなる。
これから自分はソアラの役に立たねばならない…それが王家を騙す事だと理解していても。
夫妻に『それは許されない事だ』と言い、何とかやめさせようとしたが、それを言えば使用人達の命で脅された。
その上、煽るように『バレなければ罪にはならない』と、嘲笑ったのだ。
ルナリスは、きっとバレる…と思ったが、他に道はない。ソアラの役に立ってみせなければ、心を砕いてくれた使用人達は無残に命を奪われるだろう。
何しろ血の繋がったルナリスにも、これまでの様な仕打ちが出来る人達なのだから。
もし解放される前に露見してしまったら、その時は王家に懇願するしかない…と、腹を括った。
使用人達は巻き込まれただけなのだから、温情は掛けて貰えると思う。王家を騙そうとした自分は助からないだろうが、それは仕方ない。
ただ、最後に一目だけでも会えない事は悲しかった。
(そうしてあの時、てっきり断罪されるのだと思っていたのに、セリオール様の言葉で頭が真っ白になってしまったんだったわ)
「名前はルナリス…?」
「……はい」
「じゃあこれからはルナリスと呼んでも良い?」
「……はい」
この部屋にはルナリスしか居なかった。だから本人確認なんて必要ない手順だろうに、やはり最終確認が必要なのだなと理解する。
ルナリスは自分を落ち着かせるように、シーツを握る手を更に固く握った。
まるで真綿で首を絞められているような、そんな恐ろしさが迫ってくる。
(さっさと罪状を言ってくれれば良い。
さっさと刑を宣告してくれれば良い)
じわじわと追い詰められるような焦燥を感じていたルナリスの拳を、暖かいモノが覆った。
思わず瞑っていた目を開く。
すると、思った以上に近い位置に、セリオールの美貌が目に入って息を呑んだ。
「……話がしたかったんだけど…」
困ったように目を伏せるセリオールに、ルナリスは慌てて土下座した。ベッドの上で…と言うのが締まらないが、自分は罪人なのだから何を置いても先ずは謝るべきだと思ったのだ。
「申し訳ございません!
私は罪を犯しました。どうぞ如何様にも御処分ください!!」
ベッドの上でガタガタと震えながら、必死に額を擦り付け謝罪を叫ぶ様子に、セリオールは声を詰まらせた。
「……怖がらせてしまったんだね…。
私は君に罰を言い渡しに来た訳じゃないんだ。
少し話をして…そうして、君を知りたいと思って…。
それなのに怖がらせて済まない…ごめん」
断罪ではないのか…と、恐る恐る頭を擡げたルナリスに見えたのは、悲し気に顔を歪めるセリオールだった。
「ぁ、あの!
……それでは…話って……ソアラ様の代わりの話……私が犯した罪の事、では…ない、の…ですか…?」
一見冷たそうに見える硬質な瞳なのに、向けられる視線はとても優し気で、でもどこか悲しさを含んでいる。そんな彼に、ルナリスはどうすればいいのかわからずおろおろと狼狽えた。




