たどり着ける場所
柔らかい光に包まれた世界。
穢れのない澄んだ空間。
そこに存在するものは何もない。
なのに、その中を何かが漂ってゆく。
あたし、死んだのかな・・・
やがてその何かは、時折光を反射し存在を示し始める。
そうか
これが、死・・・、なのかな
死んでしまえば、肉体はただのモノになって消えるだけ
それを拠り所にしていた意識も同時に消える
残っていた唯一のあたしの細胞も消えた
馴染んだ体も消えた
そして、機体さえも・・・
もう、あたしの意識がとどまる場所はないというのに
消えて当然なのに
それでも、あたしはあたしを感じている
だったら、今のこのあたしはなんなんだろう・・・
ここは、周りには、いや全てにおいて何もない
何もない場所で、それでもあたしは存在しているの?
こんな場所で・・・
誰もいない・・・
あたしだけ・・・
こんな孤独なところで・・・
その存在は、さらに漂う。
距離も、時間さえも意味をなさないこの空間で・・・。
どれだけ漂ったのだろう。
何十年、何百年、何千年・・・。
いや、それは肉体があった頃の感覚に過ぎない。
ここでは時を数えることに意味を持たないのだ。
さらにただよう。
やがて、それはその存在の意味に気付く。
どこまでいっても、何もない・・・
いや、違う・・・
違うよ・・・
全てがない
だけど、全てを感じている気がする・・・
ああ、わかるよ みんなのことが・・・
あたしは全てを感じながら、漂い、そして広がっている
ここはそんな場所なんだ
このまま広がり続けたら、一体どこまで感じられるのだろう
不思議・・・
もう、息苦しさは感じない
それにしても・・・
ああ、なんて軽いんだろう
全てをなくしたというのに・・・
いや、全てをなくしたからだ
あたしはずっとここにいたんだ
ずっと感じていたこの場所に
ほんと・・・
これは
『最高の軽さだ!』
その存在は光を集め始めた。
周囲と馴染みながらも決して溶け込むことはなかった。
確固たる意識として・・・。
ここは、全ての拠り所を無くしてもまだなお存在し続けることが出来るモノだけがたどり着ける場所。
・・・世界の観測点。




