仲間の死
輸送機のコクピットで、モニターに表示される『フェイクワンLOST』の文字を上田は呆然と見つめていた。
コクピットの中はしんとして、誰一人声を出さなかった。
「大丈夫・・・。研究所のオリジナルがあれば、体は作ってもらえる。だから大丈夫」
作戦前に速水が緊急で通信を送って来たことが気にかかりながらも、上田は自分を安心させるように呟いた。
しばらくして、古川が着陸の指示を出した。
その直後だった。速水から、研究所の報瀬が亡くなったと聞かされたのは・・・。
『何もなくなってしまった・・・』
上田はその場に崩れ落ちた。
輸送機のコクピットの動きが止まり、重い空気に包まれた。
独立遊撃部隊にとって、仲間の死は初めての経験だった。
誰もが俯いたまま、その悲しみに耐えていた。
「・・・まだ、やることがある。3人のパイロットを無事帰還させる」
古川の声は哀しさと悔しさで震えていた。
「垂直着陸を行います」
遠藤が操縦桿に力を入れた。
「機体回収の準備をするよ」
そう言って立ち上がった大森は、一瞬体の力が抜けたようにふらついた。しかし、立ち止まることなく格納庫へと向かった。
「行くよ」
藤代は涙を浮かべながら大森に続いた。
古手川も城山も、無言で藤代に続いた。
『あたしが3人に伝えなきゃ・・・』
上田はシートに埋もれた体に力を入れた。
機体の回収後、コクピットに戻った3人のパイロットに、上田は事実を告げた。
「それってどういうこと・・・」
市ノ瀬が顔を歪ませながら上田に聞いた。
上田は何も言わず、小さく震えながら下を向いていた。
「ねぇ、どういうこと?」
市ノ瀬は梅原に聞いた。
梅原は何も言わない。
「どういうことって聞いてるでしょ」
市ノ瀬は苛立ちながら梅原の肩に手をかけ何度も揺すった。
梅原は何も抵抗せず、拳を強く握りしめ、ただ耐えていた。
「ね、教えて。どういうこと」
市ノ瀬は水瀬に聞いた。
水瀬も黙って俯いたまま、目からはとめどなく涙が流れ床を濡らしていた。
「どうして、何も言ってくれないの。どうして・・・」
市ノ瀬は床に崩れるようにしゃがみ込んだ。
市ノ瀬も報瀬の死がわかっていた。けど、それを誰かに否定して欲しかったのだ。
「料理を、教えてくれるって、約束したのに・・・」
俯く市ノ瀬から涙が落ちた。
すると堰が外れたように大声で泣き出した。
水瀬も立ったまま大声で泣いた。
梅原はそれでも歯を食いしばり、泣かないように耐えていた。しかし、抑えることのできない涙が床に落ちた。




