↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/88

命日と誕生日


独立遊撃部隊本部 ブリーフィングルーム


 4機のNCBM、そして2本のレールガン。作戦の準備は整った。

 「作戦の実行は全てこちらに任されているわけだが、報瀬君の言うようにこちらから仕掛けると言うことで皆に異論はないか」

 古川が全員に向かって言うと、すぐ皆が大きく頷いた。

 「最終確認だ。作戦の目的は生殖雌個体の討伐。報瀬、水瀬ペア、及び梅原、市ノ瀬ペアでレールガンの使用によってこれを行う。レールガンは2本のみだが、バッテリーは予備が二つある。降下コンテナで落とすことが可能だ。次に整備班。独立遊撃部隊輸送機には、大森、藤代、水瀬の代わりに城山、そして古手川が機乗。これに加え、軍から機内整備ができる輸送機が1機付いてくれる。これには大野チーフが乗り、こちらの輸送機に何かあったときのためのバックアップをしてもらう。また、予備のバッテリーはここから落としてもらうことになる」

 全員が自分の役割を確認するように古川の話を聞いていた。

 「何か質問は?」

 全員が納得した作戦だった。もう、手を上げるものはいなかった。

 「それでは、明後日の10:00、作戦を実行する」





独立遊撃部隊本部 宿泊棟


 作戦前夜、報瀬は水瀬の部屋のドアを叩いた。

 すぐに返事があり、ドアが開く。

 「どうしたんですか?」

 報瀬が突然やって来たことに、水瀬は少し驚いた様子だった。

 「ちょっと、いいかな?」

 「どうぞ」

 水瀬は報瀬を部屋に招き入れた。

 「なんだ、もうやってたのか」

 机の上には開いたポテトチップスの袋があった。

 「これ、あとで食べて」

 そう言いながら報瀬は後ろ手に持っていたポテトチップスを差し出した。

 「ありがとうございます」

 水瀬は嬉しそうに受け取ると、部屋の隅にあった椅子を持って来て報瀬の前においた。

 報瀬は、ありがとうと言って座ると、食べかけのポテトチップスの横にある開いたノートを見た。

 そこには水瀬の乗る3番機の整備記録が記されていた。

 「勉強してたんだ」

 「あ、はい」

 水瀬は少し照れながら椅子に座った。

 「どお、緊張してる?」

 報瀬が聞くと、水瀬は少し考えるポーズをした。

 「緊張してないって言うと嘘になりますけど、でも、学校の体育祭よりはいいかな。あたし運動が苦手なんです。特に走るのが。嫌だったなぁ、体育祭。でも、NCBMに乗ればそんなことは関係なしに動き回れますから」

 水瀬は、あははと笑った。

 「じゃぁ、あたしの機体についてこれるね」

 「はい」

 水瀬は当然のように言った。

 「え? ひょっとして、あたしがちゃんと動かせるか心配で来たんですか?」

 「慧ちゃんがしっかりと機体を動かせるのは分かってるよ。ただ、緊張して震えてないかなって思っただけ。でも、ポテチ食べてるくらいだから安心した」

 水瀬は、緊張するとつい何かを食べたくなってしまうことは黙っておこうと思った。

 「心配していただいて、ありがとうございます」

 水瀬はペコリと頭を下げた。

 「あ、今年は水瀬先生のお墓参りに行けなかったなぁ」

 報瀬が急に思い出したように言うと、水瀬ははっとしてカレンダーを見た。

 「ほんとだ・・・」

 「なんだ、忘れてたんだ。それなら自分の誕生日も忘れてたでしょ」

 「はい・・・」

 「だったらさ、今年は一緒に行こうか。きっとうちのとうさんはこっそり一人で行ったと思うから。この作戦が終わったら、一緒にお墓参りに行こう。そしてそのあとは慧ちゃんのお誕生日会だ」

 水瀬は嬉しそうな顔を報瀬に向けた。

 「じゃぁ、約束だからね」

 報瀬はそう言ってポテトチップスをひとつ口に入れると、水瀬の部屋を出て行った。

 




NCBM長野基地 作戦司令室


 「入笠山南東のケルベロスが消えた位置周辺半径50キロの住民の避難が完了しています。またそこからさらに30キロは避難準備区域としました」

 笹村が指令席に座る篠原に告げた。

 「戦闘爆撃機は?」

 「いつでも飛び立てます。大型輸送機は先ほど滋賀に向かいました」

 「もう、我々には手出し出来ることはないが、サポート体勢は抜かり無いようにな」

 「はい。しかし、本当にケルベロスは現れるのでしょうか?」

 笹村が不安な顔を向けた。

 「きっと出る。あの子は、そう言う子だ」

 篠原は壁の時計を見た。

 作戦開始まで、あと12時間を切っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。