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友人


独立遊撃部隊本部 訓練場を見渡せるバルコニー


 徹夜で報告書を完成させた報瀬は、少し仮眠をとったあといつものバルコニーで缶コーヒーを飲んでいた。すでに陽は高く、仮眠にしては長く寝過ぎた感じだった。

 風に揺れる木々を見ながら、ぼんやりと報告書の内容を思い出していた。

 結局、報瀬が報告書に書いたのは実際に起こった事実だけで、自分の感じたこと、思ったことは一切書かなかった。

 しかし、その時に感じたことを思い出し考えれば考えるほど、それは確実なことに思えてきて、やはり報告書に書くべきだったのだろうかと、頭を悩ませた。


 異空間から出現した生殖個体は、きっと研究所に向かおうとしたのだろう。

 そこは、最初に怒りをぶつけてきた奴のいる場所。

 けど、あの時の感じでは、それはケルベロスの思うところではなかったはず。

 突発的にこの世界に落ちてしまったようなものだったんじゃないかな。

 だから、攻撃されたことで異空間に逃げ込んだんだ。

 そして、異空間から抜け出す時、ケルベロスは『ミツケタ』と言った。

 その時は何を見つけたのかわからなかった。

 でも、それはあたしだ。間違いない。

 ケルベロスの記憶。

 それは、かなり初期の記憶。

 それは怒りと結びついたもの。

 それがずっと記憶として受け継がれてきた。

 怒りの記憶。

 NCBMとの記憶。

 怒りとNCBM。

 ケルベロスの目的は、怒りの記憶と結びついたNCBMを倒すこと。

 じゃぁ、その怒りの元となったのは・・・。

 やがて気付く。

 最初に怒りをぶつけてきたものの存在に。

 だから、『ミツケタ 』なんだ。

 それがわかれば、そいつを潰そうとするのが当たり前だよね。

 それは、あたし。

 全ての原因はあたしだったんだ。


 やはり、このことを報告書に書くべきだったのだろうか。

 せめて、速水には話しておいた方がいいのではないかと報瀬は思った。

 それともう一つ重大なこと。

 

 あたしは一体どこにいるんだろう・・・。


 この自分が当たり前になっていたので、自分がどこにいるのかなんて考えたこともなかった。

 しかし、コクピットにいないことだけははっきりしているように感じていた。

 その時、携帯端末の呼び出し音が鳴った。

 慌ててポケットから端末を取り出し画面を見ると、高井真琴の表示があった。

 「報瀬です」

 少し緊張して回線を開いた。

 『あ、報瀬。久しぶり』

 端末から聞こえる声は、いつもと変わりない真琴だった。

 『この間はありがとう。急に報瀬がロボットから出てきてびっくりしたけど、報瀬がいてくれて安心できたよ。すぐに救助の人が来てくれたし。ほんとにありがとう』

 「そんな・・・。あんなことしてるの、隠していてごめんね」

 『何言ってるの。軍って厳しいんでしょ。簡単に話せないことくらいわかるよ。あ、ところで今よかった? 忙しくない?』

 「ある作戦の前の休憩時間だから大丈夫」

 『そっか。あのでかいのと戦うんだね』

 入笠山に出現した巨大なケルベロスのことは何度もテレビのニュースで取り上げられていた。

 「うん。でも、あれが最後だと思うから」

 『気をつけてね。それが終わったら、みんなで大学で待ってる』

 『待ってるからね』

 『待ってるよ』

 突然声が重なった。大西順子と井澤幸子だった。

 「二人もいたんだ」

 『いるよ』

 3人の笑い声が聞こえた。

 『じゃぁ、きっと忙しいと思うから、もう切るね。来年は絶対に海に行こう』

 「うん」

 『じゃぁね』

 『またね』

 「ありがとう・・・」

 通信を切る。

 3人の顔が浮かんだ。

 連絡をくれたことが、とても嬉しかった。少し涙が出た。

 また、大学で、4人で、いろいろな話がしたいと心から思った。


 

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