接合開始
バイオエレクトロニクス研究所 無菌格納庫
無菌処理をされた大型格納庫には、3番機となる頭、胴、手足などNCBMの各部位が仰向けの状態でそれぞれの接合位置に配置されていた。
パーツはすでに解凍されており、生体を維持するための還流液を循環させるポンプの音が唸るように響いていた。
「各パーツの準備終わりました。全員集合してください」
無菌防護服の大森がヘッドセットを通して言うと、同じ防護服姿の者たちがNCBMの頭部周囲に集まってきた。
防護服の背には大きく名前が書いてある。それがなければ誰なのか全くわからなかった。
「それでは、配置を説明してもらいます」
大森が全員が揃ったことを確認すると、背中に井桁と書かれた防護服が説明を始めた。
「大野たち長野班は、大野の指示のもと電気系の配線を担当。大森、水瀬、そしてわたしで神経の接続。そしてその後全員で筋肉皮膚などの接合を行う。一気に全身の接合を行うのはみんな始めてだが、いつもやっていることの繰り返しだと思えばいい。それだけの技術はこの全員が十分に持っている。何も問題はない」
緊張の中、話を聞く全員が頷いた。
藤代、古手川、城山と書かれた防護服の3人は、お互いの顔を見合わせ、もう一度頷いた。
「それでは、開始」
「俺と藤代で右側をやる。古手川と城山は左だ。神経班と重ならないように始めろ。そのあとは神経班の後に続けばいい」
大野がすぐに指示を出した。
「井桁さんはどこから始めます?」
大森が聞いた。
「頚部をやろう」
「じゃぁ、慧ちゃんは右腕をやって、あたしは左腕をやるから」
「了解です」
「電気班は足からやるぞ」
「はい」
全員が器具の入ったコンテナを持つと、それぞれの担当箇所に向かった。
無菌格納庫の隣の部屋では、野嶋、速水、そして山内が3番機に収めるコクピットの調整を行なっていた。
「システムのアップデート始めまーす」
シートには端末タブレットを繋いだ山内が座っていた。
「どうだ、使えそうか?」
野嶋がコクピットの外で端末をつないでいる速水に聞いた。
「コクピット側の神経配置が随分と古いものですから、今のパーツの神経繊維とはかなりの数がつながらないと思います。通常のパイロットなら問題とならないでしょうが、水瀬さんだとNCBMの動きがかなりぎこちなくなるかもしれません」
「いっそ再構築をかけるか?」
「でも、李依ちゃんからもらった戦闘データを見ると、水瀬さんがこのコクピットで遠隔操作をした時にかなり良い動きをしているんです。再構築をかけてリセットしてしまうと、それが全て無駄になってしまいます」
野嶋は少し考え込んだ。
「それなら、水瀬君をコクピットに乗せて、神経接続をした状態でコクピット側からの神経伸長に刺激を与えてみてはどうだろう」
「ああ、良いですね、それ。それだとまさしく水瀬さんの専用機体になりそうです」
速水は水瀬がどれだけ神経を伸ばすか、とても興味を持った。




