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どこにいるの?


独立遊撃部隊本部 輸送機格納庫


 「コクピット以外で、培養に時間のかかる生体パーツは全て揃っています」

 輸送機から降りた大森に、大野が何ページもあるパーツのチェクリストが表示されたタブレット端末を渡した。

 大野の後ろで古手川と城山が額の汗を拭っていた。きっと大急ぎでパーツの中を走り回り、全ての確認をしたのだろう。

 「お疲れ様でした。確認していただいた必要なパーツを冷凍コンテナのまま研究所に運びます。長野からの輸送機到着と同時に積み込みを行う予定です。みんなも一緒に行くことになるのでその準備もお願いします」

 「一気に全身の接合を行うのですか?」

 城山が聞いた。

 「そう。一気にね。きっと徹夜になる」

 大森が軽く笑いながら言った。

 「一気に全身なんてやったことがないです」

 古手川が不安な顔をした。

 「大丈夫だよ。絶対に出来る。全身って言ったって、やることはそれぞれのパーツの接合の繰り返しだから。それに井桁さんが来てくれる」

 「そりゃ安心だ」

 大野はそう言うと、不安そうな古手川の肩を叩いた。




 「とりあえず3人は休んでいいから。食堂で何か食べてきたら?」

 輸送機から降りた報瀬たち3人のパイロットに上田が声をかけた。

 「そうだね。そうしようか」

 報瀬は梅原と市ノ瀬の背を押すように食堂に向かった。

 ちょっと気まずい雰囲気で、黙ったまま廊下を歩く。

 「あ、あたし香織ねえさんに連絡しなきゃいけなかった。二人で行って」

 もじもじするような二人の態度に自分が邪魔だと判断した報瀬は、二人に即席の笑顔を向けると食堂と反対の方向へと歩き出した。

 ちらりと後ろを振り返る。

 市ノ瀬が梅原の腕に抱きついているのが見えた。

 報瀬はいつものバルコニーに向かった。

 そしていつものように手すりに背をもたれかかるように座る。

 すでに陽は傾き、木々の間からわずかに差し込むオレンジ色の光が風に揺れる葉をチカチカと照らしていた。

 ポケットから携帯端末を取り出すと速水に繋いだ。

 「あ、報瀬でーす」

 『よく戻ってこれたね。体は大丈夫なの?』

 速水は報瀬を心配するように聞いてきた。

 「全然大丈夫」

 報瀬は即答した。

 『向こうでもずっと動けてたの?』

 「うん。変わらず動けてたよ」

 『あのさぁ、コクピットがずっと眠った状態なんだけど、報瀬は気付いてた?』

 「え? 知らない。そうなの?」

 報瀬の驚いた声に、報瀬が本当にコクピットのことは知らないのだと思った。

 『それと、山内君がイータ波の逆探知装置のテストで、報瀬の位置を当ててたのをおかしいとは思わなかった?』

 報瀬は速水がなんのことを言っているのかわからず、しばらく考えた。

 「あたしからイータ波が出てたってこと?」

 『そう、それよ。おかしいとは思わなかった?』

 「全然・・・」

 『じゃぁ、報瀬は今どこにいるの?』

 「どこ・・・、って。今はここかな」

 報瀬は自分を指差していた。

 『今って、違うこともあるの?』

 速水が驚くように言った。

 「一応、今、体はこれしかないから・・・、ってことかな?」

 報瀬も自分のことながらよくわかっていない様子だった。

 『まぁ、体が問題ないならいいけど、こっちには来るんでしょ。その時詳しく調べよう。向こうの世界でのことも聞きたいし』

 「あたしは行かないよ。そっちだって忙しくなるんでしょ。あたしは向こうの世界の報告書書かなきゃいけないし。だから向こうのことはそれ読んで」

 報瀬は報告書のことを考えると気が重くなった。

 『確かにそうだね。でも、作戦が終わったら、しっかり調べるからね。それまでにおかしなところがあったら必ず連絡するんだよ』

 「はーい」

 『じゃぁ、切るからね』

 「うん。心配してくれて、ありがと」

 会話が終わり空を見上げると、すでに星が出ていた。

 ゆっくり立ち上がると、大きく背伸びをした。

 「そーなんだ・・・」

 報瀬は速水の言っていたことを考えていた。

 「あたしにとって、コクピットってなんなんだろう・・・」

 首筋から、少し開いた胸元に冷たく感じる風が流れた。そこで報瀬はまだパイロットスーツを着ていることに気付いた。

 梅原とコクピットにいた余韻が残っているように感じた。

 「ああ・・・。報告書書かなきゃ・・・」

 報瀬は大きくため息をつくと、バルコニーを離れた。


 次の日、独立遊撃部隊本部の滑走路に2機の大型輸送機がやってきた。そしていくつもの大型コンテナを積み込むと、整備班とともに研究所へと飛び立っていった。



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