4機目
独立遊撃部隊輸送機 コクピット
山形の山中で0番機と1番機の回収後、輸送機の格納庫では直ちに栄養パックの交換が行われた。
そして、梅原と市ノ瀬が感動の再会の余韻を味わうことなく、帰還の途中の輸送機内では緊急ミーティングが行われていた。
「二人の話から、あの異空間は完全に消滅したと考えていいだろう。もう、ケルベロスには逃げ込む場所がない。いずれ地中から出てくるはずだ。その時までに早急に対策を打っておいた方がいいだろう」
統合軍本部からミーティングに参加している篠原がモニターを通して言った。
「爆撃も効果がないとなるとやはり一点を狙うしかない。それが出来るのは我々にはレールガンしかないわけだが、3人はどう思う」
古川が、報瀬たちパイロットに意見を求めた。
「1発で倒せないけど、穴を開けることはできたわけだから、それなりに効果はあります。けど、レールガンで撃てるのが2発だとおそらく倒すまでにはいかないと思います」
まず、報瀬が言った。
「あと、1発。いや、できれば2発欲しいかも」
市ノ瀬が言うとそのまま梅原を見た。
「報瀬さんがレールガンで、僕たち二人がバッテリーを担いで行ったら、合計で4発撃てますか?」
「いや、それは無理だ。レールガンの弾倉の換装には時間がかかるし現場ではできない。なのでバッテリーが2つあっても結局は2発しか撃てない」
梅原の問いに篠原が答えた。
「じゃぁ、レールガンを2本にしたら?」
「でも、誰かが1機でレールガンとバッテリーを持つことになるよ。その重量でケルベロスのあの動きについていけるかな」
「そっか。狙われたら、危ないね」
「もう1機NCBMがあればいいのに・・・」
皆が梅原と市ノ瀬の会話を聞いていた。
「レールガンは軍でなんとかなるだろう。しかし、もう1機NCBMを造るとなると・・・」
篠原は上田に意見を求めた。
「1から躯体を培養するにはかなり時間がかかります。さらにコクピットも必要ですから・・・」
「いや、時間がかかるからこそ、可能性のあることはすぐにでも始めるべきかも知れん。それは研究所で可能か?」
篠原が上田に聞き返したところで、水瀬が大きく手をあげた。
「あの、短時間で仕上がる機体があります」
皆が一斉に水瀬を見た。その時、大森も気付いた様子だった。
水瀬は全員の視線が自分に向いたことに少し緊張しながら話を続けた。
「今ある3機の予備の凍結パーツ、それとあたしが遠隔操作で使ったコクピットを使えばほとんどのパーツが揃うはずです」
「それだ」
市ノ瀬が声にすると、全員が同意するように大きく頷いた。
「慧ちゃん、パイロット出来る?」
上田が聞いた。
「出来ます」
水瀬がはっきりとした口調で返した。
「4機目の機体のパーツは本部の大野さんに連絡してすぐに照会にかかります」
大森はそう言うと大野に通信を開いた。
「全身の接合は研究所の無菌格納庫が必要になるはず。速水先輩に連絡してみます」
上田は携帯端末を取り出すと、速水に繋いだ。
「レールガンはこちらで2本用意する。それぞれ準備があるだろう。ミーティングはこれで一旦終了しよう」
篠原がモニターを離れた。
「あ、待ってください」
突然梅原が大きな声を出した。
すぐに篠原が何事かと再びモニターに映った。
「僕たちがケルベロスの巣から持ち帰ったあの塊、レールガンの弾に使えないでしょうか? ちょー硬いと思うので」
「あ、それいいかも」
市ノ瀬はその塊の割れた破片から梅原に作ってもらったペンダントを思い浮かべた。
「なるほど。塊は軍で保管している。弾体として使用可能か工作部に確認してみる。ありがとう」
篠原はそう言って席を離れた。
「速水先輩が、すぐに格納庫の無菌処置を行うそうです」
「パーツのコンテナを研究所に運ぶには輸送機が何機必要だ?」
「冷凍機能付きの大型輸送機が2機あれば間に合います」
「長野基地から回してもらおう」
「そうだ。井桁さんに手伝ってもらえないでしょうか。全身のパーツを一気に接合したのは今では井桁さんしかいないんです。きっとあたしたちを上手に動かしてくれるはずです」
「わかった。頼んでみる」
「本部到着。着陸します」
みんなの声が飛び交うコクピットで、遠藤は輸送機を滑走路に向けた。




