おまじない
知らない空間に迷い込んだ直後のふたり
「システムのスキャン終わりました。機体に異常はありません。栄養パックの残りは25%ほどです」
「こっちの機体にも異常なし。栄養パックは23%。重い荷物持ってる状態での戦闘だったから、消費が激しかったね」
報瀬と梅原はお互いのコクピットで無線を使って会話していた。
二人はケルベロスが異空間に逃げ込む際に一緒に引き込まれ、機体ごとこの未知の空間に送られていた。
ここには薄く白い霧のようなものが立ち込めている。霧のせいで周囲が見えないかというとそうでもない。クリアではないが遠くまで見渡すことができるような気がした。気がしたというのは、視界に入る範囲には何もなく距離感が掴めないからだった。
レーダーは全く機能していなかった。それはこの空間にレーダーを跳ね返すものが何も存在していないことを示していた。霧のように見えるものも、実際には霧ではないのかもしれない。
どうやら上下の概念は存在するようだ。重力のようなものもありそうだ。足元に地面があるかどうかはわからないが、2機は普通に同じ状態で立っていた。
「武器は?」
「ライフルと弾倉3つ、そして腰に刀剣です。背中のバッテリーも大丈夫です。チャージはあと1回ですけど」
「こっちはレールガンに腰のライフル、弾倉は4つ」
「じゃぁ、十分戦えますね」
「そうだね」
「追いましょう」
「うん」
この空間に入った時、わずかにケルベロスの後ろ姿が見えたような気がした。
ふたりはその方向に向かって機体を進めた。
しばらく進んだところで、報瀬の機体が止まった。
「どうしました?」
梅原も機体を止めた。
「位置情報は全くダメだね。スタートの位置をマークしてたんだけど、情報の更新ですっかり消えちゃった。移動した距離すら出ない」
「ああ、こっちもすっかり迷子です」
これで全く自機の位置がわからなくなったことになる。
「ごめんね。あたしだけ入ればよかったのに、梅原君まで巻き込んじゃって」
「僕は、大丈夫です。でも、報瀬さんすごいですね。ここでもちゃんと動けてる」
「ああ、そういえばそうだね。でも、そう考えると、本当にあたしだけ来ればよかった・・・」
報瀬はそこでため息をついた。
「まずは、ケルベロスを倒して、脱出のことはその後に考えましょう。きっとみんなが助け出してくれますよ」
「そうだね」
二人はまた機体を進めた。
しかし、どこまで行っても薄い霧の中にいるだけで、周囲に変化はなかった。
「時計は午後4時25分を表示してますけど、合ってます?」
梅原は機体を進めながら聞いた。
「合ってるよ。あたしがレールガンを持って長野の基地を出たのが1時少し前だったから、少なくともコクピットの中では時間の経過は正常かもね」
「ここは、前にみんなで話してた『なんでもありの空間』なんでしょうか?」
「そうだろうね。その割にはあまりに殺風景だけど」
「この空間をずっと行けば、未来に繋がってるってことですか」
「それはないんじゃないかな。一時は繋がっていたかもしれないけど、今は途切れちゃってるよ。捨てられた空間だね」
「そっか・・・」
未来に行けるかもと考えた梅原は少しがっかりした様子だった。
二人はさらに進んだ。
それでもやはり周囲に変化はなかった。
梅原のコクピットの全周囲モニターに見えるのは報瀬の機体だけだった。
ゆっくりと同じ速度で歩く2機のNCBM。
梅原は一緒に歩く報瀬の機体を見ているうちに、何故だか母親と手を繋ぎ家までの道を歩いたことを思い出していた。
その時、父親はもういなかった。
夕暮れの色と長く伸びた影は何かとても寂しく感じ、母親の手を離さないように強く握っていた。母親もしっかりと梅原の手を握ってくれていた。
どうしてそうしていたのかは思い出せなかった。
でも、母親と手を繋いで家に帰ることで、その時の不安な気持ちが少しずつ薄れていったことは思い出すことができた。
あの時みたいに、このまま家に帰れたらいいのに・・・
ふと、報瀬と手を繋いでみようかと思った。
しかし、NCBM同士が手を繋いで歩く姿を想像し、そのあまりに滑稽な光景にそんな考えはすぐに飛んでいった。
報瀬も横を歩く梅原の機体を見ていた。
不思議とその機体に梅原の姿が重なって見えた。
報瀬はこの機体から離れ、梅原と一緒に歩く光景を想像してみた。
梅原の後ろについて歩いてみる。
なにかしっくりこなかった。
肩が触れ合うほどの距離で歩く。
やっぱりしっくりこない。
そうだ、こんな時は手を繋ぐんだ・・・。
その時、急に母親と手をつないでいる姿が浮かんだ。
そんなことは一度も思い出したことはなかったのに、いつのことなのか全くわからなかった。
本当に自分の記憶なのか、単なる願望なのか、報瀬にはわからなかった。
「ケルベロスはどこに行ったんでしょうね」
梅原の声がした。
モニターに映る1番機は立ち止まると、大きく周囲を見渡した。
「何にもないところだから、すぐに見つかると思ったんですけど」
再び歩き始める。
「低次元のあたしたちには何もない空間にしか見えないけど、ケルベロスにはもっと別の世界に見えているのかもね」
「木があったり、川が流れていたり、とか?」
「まぁ、そうだね。あたしたちにはそれくらいの発想しか出来ないけどね」
報瀬はもっと高次元の発想をしようとしてみたが、全くそんなものは思いつかなかった。
「コクピットから出たら、どうなるんでしょう?」
梅原はふと疑問に思ったことを口にしていた。
「・・・」
報瀬は答えに困った。そんなこと、出てみないとわからない。
「漫画とかだと、コクピットの中と外とで時間の流れが違っていて、外に出た途端に歳をとってしまうとか、なんてありそうですよね」
梅原はそう言って笑った。
「そうだね。もしもこの空間の時間が急速に流れていたら、元の世界に戻った時、みんなおじいちゃんやおばあちゃんになってんじゃない?」
「あり得ますね」
今度は二人で笑った。
その時、急にレーダーに反応が出た。
「あ、何かいる」
「こっちでも反応があります。ケルベロスでしょうか」
二人はレーダーに映る何かに向かって進み出した。
やがて、白く薄い霧の中に、ぼんやりと『それ』が姿を現した。
梅原はライフルを構えた。
警戒しながらさらに近づく。
はっきりと見えた『それ』は、高さがNCBMほどで一辺が10メートルくらいの三角錐の物体で、クサビとも呼べる形状をしていた。マットグレーのクサビの先は下に向き、一部が突き刺さっているように見えた。
「明らかに人工物ですよね。ちょー硬そう」
「そうだね。狙って打ち付けたみたい」
二人はそれぞれゆっくりとクサビの周囲を周り、その状態を確かめた。
「あ、ここに何か小さな穴がある」
梅原が指で示すと、すぐに報瀬が近寄った。
コクピットでカメラをズームする。
「なんだろうね。ここから何か出したのかな?」
少し考えた報瀬は、急に思いついたようにハッとした。
「これ、ケルベロスを送り込むために未来のヒトが打ち出したものなんじゃないかな」
「え?こんな中にあんな大きなケルベロスがいくつも入っていたんですか?」
梅原はあまり理解できない様子だった。
「違う違う。直接ケルベロスがこれに乗ってきたんじゃなくって、ここから原始の生命体を発生させてそれがケルベロスになった、ってこと」
「そう言うことか・・・。だったら、これが悪夢の始まりってことですね」
「本来、目的が達成されたら消すものなんじゃないのかな。それを忘れたのか、何かの事情で消すことができなかったのか。だから、ケルベロスもこの空間も中途半端に残ってしまったんだよ。困ったもんだ」
「じゃぁ、これを破壊すれば、ケルベロスごとこの空間も消えないでしょうか」
「ああ、そーだね」
そこで報瀬は気付いた。
この空間と共にケルベロスがいなくなるのなら、一緒にいる自分たちも消えてしまうのではないか。
自分だけなら消えても問題はないが、梅原のことを考えると安易に肯定したことを後悔した。
クサビを破壊することなら、自分一人でも出来る。ならば、その前に梅原を元の世界に帰さなくてはいけない。
「じゃぁ、始めましょう」
梅原は機体が背負ったバッテリーに繋がるケーブルの先を報瀬に差し出した。
「ちょ、ちょっと、待って。うまくこの空間を消せることができたとしても、同時に梅原君も消えることになるかもしれないんだよ」
「ああ・・・、そうですね」
梅原があまりにもあっさり答えたことに、報瀬は呆れたようにため息をついた。
「梅原君ってさ、いつもそんな感じだよね。飄々としてるって言うか、自分の気持ちを出さないって言うか」
「そうですか? そうなのかなぁ」
「梅原君はあたしたちに出会ってそれなりに変わってきたとは思うんだけど、なかなかあたしたちに梅原君自身の気持ちを出してくれないよね」
「随分と出してるつもりなんですけど・・・」
「そうかな? 死んじゃうかもしれないのに、ああ、そうですね・・・はないでしょ」
「確かに、そうですね」
そう言って梅原は軽く笑った。
「ひょっとして、市ノ瀬さんと二人の時もそんな感じなの?」
「そんな感じ・・・って。同じですけど」
「おい、おい・・・」
報瀬は呆れた。
「市ノ瀬さんは梅原君にとって大切な相手なんだから、もっともっと自分の気持ちをぶつけてあげなよ。きっとその方が嬉しいと思うよ」
梅原の生い立ちは、それなりに知っていた。
きっと梅原は自分の気持ちを抑えることで、周囲に波風を立てることなく生きてきたのだろう。
そう思うとちょっと切なくなった。
「きっと僕はひねくれ者なんですよ。小さな頃は、こんなにひねくれてなかったと思うんですけどね」
梅原の声は笑っているようだった。
「あたしは小さい頃の方がひねくれてたな。病気がわかってから」
梅原も報瀬のことは十分聞いていた。
「あの・・・、病気、怖かったですよね」
「そうだね。恐くって毎晩泣いてたし、怖かったから人を妬み恨んでた。今思うと、バカみたい」
泣く報瀬、妬み恨む報瀬、そんな姿は梅原には想像できなかった。
「僕は、戦闘が怖かったです。怖くて怖くて、いつも一人で震えてました。一緒に戦うことになった水瀬さんや市ノ瀬さんに、その怖さを聞いて欲しかったけど、同じように怖がっている二人にはそんなこと言えなかった」
やっぱり、そうやって梅原は相手を思い自分を抑えてきたんだと、報瀬は思った。
「今でも怖いでしょ?」
怖くないはずはない。
ここでなら、あたしになら怖い気持ちを吐き出してもいいよ・・・。
「どうかな。恐怖に麻痺しちゃったのかもしれません。まぁ、その方が楽だし・・・」
本当にそうなの?
「まぁ、下手に怖さを感じてそれに耐えなきゃいけないくらいなら、感じない方が楽だけどね」
「こんなのを渡世術っていうんですかね」
「何それ? まぁ、何でもいいけど、梅原君はあたしの弟みたいなものだから、時には『おねーさーん』なんて泣きついてもいいからね」
「おねーさーん」
梅原が戯けたような声を出した。
「そうそう、それでいいの」
梅原は、母親を亡くしてからずっと一人だった。不思議とこの部隊に来てからは、何だか家族が出来たような気がしていた。
そんな家族には、きっといろいろなことを話すものなのだろうなと思った。
もっと話してみようか。梅原は一瞬そう思った。
しかし、すぐに躊躇する。
報瀬には戦闘の恐怖に麻痺したと言ったものの、本当は今でも怖いし、今置かれたこの状況も怖かった。でも、そんなことは言えない。言ったら、きっと自分のことを心配してくれるだろうから。
心配させるくらいなら、何も言わない方がいい。
梅原は気持ちを切り替えるために大きく深呼吸をした。
「ここは、なんでもありの世界ですよね。ケルベロスはここで普通では考えられないようなことをしてきたわけですから、僕たちだって、何かできるかもしれません。この世界が消えても、案外僕たちは助かるかもしれませんよ」
梅原は明るく言った。
報瀬も、それを期待していることに気付いていた。
「何だか、梅原君が言うと、本当にそうなりそうな気がするんだよね。不思議・・・。でも、梅原君には悪いけど、そんな不確定要素満載なことに望みをかけるんじゃなくって、まずはここから脱出する方法を見つけよう。あれを破壊するのはそれから。いいね」
「りょーかーい」
梅原は市ノ瀬の言い方を真似たように答えた。
だからと言って、脱出の方法が簡単に見つかるとは思えなかった。
そもそも、位置情報が取得できない状態では、ここを離れることすらできない。一人残して出口を探したとしても、再び出会うことはできないかもしれないのだ。
何かいい方法はないのか。
しかし、考えても考えても、何も浮かばなかった。
報瀬は徐々に焦り出した。
それでも何も方法は浮かばない。
栄養パックの残量は10%を切っていた。
いつもよりの消費が激しいような気がした。
このままいけば、あと少しで機体は動かなくなる。そうなればクサビを破壊できない。
「もう、やりましょう」
脱出の方法が見つからないことも、機体を動かせる時間が残り少ないことも、梅原も当然わかっていた。
「きっとこの空間がなくなれば、全て方がつくんです。せっかくのチャンスなんですから、やりましょうよ」
梅原はいつものように冷静だった。
その冷静さに報瀬の胸が軋んだ。
一人で耐えなくてもいいのに・・・。
「わかった。だったら、なんでもありのこの世界では、どうしたら願いが叶うと思う?」
報瀬は真剣だった。
「祈ればいいですよ。そうでしょ?」
梅原は当たり前のように言うと、バッテリーのコネクターを報瀬に渡した。
「じゃぁ、一緒に祈ろう」
報瀬は受け取ったコネクターをレールガンに差し込むとチャージを始めた。
レールガンのチャージを示すランプがゆっくりと点滅を始める。
「これ、持って。梅原君が撃って」
「あ、はい」
梅原は言われるままにレールガンを受け取った。
すると突然、報瀬の機体のコクピットのハッチが開いた。
「報瀬さん、何してんですか」
梅原が慌てた声を出した。
「開けて」
報瀬は自分のコクピットを梅原のコクピットに近づけた。そして、シートから立ち上がると、ハッチの位置まで移動した。
梅原のコクピットのハッチが開く。報瀬は機体をさらに近づけると、梅原のコクピットに飛び移った。
「いいよ、閉めて」
コクピットのハッチが閉まる。同時に0番機が1番機から離れた。
「大丈夫ですか?」
この空間の中に身を晒した報瀬のことを心配して梅原が聞いた。
「大丈夫。問題なし」
報瀬は姿勢を落ち着かせると、ヘルメットをとった。
「どお、おばさんになっていないでしょ」
顔を梅原に向け、そして笑った。
「いきなりどうしたんですか。びっくりするじゃないですか」
「ごめんね。なんかさ、一緒にいた方が願いが強くなるような気がして・・・。だから来ちゃった」
レールガンのチャージランプの点滅が徐々に速くなる。
それに、もしもの時はひとりじゃさみしいし・・・、これは、言葉にしなかった。
「本当にごめんね。こんなことに付き合わせちゃって」
シートに手を添えて横に立つ報瀬は、全周囲モニターに映るクサビを見た。
「僕は大丈夫ですよ」
相変わらず、梅原は落ち着いているように見えた。しかし、報瀬は操作レバーを持つ梅原の手がわずかに震えているのを見逃さなかった。
「梅原君は甘えるのが下手だな。そうやって、いつも一人で耐えてきたんでしょ。いい加減、もう甘えていんだよ」
報瀬は手に持っていたヘルメットを落とすと、両手で梅原をヘルメットごと抱き寄せた。
ヘルメットが報瀬の頬に当たった。
「てか、邪魔だな、これ。外して」
梅原はヘルメットを取ると、報瀬に顔を向けた。
すると、報瀬は自分の唇を梅原の口に当てた。
動きの止まったコクピットに、レールガンのチャージ完了を示す音がした。すぐに自然放電までのカウントダウンが始まる。
唇が離れ、二人の吐息が重なった。
「おまじないだよ・・・」
報瀬は梅原の頬を優しく撫でた。
「さぁ、撃って」
「はい」
梅原の機体がレールガンを構えその先をクサビに向けた。
装填。
そして、トリガーを引いた。
レールガンがプラズマを放ち、周囲に放電する。
鋭く眩しい光の中、弾体が弾けるように一直線に放たれた。
一瞬響くわずかな音で、弾体はクサビを貫通した。
すぐに弾体の通った穴から光が溢れ出した。それは一気に周囲に広がり報瀬と梅原を包み込んだ。
何もない光の中、周囲から押し寄せる感覚が報瀬に一つの光景を見せる。
フレームの軋む音の中で、報瀬はケルベロスと戦っていた。
時々薄れる意識を必死で保つ。
ケルベロスの足元に滑り込み、一気に刀剣を振り上げた。
しかし、ケルベロスはそれをかわし、巨大な爪を振り下ろした。
報瀬の機体の肩をかすめる。
報瀬は態勢を立て直すと肩の傷を見た。
やったな・・・よくもあたしの体を・・・
刀剣を持つ手に力を込める。
あたしの体を・・・
あたしの体を傷つけるなぁ!
怒りが湧き上がる
報瀬は怒りとともにケルベロスを仕留めた。
すぐに別のケルベロスが報瀬の機体を切りつけた。
爪が当たった膝から還流液が滲み出す。
だから
だから・・・
あたしの体を傷つけるなって言ったよね!
関節の軋む音、筋肉の断裂する音が聞こえる。
怒りの中、報瀬はケルベロスと戦い続けた。
これは、何?
あたしの記憶・・・。
アイナは巨大な爪を振り下ろした。アルビオンはかろうじてそれを避けたが、わずかに装甲をかすめた。
一瞬、アルビオンが傷ついた装甲に視線を移したように見えた。
な、何なんだ・・・
アイナはアルビオンから湧き上がる強い波動を感じた。
これは・・・、怒りだ
アルビオンから発する怒りの波動はその強さを増し、アイナの意識を大きく揺さぶった。
そ、そうだろう。お前だって怒りのために戦ってるのだろう。憎いか? 人類を次々と消していくこの醜い生き物が憎いか!
けど、お前が怒りをぶつけるのはわたしじゃない!
怒っているのは被害者であるわたしたちだ。その怒りは自分自身に向けろ!
アルビオンはアイナの攻撃を予測していたかのようにそれをかわした。しかしアイナのパワーに負けたアルビオンはバランスを崩し地面に倒れ込んだ。
一瞬アルビオンの動きが止まる。
アイナはトドメを刺すために右腕を振り上げた。
怖いか。そうだろう。死の恐怖を感じたなら、膝間づいて世界が変わるように祈れ!
振り上げた腕を怒りとともに振り下ろした。
違う。こんなこと知らない。
これは、あたしの記憶じゃない。
これは・・・、ケルベロスだ。
ケルベロスの記憶だ。
『・・・ミ ツ ケ タ・・・』
それは再び感覚として報瀬の中に飛び込んできた。
見つけたって、何?
急に周囲の光が消えた。
突然、全周囲モニターに右腕を振り上げる巨大なケルベロスの姿が映った。
「やられる!」
梅原は咄嗟に回避行動をとり、報瀬は0番機をケルベロスに体当たりさせようと1番機のコクピットから直接自分の機体を動かした。
だめだ。間に合わない・・・
周囲が白くなった。
それは何もない『白』だった。
すると、報瀬はいつものあの空間にいた。
そこで、1番機のコクピットの中で梅原を庇うように抱きしめる自分の姿を見ていた。




