表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

緊急招集


 早朝の高速道路。

 いつものように報瀬は大学に向かって車を走らせていた。


 今朝、またあの夢を見た。

 ここのところ、夢だけではない。覚醒中もほんの一瞬、あの世界が目の前に広がることがあった。

 時々感じる息苦しさも続いていた。


 あの不思議な世界と息苦しさは何か関係があるのかな? 


 高速を降りる。すると携帯端末にリンクしたカーナビがアラーム音とともに『緊急招集』の文字を表示した。

 「え、なに?!」

 すぐに呼び出し音がなった。ナビには『香織ねえさん』の表示が出ている。

 回線を繋ぐ。

 「はい、報瀬です」

 「今どこ?」

 「大学に向かって高速降りたとこ」

 「ちょうどよかった。そのまま統合軍本部に向かって。ケルベロスが出たの」

 「ケルベロス?!」

 ケルベロスは消えたはずなのに・・・。

 冗談かと思ったが、遊びで緊急招集をかけられるはずはない。

 「統合本部から独立遊撃部隊まで飛行機を飛ばしてもらうから、それに乗って。詳しいことは向こうで」

 「分かった」

 そこで通信は終わった。速水はまだ連絡しなくてはいけないところがある様子だった。

 「帰ったはずなのに。まさか、あのおばさんがまた仕掛けてる、なんてことないよね・・・」

 報瀬はミラーと目視で周囲を確認すると、道路中央で派手に後輪を滑らせ車をUターンさせた。

 すぐにネットニュースを聞く。

 しかし、ケルベロスに関することはなにも流れていなかった。

 「発表の原稿を考えている・・・、ってところかな」

 報瀬は車を加速させた。

 



山梨県 統合軍山梨病院 救急処置室


 処置用のベッドには中学生くらいの男子が寝かされており、腕には複数の点滴のルートが、また口には気管チューブが固定されていた。

 生体モニターのアラームが処置室に鳴り響いている。

 「血圧上がりませんね」

 「手術室は?」

 「今準備中です」

 「腹腔の出血だね。ここで止血しちゃお」

 エコーのプローブを機械に戻した女性の救急医が言うと、すぐに看護師が緊急切開セットを広げた。

 また別の看護師がその救急医に手術用のガウンを着せる。

 男子の腹部には消毒用のイソジンがかけられた。

 救急医はグローブをつけると、ドレープを受け取り男子の腹部を覆った。

 そして自分でメスを取ると一気に腹部に走らせた。

 電気メスで簡単に止血し、腹壁を開ける。すると腹腔内に溜まっていた血液が一気に飛び出し、救急医のガウンと処置室の床に広がった。

 「血圧さらに低下」

 「わかってる」

 救急医は血液が溢れる腹腔内に両手をつっこむと、中を探った。

 「ここだ」

 「あ、血圧上がり始めました」

 救急医は片方の手を腹腔内から出すと鉗子を持ち再び手を入れた。

 鉗子のロックの音がした。

 「よし、止めた」

 「血圧正常近くまで回復」

 「じゃぁ、あとは手術室でゆっくりやってもらおう」

 救急医は血液の滴る手でステープラーを取ると、開いた腹部を簡易的に閉じた。

 「手術室、準備できたそうです」

 「すぐ運んで」

 突然、ガウン下の胸ポケットで振動を感じた。携帯端末の呼び出しだ。

 救急医は慌ててグローブを剥ぎ取ると汚染物廃棄ボックスへ投げ入れ、さらに血液を浴びたガウンも脱ぐと廃棄ボックスに押し込んだ。

 胸ポケットから端末を出し覗き込む。

 「緊急招集・・・」

 画面を確認するとすぐに呼び出し音が鳴った。画面の表示は速水香織だった。

 「はい、大森です」

 「速水です。ケルベロスが出現しました。報瀬ちゃんを乗せたVTOLがまもなくそちらに向かいます。合流後、独立部隊本部へ向かうので、病院屋上で待機をお願いします。詳しいことは後でね」

 必要事項だけ伝えて速水は回線を切った。

 なんでまた・・・。

 なぜケルベロスが再び出現したのか不思議に思いながら、大森はパーティションで区切られた奥の処置台に向かった。

 そこでは、ちょうど救急部主任の保科医師が小さな子供の処置を終えたところだった。

 保科医師に近寄り小声で話す。

 「軍から緊急招集がかかりました。あとお願いできますか」

 保科も軍の関係者で大森の事情はわかっていた。

 「何かあったみたいだな。こっちはなんとかするから大丈夫だ」

 「はい」

 大森は保科に頭を下げると、マスクとキャップをはずしながら廊下へと向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
医療現場の生々しい表現がすごいなと、 「動物病院」の時から思ってました。 今回も面目躍如ですね。 続きも楽しみにしてます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ