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巨体


 ケルベロスは山の中を、その体高以上もある木々を押し潰しながら進んでいた。

 二人はそのケルベロスの作った道を目印に降下し、道に沿ってケルベロスを追った。

 すぐにケルベロスの姿が確認できた。

 「街ってどっち?」

 『ケルベロスが進んでいる方』

 市ノ瀬の問いに上田がすかさず無線を送ってきた。

 「じゃぁ、このままこっちに戻せばいいんだ」

 そう言って市ノ瀬は巨大なケルベロスの背に向けてライフルを撃った。

 背に当たった銃弾が炸裂する。しかし、そんなことでケルベロスは進路を変えなかった。

 「鈍感な奴め」

 「交代」

 梅原の声がすると、梅原の機体が市ノ瀬の機体の上を大きく飛び越えて行った。

 さらに至近距離で攻撃するつもりだ。

 ジャンプしたことによって頭が見えた。

 そのまま空中で梅原はトリガーを引いた。

 今度はケルベロスの頭部で銃弾が弾けた。ケルベロスが振り返る。それと同時に梅原目掛けて尾を大きく振った。

 もう、その手には乗らないと、梅原はバーニアを使ってそれを避けた。

 空振りした尾が地面に当たり、いくつもの大きな木を吹き飛ばした。

 すかさず市ノ瀬も距離を詰め攻撃する。

 ケルベロスはその巨体を市ノ瀬に向け飛び上がらせた。

 巨大な後肢が蹴った地面には、大型重機で削り取られたような大きな筋が残った。

 落下しながら市ノ瀬に向けて爪を振り下ろす。

 市ノ瀬が横に飛ぶように避ける。

 空振りした巨大な爪が凄まじい音と衝撃とともに地面に突き刺さり大きな穴を開けた。

 「あんなのに当たったら、一巻の終わり」

 パイロットスーツの下で胸元に汗が流れた。

 「ケルベロスの向きが変わったから、このまま下がろう」

 梅原がライフルを撃ちながら、ケルベロスを誘導するように後ろに下がった。

 市ノ瀬もそれに追従する。

 「あ、あれ」

 梅原が上空の大きな輸送機に気付いた。

 「あれは軍のだね」

 市ノ瀬がライフルを撃ちながら確認した。

 『お待たせぇ』

 報瀬の声がした。

 「早かったですね」

 『レールガン、バラす前だったから。それに大森さんが一緒だったからすでに調整済みだよ』

 「ケルベロスはちょー硬くて、おまけに動きが速くって、もうお手上げ」

 軍の輸送機はケルベロスから距離を取るようにしながら徐々に高度を下げた。

 ゲートが開く。

 「え、マジ。あの高さで降りるの」

 ライフルを撃ち続ける市ノ瀬が呆れるように言った。

 「バッテリー背負ってるから、スラスターなしだよね、きっと」

 そう言いながら梅原は素早くリロードすると、すぐにまたトリガーを引いた。

 軍の輸送機は独立遊撃部隊と違ってNCBMを降下させるときにあまり高度を落とすことが出来ず、通常は降下スラスターを使わなくてはいけなかった。

 すると、輸送機から機体が飛び出した。

 やはり報瀬は降下スラスターではなく、バッテリーを背負っていた。さらにレールガンを両手で抱えている。

 「こっちは任せて。梅干しは報瀬さんの降下位置に向かって」

 「わかった」

 梅原はモニターで報瀬の位置を確認すると、それに向けて大きくジャンプした。

 

 

 高度1000メートルで輸送機を飛び出した報瀬は、モニターに表示される凄まじい勢いで動く高度計の数字を読んでいた。

 「今!」

 高度計の数字が300を示したタイミングで、報瀬はバーニアを最大噴射させた。

 機体は一気に減速。衝撃吸収アームが軋み、体がシート座面に押し付けられる。

 しかし、まだ十分な減速は得られない。

 そのまま山の急斜面に沿って着地。木をなぎ倒し、滑りながら斜面を駆け下りた。

 十分な減速ができたところで報瀬は機体をジャンプさせ、ケルベロスの作った道に着地した。

 『報瀬さん大丈夫ですか』

 すぐに梅原の声がして、全周囲モニターに1番機が確認出来た。

 「荷物が想像以上に重くって、山の斜面がなかったら潰れてた」

 報瀬は笑いながら言うと、手のレールガンを地面に置き、近付いた梅原に背を向けた。

 梅原はわかっているように報瀬の機体の背についたバッテリーに両手をかけ支えた。

 鈍い音とともにバッテリーのロックが外れ、梅原の両腕にバッテリーの重量がかかった。

 そのまま抱えたバッテリーを報瀬に渡すと、背中を向けた。

 すぐに報瀬は、梅原の背のスロットにバッテリーをはめ込んだ。

 バッテリーにはチャージ用の太いケーブルがついている。梅原はそれを左手に持った。

 「ケーブルの長さは最大に伸びても10メートルほどだから、つなげての高速移動は無理だね」

 『わかりました。すぐにチャージできるように、できるだけ離れずについて行きます』

 「いくよ」

 報瀬はレールガンを両手に持つと、ケルベロスに向けて大きくジャンプした。

 梅原もすぐに続いた。

 


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