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出現


独立遊撃部隊本部 ブリーフィングルーム


 「異世界への穴の位置はトレースされており、現在入笠山付近にあると予想されます」

 上田は大型モニターに入笠山の地図を表示させた。

 「また、入笠山か・・・」

 市ノ瀬がため息をつくように言うと、梅原と水瀬をちらりと見た。二人は表情を変えずモニターを見ていた。

 「今朝、篠原大佐からレールガンの準備が出来たとの連絡を受けました。明日、長野基地からこちらに輸送されます。その時一緒に篠原大佐と山内さんも来られます。レールガンに関しての説明はその時になりますが、前回使用したレールガンよりも高出力になっています。しかし、それに伴ってチャージ用電源がやや重くなってしまったとのことです」

 そこで上田は、お願いします、と古川に話を振った。

 「レールガンは到着次第、組み立てと0番機の細かな調整を行う。今回の作戦の進行は全てこちらに任されている。0番機の準備が全て整ったところで作戦日時を決める」

 報瀬は何度か頷きながら古川の話を聞いていた。

 すると大森が手を挙げた。

 「0番機ですが、レールガンの重さ、そして場合によっては電源を担いだままでの高速移動を考慮して、少しでも性能アップができるようにパーツの交換などを行いました」

 「ありがとうございます」

 報瀬が大森とその周りに座る整備のみんなに頭を下げた。

 「あの、あたしたちは、何をすればいいんですか」

 市ノ瀬が聞いた。

 「0番機が突入することによって何が起こるか分からん。場合によっては通常のケルベロスが出てくるかもしれん。作戦中は機乗して待機ということになる」

 古川の説明に市ノ瀬と梅原が頷いた。

 その時、ブリーフィングルームに緊急通信のアラームが鳴った。

 「え・・・、何?」

 上田が慌てて部屋の隅にある通信機に走るとヘッドセットをつけた。

 「独立遊撃部隊、上田です。あ、篠原大佐・・・」

 篠原からの緊急通信だった。

 「え! 分かりました」

 通信はすぐに切れた。

 「入笠山南東にケルベロス出現。どうやら生殖個体のようです」

 上田が振り向きながら言うと、すぐに全員が立ち上がった。

 「発進準備にかかれ」

 古川が指示を出す。

 「向こうから出てきてくれたってことか」

 そう言って部屋を出ようとした報瀬は、急に立ち止まり古川に視線を移した。

 「長野基地で0番機ごと落としてください。レールガンを取ってあとを追います」

 「それがいいな。コンテナに積み込む前ならまだばらしていないかもしれない。すぐに連絡する」

 古川は通信機へと向かい、報瀬は部屋を出ると格納庫へと走った。





独立遊撃部隊輸送機

 

 3機のNCBMが輸送機内のハンガーに固定されると同時に、輸送機は滑走路に向けてタキシングを始めた。

 3人のパイロットはコクピット内でそのまま待機する。その横で機乗整備士が最終確認を行なっていた。

 「あたしは長野基地上空で降りてレールガン持ってくから、しばらく二人で頑張ってね」

 報瀬が梅原と市ノ瀬に無線を送った。

 「あれ、報瀬さんも乗ってるんですか?」

 コクピットにいる報瀬に気づき、市ノ瀬がすぐに聞いた。

 「当たり前でしょ。あなたたちだけ送って、高みの見物なんて出来ないよ」

 「突入のための練習をするのかと思った」

 「あたしに練習なんていらない」

 「りょーかーい」

 輸送機が滑走路を離れた。

 「あのさ、今回のケルベロスは硬くないことだってあるんだよね」

 二人の通信の隙間に梅原が確認する。

 「だったら、報瀬さんがくる前に片付けちゃえばいいだけ」

 「映像来た。送るよ」

 上田の声がすると、コクピットのモニターにドローンからの映像が流れ出した。

 そこには木々をなぎ倒しながらゆっくりと進む巨大なケルベロスの姿があった。

 「でか!」

 市ノ瀬が驚きの声を出した。

 「地下にいた奴より大きいね」

 梅原もその大きさに驚いた。

 「光ってるようには見えないけど、硬いのかな?」

 梅原は映像に被毛の硬さを示すようなものが映らないかモニターを凝視した。

 以前に入笠山に出現した生殖個体は、固い物質で被毛を覆い輝いて見えたのだ。

 「でも、変異して出てきたのは輝いてなくてもちょー硬かったからね」

 「そっか、そうでした」

 報瀬の言葉に、梅原は被毛の観察には意味がないことに気付いた。

 「全て異常なしです。無事のご帰還待っています」

 1番機のコクピットで最終確認を終えた藤代が梅原に向かって言うと、コクピットを離れリフトに乗った。

 「いつも通りです。いってらっしゃい」

 2番機のコクピットでは、水瀬がそう言って市ノ瀬に笑顔を向けた。そしてすぐにコクピットを離れた。

 「さて、あたしはどこにいたらいいでしょう?」

 報瀬の横にはヘルメットを持った大森がいた。

 「あの二人も出来たんだから、ここにどうぞ」

 報瀬はそう言って、笑いながら太腿を指差した。


 「あれ、大森さんは?」

 輸送機のコクピットへ向かう藤代が水瀬に聞いた。

 「報瀬さんと一緒に長野基地に降りるんだと思いますよ」

 「え、そんなこと出来るんですか?」

 「出来ますよ」

 水瀬は軽く言うと、コクピットへの扉を開けた。



 「まもなく長野基地上空」

 遠藤は輸送機の機首を下げた。

 「滑走路でいいいんだな」

 「はい、許可取ってます」

 さらに高度が下がる。すぐに長野基地の滑走路が迫った。

 「後部ゲートオープン」

 振動が伝わり、輸送機後ろのゲートが大きく開いた。

 気流が乱れ輸送機が揺れる。

 「フェイクワン、降下」

 報瀬の声とともに0番機が輸送機を離れた。

 そのまま輸送機はゲートを閉じながら高度を上げる。そして進路を入笠山にとった。

 

 「無事着地」

 「報瀬さん、うまい」

 報瀬と大森の声が聞こえた。

 


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