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パイロットたち


市街地 高機動車内


 「やはり、かなりの数のケルベロスが出ていると考えられます。見つけて倒してもすぐに別の個体が乗っ取ってます」

 山内はノートパソコンを操作しながら、次々と位置情報を更新していった。

 山内が探索員に送る位置情報で、ケルベロスは確実に見つけられそして倒されていった。しかし、倒しても倒しても別のケルベロスが間髪を入れずNCBMの神経を支配してしまうのだった。

 「数が無限なんてことはないだろう」

 高機動車の助手席に座る篠原が振り返りながら言った。

 「そうですけど・・・。機体はあと10機。どっちが先に終わるでしょうかね」

 位置情報が更新される画面を見ながら、山内は小さくため息をついた。

 

 


 

基地内滑走路


 残りは第2小隊の5機だった。

 「相手の考えが分からないから、離れない方がいい」

 「わかった」

 梅原と市ノ瀬に、第2小隊が一斉にライフルを発砲した。

 「来た!」

 それを回避しながらライフルを撃つ。

 「動きが速いね」

 二人の機体には、それぞれ2機が交互に攻撃を仕掛けてくる。回避行動を余儀なくされ、反撃のタイミングがつかめない。

 「だめだ、距離が離れてく」

 「離れてくのはそっちでしょ」

 相手の攻撃により、梅原と市ノ瀬の機体は徐々に離されていった。

 敵機体がリロードした。そのタイミングでトリガーを引く。しかし、隙を与えず別の敵機体の銃弾が襲う。

 「あれ、ちょっと待って! 1機いない」

 第2小隊の1番機が二人への攻撃に加わっていないことに気づいた梅原が叫んだ。

 「市ノ瀬さん、うしろ!!」

 梅原の声と同時に市ノ瀬は機体を横に滑らせた。その直後、刀剣が振り下ろされる音が響いた。

 梅原が大きく飛び上がりながら敵の1番機に向けライフルを撃つ。

 しかし、すでにその位置に1番機はいなかった。

 「1番機に注意して」

 「りょーかい」

 敵1番機は再び距離をとった。

 しかし、この攻撃で流れを変えることができた。

 二人はライフルを撃つそれぞれの敵2機との距離を詰めながら、お互い近づくように移動した。

 敵の4機が二人の目の前に迫った。 

 「いくよ」

 「うん」

 梅原と市ノ瀬の機体が交差する。そのタイミングで敵の1番機が二人の背後からライフルを撃った。

 その攻撃を予測していた二人はバーニアの加速で回避しながら、梅原は市ノ瀬を狙っていた2機に、市ノ瀬は梅原を狙っていた2機に機体を滑らせた。

 驚いた敵が一瞬迷った動きをした。

 二人はすかさず敵機体の背後に回り込み左手に持った刀剣を刺した。

 すぐに刀剣を引き抜くと、もう1機に滑り込む。

 敵機体は慌ててライフルを撃つが、二人は地面を滑りながら刀剣を大きく振り、足を切り落とした。

 すぐに姿勢を変え、倒れ込んだ敵機体の腹部に刀剣を突き刺す。

 二人は同じ動きをしていた。

 しかし、梅原は突き刺す寸前のところで機体を回避させた。背後でライフルの発砲音がする。敵1番機が梅原を狙っていたのだ。銃弾が倒れた敵機体に当たり、コクピットの装甲を吹き飛ばした。

 梅原はそのまま敵1番機に向け加速しながらライフルを撃った。

 敵1番機は素早い動きで梅原の攻撃を避ける。それに向け市ノ瀬がライフルを撃つ。

 しかし、敵の予測出来ない動きにライフルが当たらない。

 コクピットのモニターに『残弾0』の表示が出た。スロットにも弾倉はない。

 「弾切れ」

 「同じく・・・」

 「敵の作戦は、これ?」

 「どうかな」

 二人はライフルを捨てた。そして、刀剣を右手に持ち替えた。





 第1小隊の1番機を除く全機が一斉に報瀬に向けライフルを撃った。その後ろで田沼の機体が様子を伺う。

 「逃げる方向に偏差攻撃してくる」

 報瀬はライフルの弾を回避しながら、一番端の5番機に機体を向けた。

 バーニアを最大に吹かし加速。足下に滑り込んだ。そのまま背後に回り込み左手の刀剣を突き刺す。が、5番機はそれがわかっていたかのように、体をひねり回避した。すかさず1番機のライフルが報瀬を撃つ。

 「あたしの動きが読まれている。さっきまでの見学で勉強したってことか」

 報瀬は弾を避けながら5番機を蹴飛ばした。バランスを崩した5番機はすぐ横にいた4番機にぶつかった。そのまま姿勢を崩した4番機の正面から腹部に刀剣を突き刺す。右手のライフルは倒れ込んだ5番機の足を吹き飛ばした。すぐに刀剣を抜き、5番機を刺す。2機とも還流液を吹き、動きを止めた。

 休むまもなく2番機3番機がライフルを撃つ。

 「離れてはダメだ」

 報瀬は2機との距離を詰めた。

 「1番機が後ろに回った」

 報瀬の死角を狙っているようだった。

 「生憎あたしに死角はない!」

 背後から撃たれた銃弾をかわすと、そのまま3番機の足元に滑り込んだ。背後に回ると見せかけてバーニアを使って2番機に機体を向けると、ぶつけるように刀剣を刺した。流れる視界の中に攻撃を予測し体をひねる3番機が見えた。

 報瀬が刀剣を抜こうとすると、ライフルを捨てた1番機が背後から刀剣を振り下ろした。

 避けられないと判断した報瀬は刀剣から手を離すと、右手に持ったライフルを刀剣を払うようにぶつけた。

 1番機の攻撃は逸れたが、報瀬のライフルは手を離れ飛んでいった。

 これで、報瀬は武器をなくした。

 「一瞬でも、あの機体を乗っ取ってみるか・・・。でも、その間はあたしの機体も動かなくなる。それじゃぁ意味ない・・・」

 報瀬は迫る絶望を押し除ける方法を必死で考えていた。




 

 残った第2小隊の1番機は、梅原を寄せ付けないようにライフルで牽制しながら市ノ瀬を狙っていた。

 「もう、逃げていては倒せない」

 市ノ瀬は覚悟を決めた。

 敵1番機は撃ち尽くしたライフルを市ノ瀬に向け投げつけると、刀剣を両手で持ちそのまま機体をぶつけるようなスピードで切りかかった。

 キーン・・・

 甲高い音が響いた。

 敵1番機の攻撃をそのまま刀剣で受けさらに機体をぶつけられた市ノ瀬は、後方に大きく弾き飛ばされた。尻餅をつくように地面に倒れ込む。

 「市ノ瀬さん!」

 梅原はバーニアを最大にし加速した。

 敵1番機は刀剣を逆手に持ち替えると倒れた市ノ瀬の前で大きく振りかぶった。

 しかし、梅原の機体が接近する方が早かった。梅原は刀剣を敵1番機の腹部に向けた。

 これでやっと終わる、と梅原は思った。

 その直後、ライフルの銃声とともに梅原の持った刀剣が飛んだ。指が吹き飛ばされたのだ

 「まだ、動けたのか」

 還流ポンプを破壊されていない機体が、倒れたままライフルを向けていた。

 梅原は狙われているのを気にせず、そのまま機体を敵1番機にぶつけた。

 そして敵1番機の機体を抱えると、市ノ瀬から離すために両足に力を込め地面を蹴った。さらにバーニアをふかす。

 梅原は敵1番機と一緒に倒れ込んだ。

 もがく敵1番機を梅原は必死で抑え込んだ。

 バシッ・・・

 梅原の機体の右膝から一瞬還流液が吹き出した。装甲の薄い膝関節の裏側を狙われたのだ。

 「市ノ瀬さん」

 やっと立ち上がった市ノ瀬はすぐに梅原の行動を理解し、敵1番機の腹部目掛けて刀剣を振り上げた。

 しかし、ポンプの位置には機体を抱え込む梅原の腕があった。

 今度は市ノ瀬を狙う敵のライフルの弾が、市ノ瀬の機体の装甲に当たる。

 「いいよ。刺して!」

 市ノ瀬は一瞬躊躇したが、刀剣を梅原の腕に向けて突き刺した。

 すぐさま引き抜くと、梅原の腕の下から還流液が吹き出した。

 市ノ瀬は向きを変えると、ライフルを撃ってきた敵機体に向けジャンプした。

 「このやろう!」

 落下のエネルギーと共に怒りを込めて、刀剣をライフルを向ける敵機体の腹部に突き刺した。

 還流液が噴き出す中で、刺した刀剣は根元で折れた。

 動ける敵機体が残っていないか周囲を警戒する。

 市ノ瀬は肩で息をしていた。

 横たわる全ての機体から還流液が吹き出した痕があった。

 「足をやられて僕はもう動けないから、市ノ瀬さんは報瀬さんを追って」

 梅原の声は落ち着いていた。

 「わかった」

 市ノ瀬は動かなくなった機体からライフルをとった。

 そして、少し離れた場所に転がっていた梅原の刀剣も手にした。

 「ちょっと借りるね。あとは女子にまかせなさい」

 笑い声とともに、市ノ瀬は機体を大きくジャンプさせた。



 「終わったか・・・」

 浜田は薄れる意識の中で、ぼんやりとヒビだらけの全周囲モニターを見ていた。

 時々ノイズで画面が乱れる。

 コクピットのシートを支える衝撃吸収アームが限界を超えた動きをするたびに、浜田はヘルメットの中で吐いていた。

 「確かにすごいな。この子たちを古川が育てたというのか・・・」

 そこで浜田は意識を失った。

 

 

 


独立遊撃部隊輸送機


 「1番機損傷。パイロットのバイタル異常なし」

 1番機担当整備士の藤代が1番機の状態を示すモニターを確認しながら言った。

 「回収する。遠藤、降りられるか」

 「大丈夫です」

 古川の言葉と同時に遠藤は降下を始めていた。

 「あ、あの・・・」

 藤代が躊躇いながら声を出した。しかしそれはすぐに力強いものへと変わった。

 「0番機がまだ戦っています。戦闘が長引くことを考慮し、1番機の損傷部位の置換を行います」

 全員が藤代を見ていた。

 「了解! 手伝うよ」

 最初に声を出したのは大森だった。横で水瀬も大きく頷いた。

 「お願いします」

 藤代は立ち上がると古川に頭を下げた。すぐに古川が頷くのを見ると、格納庫に続く扉に向かった。

 「慧ちゃんは組織の急速解凍」

 「はい」

 大森も水瀬も藤代の後を追った。

 「1番機の上空に到達。このまま垂直降下します」

 遠藤は着陸操作を始めた。

 

 


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