侵入
NCBM第5格納庫
機体にはかなりの量の還流液が循環している。そのため格納庫内でそのまま放出することが出来ず機械によって回収しなくてはならなかった。
「回収機のタンクが一杯だ。タンク交換のため一時中断」
3機目のNCBMに回収パイプを接続したところで作業が止まった。
作業開始から2時間近く経っていたが、やっと2機の還流液が抜き終わったところだった。
整備員がクレーンで、還流液で一杯になった大型バスほどのタンクを持ち上げる。そのまま格納庫に入ってきたトレーラーに積み込んだ。
NCBM基地司令室
「イータ波の反応あり。第5、第6格納庫の機体です」
ノートパソコンのモニターを見ながら山内が大きな声で言った。
「第1、第2小隊、直ちにコクピットに入れ」
すかさず笹村が指示を出す。
「整備班はどうなっている?」
「井桁主任につなぎます」
篠原の問いにオペレーターが反応し、すぐに井桁につながった。
『第5で2機。第6で4機が終わったところです』
「格納庫の機体にケルベロスが侵入を試みているようだ。作業を中止して離れろ」
『わかりました・・・』
『・・・3機目の回収パイプを開放しろ。その場に放出させて構わん。その後直ちに退避。第2班、退避だ。可能なら放出パイプを開放しろ。壊してもいい・・・』
つながったままの通信から、井桁の叫ぶ声が聞こえていた。
独立遊撃部隊輸送機コクピット
「山内君からの信号来ました。ケルベロス出現です」
「軍の反応は?」
「ちょっと待ってください・・・」
上田は軍の回線に耳を立てた。
「還流液の放出が間に合わなかったようです。15機が無人でケルベロスに盗られたようです。第1、第2小隊が向かっています」
「3人をコクピットに入れろ」
「はい」
上田は格納庫のスピーカーに回線を切り替えた。
「ケルベロス出現。パイロットは直ちに機乗してください」
市街地 高機動車内
篠原と山内は探査班とともに成れの果て物質が観測された市街地へと高機動車を走らせていた。
「送ります」
山内は各探査部員に向け、イータ波から逆探知した最新のケルベロスの位置情報を送った。
「現場到着後直ちにケルベロスの探索にかかれ。発見次第、攻撃しろ」
篠原が指令を出した。
「あれ? これ大丈夫かな」
「どうした?」
不安な声を出す山内に篠原が声をかけた。
「第1、第2小隊の全ての機体から何度もイータ波の位置情報が送られてきています」
「何度も?」
「はい。その都度位置が変わっているんです。これひょっとすると幾つものケルベロスが交代で侵入を試みているのかも。その中にもしもイータ波の強い変異体がいたらまずいですね」
「それは、第1、第2小隊も乗っ取られると言うことか?」
「はい・・・」
山内はごまかすことなく、はっきりと言った。




