混乱
長野県 NCBM基地司令室
司令室の通信オペレーターたちは各部隊の応対で混乱していた。
「第9、第10小隊、全機体システム再起動」
「第7小隊。動けないと言っています。あ、識別信号消失。破壊されました」
「第3、第4小隊システムダウン」
『こちら第2小隊。行動に問題なし』
『第1小隊も大丈夫だ。第8小隊の行動を止めればいいんだな』
『誰だ。攻撃された』
『第3小隊の機体が攻撃してきている』
『だめだ。機体が勝手に動いている』
「システムダウンした全ての機体が動き始めています」
「パイロットは出たのか?」
「出ていません。動き出したら降りられません」
『こちらに向けて攻撃を始めた』
『全ての機体が敵なのか』
「第1、第2は問題ないのだな」
『第1小隊、全機問題なし』
『第2小隊も全機異常なし』
「第1、第2小隊の識別マーカーを変更。それ以外は敵と判断しろ」
「街の機動部隊はどうなっている」
「ケルベロスの発見に手間取っています」
「基地の警備員を全て回せ。機体を操っているやつが必ずいるはずだ」
篠原を乗せた多目的支援機
長野基地上空で、篠原はNCBM同士が戦っている異様な光景を目にしていた。
「降りられるか?」
コパイロット席から地上の戦闘の様子を伺う篠原が、隣のパイロットに聞いた。
「降りろと命令されれば、降りますよ」
パイロットは笑いながら言うと、滑走路に向け機首を下げた。
長野基地格納庫周辺
『構わん。コクピットを狙ってくれ』
自分の意思に反して味方にライフルを撃つパイロットが悲痛な声で通信を送っていた。
「コクピットを潰しても動きは止まらん。コクピットは狙わん。安心しろ」
そう言いながら第1小隊1番機田沼は、通信を送ってきた機体の頭部をライフルの連射で吹き飛ばした。
残った頭部から火花が飛ぶ。
しかし、頭部を壊しても機体は動きを止めなかった。
「だめだ。電気系統を潰しても効果なし」
すかさず田沼は膝の関節の装甲の隙間に向けてライフルを撃った。
関節が壊される。
頭を飛ばされ、さらに右足を失った機体はその場に倒れ込んだが、それでもまだライフルを撃ち続けた。
『申し訳ない。申し訳ない・・・・』
立つことが出来ずもがきながらも攻撃を続ける機体の中で、パイロットは悔しさで涙を流していた。
バシッ・・・。
涙を流すパイロットは大きな衝撃を感じた。
田沼がライフルを持った右腕を吹き飛ばしたのだ。
頭と右腕と右足を失った機体はそれでもしばらくもがいていた。しかし、うまく動けないことに諦めたのか、動きを止めた。
『ありがとう・・・』
攻撃をかわしながら次の目標に向かってライフルを撃つ田沼に、パイロットの安堵した声が届いた。
長野県 NCBM基地司令室
司令室の扉が開くと、探査システムを背負った篠原とノートパソコンを抱えた山内が息を切らせながら入ってきた。
室内には状況を確認しそれを伝えるオペレーターの声が飛び交っている。
「どうなっている?」
篠原は息を整えながら笹村に聞いた。
「はい。第1、第2小隊が応戦しています。電気系統を破壊しただけでは行動を止めることが出来ないので足を攻撃していますが、苦戦中です」
「独立遊撃部隊が向かっている」
「ありがたい」
篠原の言葉に笹村は安堵した表情を見せた。
「ケルベロスの発見はどうなっている」
「増員して捜索をしていますが、ほとんど発見できていません」
「高機動車を出してくれ。山内君と一緒に街に出て探査システムでケルベロスを探す」
「探せるんですか?」
「ああ」
答える篠原の後ろで山内が親指を立てた。




