第8小隊
NCBM基地から少し離れた住宅地
「こんなとこにいたのか」
住宅地の中をケルベロスを探して歩き回っていた機動部隊の須藤は、民家の植え込みの影でうずくまるケルベロスを目にしていた。
「本部に連絡」
須藤は高機動車に通信を送った。
『攻撃許可出ました』
須藤は攻撃の許可が下りたことに安堵した。捕獲せよ、なんて言われたらたまったものじゃない。
「映像記録をとってくれ」
他の隊員に言うと、須藤はケルベロスから距離を取りライフルを構えた。
トリガーを引く。
マガジン1個分の銃弾を撃ち込んだところで、ケルベロスは霧散した。
「硬さはこんなものか。それよりも厄介なのは見つけにくいと言うことだ・・・」
須藤は、やれやれとため息をついた。
「映像を本部に転送。それと人員増員の要請」
索敵システムが効かない状況では、人手に頼るしかなかった。
NCBM基地司令室
『一瞬、システムのフィルターの作動表示が出た。その後機体が動かない』
第8小隊の2番機からだった。
それは、他の3機も同様だった
「システムを強制終了させろ」
『システム強制終了』
『システムエラーが出ました』
『強制再起動』
『あ、動いた。いや違う。か、勝手に動いている』
『強制終了』
第8小隊のパイロットたちはパニックに陥っていた。
「システムは起動していないのだな」
「こちらでも終了を確認しています」
『システムが起動していないのに、動いている!』
『どうしてシステムなしで』
『だめだ、止められない』
武器を持つ第8小隊の4機は、パイロットを乗せたままその意思とは無関係に隣の第4格納庫へと歩き出した。
篠原を乗せた多目的支援機
長野基地に向かう篠原は機上で笹村からの緊急通信を受けていた。
「おそらくシステムを介さず直接神経を支配しているのだろう。他の機体はどうしている」
『第4格納庫付近で第7小隊が乗っ取られた機体と戦闘中。他部隊が援護に向かっています』
篠原は少し考えた後。
「第1、第2小隊、および戦闘中の機体以外はパイロットを降ろせ」
『それは・・・』
笹村には篠原の言った意味がわからなかった。
「機体とともにパイロットを殺してもいいのか」
そこでやっと意図がわかった。
『了解しました』
さらにケルベロスにNCBMが乗っ取られる危険性があった。いくらパイロットが乗っていたとしても、システムをスルーされれば意味がない。乗っ取られた機体にパイロットが乗ったままでは、味方を攻撃するのと同じだ。それでは機体を破壊して行動を止めることを躊躇することとなる。
篠原は咄嗟に速水から聞いたことを思い出していたのだ。接続率80%が乗っ取りのボーダーライン。第1、第2小隊のパイロットは他の部隊に比べ接続率がやや高かった。
『独立遊撃部隊が発進。長野基地に向かいました』
本部のオペレーターからの通信だった。
「山内君、場所は拾えるか?」
山内はコクピットの後ろの席で、50センチ四方ほどの探査システムに繋がれたノートパソコンを操作していた。ノートパソコンは歪な形をしているが、水冷冷却システムを備えた山内のオリジナルだった。
「NCBMとの距離が遠くてまだ拾えません。機体のシステムにログが残っているはずですので、通信距離まで近づけばケルベロスの位置がわかると思います」
山内が操作する無接点神経接続のイータ波の発信源を探るシステムが働けば、NCBMの乗っ取りを行っているケルベロスの場所が特定できるはずだ。
第1、第2小隊。そして、独立遊撃部隊が加われば、乗っ取られた機体が基地から外に出ることを抑えられるだろう。さらに場所を特定しケルベロスを叩く。
篠原は作戦の進行具合を頭に描いていた。




