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無人のNCBM


長野県 NCBM基地から少し離れた住宅地


 秋が近づき日差しが柔らかくなった午後。

 公園では小さな子供たちが遊び、母親はそれを見守りながらママ友同士の会話を楽しんでいた。

 「ママー、なんかいる」

 一人の子が母親に近づき少し離れた場所を指さした。そこには何かを囲むようにしゃがむ他の子供たちがいた。

 「なに?」

 母親たちはみんなで子供たちがしゃがんでいる場所に向かった。

 そこで覗き込んだ母親の何人かは驚きで動きを止め、また何人かは悲鳴をあげた。

 「離れて、触っちゃダメ!」

 ただ一人冷静な母親が、子供たちをその場から離れさせた。


 少ししてNCBM基地内に警報が鳴り響いた。





統合軍本部作戦司令室


 「さらに小さくなっているが、間違いなくケルベロスだ」

 長野基地から送られてきた映像を見ながら、篠原は笹村との通信を行っていた。

 映像のケルベロスは全長が30センチほどで、死んでいるかのようにうずくまったまま動かなかった。

 『索敵のAIに学習させましたが、これだけ小さいと障害物の影に隠れて思うように索敵できません』

 「1匹のはずがない。人を出せ。機械に頼るな」

 『わかりました・・・』

 急にモニターの中の笹村が画面から外れた。

 『・・・誰が乗っている・・・、確認・・・、』

 オペレーターとのやりとりが微かに聞こえた。

 少しして慌てた表情の笹村が画面に現れた。

 『NCBMが一機、誰かが勝手に動かしているようです』

 笹村はオペレーターの声が拾えるようにマイクを調整した。

 『コクピット内にパイロットの反応がありません』

 『間違い無いのか』

 『間違いありません。無人です』

 長野のやりとりを聞いている篠原は、ついにきたか、と思った。

 『映像送ります』

 「モニターに表示」

 篠原がオペレーターに指示を出すと、すぐに大型モニターに映像が流れ出した。

 「これは、本当に無人なのか?」

 映し出されたNCBMは、パイロットが乗っているかのように普通に歩いていた。

 すると無人のNCBMは、何かを見つけ急に歩く速度を早めた。

 「まずい。武器コンテナのロックを確認しろ」

 篠原の声と同時に無人NCBMは武器コンテナのカバーに右手を叩き込み破壊していた。

 そして武器コンテナからライフルを手にすると、ハンガーに固定された他の機体に向けて発砲した。

 「この格納庫は放棄しろ。出せる機体でこいつを叩け。壊しても構わん。絶対に基地から外へ出すな」

 篠原の指示に笹村は頷くと、モニターから外れた。

 「あとを頼む。長野に行く。小型機の準備を」

 篠原は横に立つ作戦参謀に告げると司令席を立った。

 そして、廊下に向かいながらポケットから端末を取り出すと、バイオエレクトロ二クス研究所の山内に回線を繋いだ。

 「篠原だ。機体が乗っ取られた。準備はどうだ?」

 『えー、もうですか。じゃぁ、急いで機械を持って長野に向かいます』

 『・・・どうやって行くの・・・』

 山内の後ろで速水の声がした。

 「わたしも長野へ向かう。途中で拾うので準備をして待っていてくれ」

 『わかりました。・・・篠原さんが拾ってくれます・・・』

 そこで通信は切れた。

 篠原は、早足で本部長室へと向かった。

 



  

長野県 NCBM基地司令室


 「第3格納庫は放棄だ」

 「第8小隊がすぐに動けます」

 「出撃させろ。他の部隊のパイロットは全員コクピット内でシステム起動後待機」

  第3格納庫に大きな爆発が起こった。同時に内部を移していたカメラの映像が切れた。

 「NCBMの破壊による爆発です」

 「無人機は格納庫から出ています」

 外のカメラに切り替わったモニターには、燃え上がる格納庫から出てくる無人機が映し出された。

 『第8小隊、森下です。現場に到着、無人機確認。これより攻撃を始めます』

 「コクピットを狙え。破壊しても構わん」

 『了解』


 第8小隊の1番機が真っ先に無人機に向けライフルのトリガーを引いた。

 それを予測していたかのように、無人機は飛び上がり射線を避けた。

 その動きの速さは、まさしくケルベロスのものだった。

 無人機の着地地点に向けて2番機、3番機がトリガーを引いた。

 しかし、無人機はバーニアを使って着地のタイミングをずらした。動きを追っていた1番機が、もらった、とばかりにトリガーを引いた。

 1番機のライフルから放たれた銃弾は、無人機のコクピットを直撃した。一瞬動きの止まった無人機に向け、他の機体も一斉に撃った。銃弾を浴びてコクピットの装甲が飛んだ。さらに銃撃を続ける。

 やがて無人機はコクピットから火花を飛ばし、力が抜けたように地面に倒れ込んだ。


 「無人機、動きが止まりました。・・・いや、まだ動きます」

 オペレーターが戸惑う声を出した。

 「離れろ!」

 笹村の叫びは間に合わなかった。

 倒れ込んだ無人機を確認しようと近寄った1番機のコクピットの装甲が飛んだ。無人機が至近距離でライフルを撃っていたのだ。さらに無人機は装甲のなくなったコクピットに向けライフルを撃ち続けた。

 1番機はコクピットから火花を吹き出しながら無人機に覆いかぶさるように倒れ込んだ。

 その直後、大きな爆発が起こった。続けてもう一度。2機の動力源が誘爆したのだった。

 立ち上る炎と黒煙の周りで、第8小隊の残りの4機が茫然と立ち尽くしている・・・、ように見えた。

 

 

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