調査
神奈川県 国防省統合軍本部本部長室
NCBM部隊長野基地では、笹村少佐によって味方を攻撃したパイロットの取り調べが行われた。
その様子を神奈川の統合軍本部で見ていた篠原は、経過を説明するために大川本部長の部屋にいた。
「浅野斗真 28歳、経歴には特に問題となりそうなところはないか・・・」
大川は自分の机のモニターに映った浅野斗真のプロフィールを見ていた。
「味方に攻撃をした直後は多少パニック状態に陥ったようですが、そのあとすぐにシステムの再起動など冷静に対処しているようにも見えます。笹村少佐はさらに詳しく調べると言っていますが、取り調べ中の態度を見ていて自分は問題を起こすようなパイロットとは感じられませんでした」
「すると、機体側の問題か・・・」
「浅野の乗っていた機体は井桁整備主任とともに研究所に行きました。そこで何か見つかるのではないかと思います」
「君は、どう思う?」
「はい。機体の故障などで他の機体を攻撃すると言うことはまず起こり得ません。そうなると・・・」
篠原は言っていいものか考え込んだが、すぐに大川が話を続けた。
「何者かがシステムに侵入したと言うことか」
「NCBMの基礎となったバイオマシンの技術は先の戦争で全ての情報が開示されています。しかし、その後のNCBMの技術は我が国独自のものです。どこかの国がその情報を狙うことは十分考えられます。しかし・・・」
「そうだな。技術を盗むなら、もっと分からず盗むだろうな」
「はい」
「いずれにしても、機体の調査が進めばわかることだ。だが、念のために研究所と独立遊撃部隊のセキュリティは強化しておいた方がいいな。野嶋所長にはわたしから連絡してみるが、古川大尉には早急に君から直接伝えておいてくれ」
「分かりました」
山梨県 バイオエレクトロニクス研究所 実験棟地下大型格納庫
格納庫内には大型の自走式ストレッチャーに横たわったNCBMが、長野基地より搬入されていた。
周囲には研究所のスタッフに混ざって、野嶋、速水、井桁、山内、上田、そして報瀬が集まっていた。
山内がコクピットに入りすぐにシステムのコピーをとった。
「じゃぁ、僕は部屋に篭りますので・・・」
そう言って、早々に山内部屋へ向かった。
「さて、どのような手順でやりますか?」
井桁が野嶋に聞いた。
「まずは、こちらで神経走行に異常がないか調べますので、井桁さんは電気系統をお願いします」
「分かりました」
井桁はすぐに作業にかかった。
「それじゃぁ、わたしがコクピット側の神経を見るから、李依ちゃんは末梢側を見て」
「はい」
速水が上田に指示を出した。
「え、あたしは?」
「報瀬は野嶋所長と雑談」
速水が笑いながら言った。
「マジ・・・」
「後で機体に乗ってもらうから、それまで待機ってこと」
「わかった」
報瀬は本当に雑談でもしようかと、野嶋へ近づいた。
「どうだ、向こうは?」
近寄ってきた報瀬に気付いた野嶋が先に声をかけた。
「うん、楽しいよ。体も全然問題ないし」
「そうか、よかった」
NCBMの周囲に大型機械が集まってくる。
「井桁さん、どっちからやります?」
「右からやるから、上田さんは左から」
「はーい。神経スキャンはこっちに回してください」
「速水さん、ここからコクピットに届きます?」
「ああ、延長コード使わないと無理かな」
「了解。繋ぎます」
皆が慌ただしく動き回る。
「ちゃんとご飯食べてる?」
報瀬が一人になった野嶋の食生活を心配して聞いた。
「ああ、自分でも作っているし、時々速水君がいろいろ持ってきてくれるからな。不自由はない」
「なーんだ、あたしがいなくても大丈夫なんだ」
報瀬がちょっとがっかりしたように言うと、野嶋は笑っているだけだった。




