60 罰ゲーム(下)
千野柊斗はすでにソファのそばまで歩み寄り、無造作にリネン素材の四角いクッションを手に取った。
彼は振り返ってクッションを放り投げると、遠慮する素振りも全く見せずにその上にうつ伏せになり、むき出しの広い背中を無防備に晒した。
彼は顔の片側をクッションの端に埋め、顔を半分だけ覗かせると、極めて当然のような口調で顎で使ってきた。「来いよ。今日、肩がすごく凝ってるんだ」
リビングでは、相変わらず冷房がゴーゴーと冷たい風を吹き出している。
ルルはテレビ台の上にしゃがみ、高みから尻尾を揺らしながら、まるで高みの見物を決め込むような目で彼らを見つめていた。
奏はまるで錆びついたロボットのように、ぎこちない動きでソファから起き上がった。
前方のラグの上にうつ伏せになっている、白くなめらかで健康的な艶を帯びた背中を持つ少年を見つめ、奏の口角がピクピクと二度引きつった。
先ほどの心臓がバクバクした余韻がまだ全身の隅々を巡っており、指先まで少し痺れている。
断りの言葉が口の中を三周したが、結局は腹の中へと飲み込んだ。
LANケーブルを引っこ抜かれたりゲーム機を没収されたりするのに比べれば、尊厳ゼロのマッサージ係になることくらい、この暴君が下せる最も寛大な「罰」だと思えたからだ。
奏は深呼吸を一つすると、鉛のように重くなった両脚をぎこちなくソファから下ろし、あの背中に向かってノロノロと這い寄っていった。
そのまま千野柊斗のそばまで近づいていく。少年はラグの上にうつ伏せになり、顔の大半をリネン素材の四角いクッションに埋め、ふわふわの淡い金色の後頭部と、広くてまっすぐな背中だけを覗かせている。
風呂上がりだからか、背中を覆う筋肉の層からはまだ温かい湯気が漂っているように見えた。
柏木奏はため息をつき、観念して両手を伸ばすと、恐る恐る柊斗の肩に手のひらを当てた。
指の腹が肌に触れた瞬間、奏の動きが気づかれないほどわずかに止まった。
感触が、予想外に良かったのだ。
長年の運動による粗さがあるという予想に反して、少年の肌の表面は非常になめらかで、しなやかなハリがあった。
指先で押すにつれて、肩甲骨の下を覆う引き締まった豊かな筋肉の層がはっきりと感じられる。それは石のように硬いわけではなく、若者特有の生命力と弾力性を帯びていた。
奏は心の中の小さなつぶやきをしまい込み、相手の僧帽筋に親指を当てて、適当に揉み始めた。
「飯、食ってないの?」
揉み始めて1分も経たないうちに、クッションに埋もれた金髪の頭から不満げな声が漏れた。
柊斗の声は布越しにくぐもっており、あからさまなダメ出しのニュアンスが滲んでいた。
奏の指がピタリと固まった。
彼はその後頭部を睨みつけ、奥歯をギリッと噛み締めると、心の中でこの恩知らずなガキを八百回ほど往復ビンタして説教した。
しかし表面上は、残業代も出ない末端の平社員のように、黙って姿勢を調整し、体の重心を前にかけて、上半身の体重をすべて掌底に集中させ、柊斗の脊椎の両側に沿って力強く押し込んでいくしかなかった。
「ニャーン――」
ちょうどその時、ソファで毛繕いをしていたゴールデンチンチラのおデブ猫、ルルがこちらの物音に気を引かれた。尻尾を振り、キャットウォークで近づいてくる。
ルルは柊斗の頭の周りをぐるりと一周し、エメラルドのような大きな目で奏の絶え間なく上下する両手を見つめた。どうやらこの行為に対して、言葉にできない何らかのシンパシーを感じたようだ。
ルルは前足を伸ばし、柊斗の反対側の肩のそばへ行くと、遠慮も何もなくその白い手袋のような両前足を乗せた。
そして目を細め、喉の奥から「ゴロゴロ」と音を鳴らしながら、両前足を左右交互に動かし、柊斗のむき出しの肩の上でふみふみし始めたのだ。
猫の肉球から出たり引っ込んだりする爪が奇妙なリズム感を生み出し、奏のマッサージの動きと合わさって、なんと不気味なほどのシンクロ(同調)を見せていた。
「……」
勝手に「マッサージ師」の列に加わったぽっちゃり猫を見ながら、奏の口角は二度引きつったが、手の動きは止めなかった。
一人と一匹のミックスダブルス(混合マッサージ)は、ようやくクッションにうつ伏せになっている人物にわずかな満足感を与えたようだ。
柊斗の呼吸は徐々に深く、穏やかなものへと変わっていった。
奏は彼を見つめた。普段はいつも不機嫌そうで、誰を見ても気に入らなそうなあの顔が、今は大半が柔らかいリネンの生地に沈み込んでいる。淡い金色の髪が頬やうなじにサラサラと散らばり、キャップの束縛がない分、ふんわりと柔らかそうに見えた。
髪の毛から下へ視線を移すと、柊斗が微かに目を閉じているのが見えた。
その長いまつ毛がリビングの暖かな光の下で淡い影を二つ落とし、少年の呼吸に合わせて、まぶたの下で微かに震えている。
こわばっていた顎のラインも緩んでおり、自分で力を使う必要のないこの物理的リラクゼーションを、本当に心から楽しんでいるようだった。
奏の視線は少年の背骨に沿って下へと向かい、無造作に伸ばされた長い脚に留まった。
よほど気持ちいいツボに入ったのか、グレーのハーフパンツを穿いた柊斗のふくらはぎが、無意識のうちに小さくぴょこんと跳ね上がった。足の甲がピンと伸び、つま先が空中で軽く二、三度揺れた後、再びふにゃりとラグの上に落ちる。
奏の動きが半テンポ遅れた。
この無防備な、気持ちよさのあまり足を跳ね上げてしまうような姿と、昼間にテニスコートで全員を地にひれ伏させていた暴君とのギャップが、あまりにも大きすぎたのだ。
少年特有の、どこか子供っぽいこうした仕草は、柊斗がやると、なぜか無視できないほどの可愛らしさを醸し出していた。
頭のネジが一本飛んだのか、奏は口を開いた。
わざと声を低くし、調子に乗って、テレビに出てくる温泉旅館のオヤジマッサージ師の口調を真似て、ゆっくりと言った。
「お兄さん、すっごく肌に弾力があるねぇ~。オホホ」
リビングの空気が一瞬にして静まり返った。
ルルのふみふみの動きでさえ一秒止まり、首を傾げて奏をちらりと見たほどだ。
クッションに埋もれている人物は何も言わなかった。
一秒後、柊斗はゆっくりと片目を開けた。彼は微かに首を横に向け、圧迫されて赤い跡がついた片頬を覗かせると、まるで馬鹿でも見るような氷のように冷たい視線で、オヤジ声を披露している柏木奏を横目で睨みつけた。
奏の顔に浮かんでいた作り笑いが固まり、彼は黙って口を閉じた。手元の力加減は、再びあの魂の抜け殻のような機械的なマッサージに戻った。
しかし、数分も大人しくしていただけで、奏のそのおしゃべりな口がまたウズウズし始めた。
彼の視線は、柊斗のくっきりとしたラインの肩と背中を行ったり来たりしていた。太陽の下で丸一日午後の間ずっと晒され、それどころか毎日屋外コートで鬼の特訓を受けているというのに、少年の肌は依然として均一で冷たいトーンの色白さを保っている。
何よりも重要なのは、うなじ、腕、そして背中の間に、服で隠されていたことを示す日焼けの境界線(日焼け跡)が一切見当たらないことだ。
「お前、普段どこのメーカーの日焼け止め塗ってるんだ?」柏木奏はついに我慢しきれず、千野柊斗の肩甲骨を指でツンツンと突きながら、知的好奇心を顔いっぱいに浮かべて尋ねた。「日焼け跡が全く見えないなんて、ウォータープルーフ効果高すぎだろ」
「日焼け止め塗るの嫌いだから」
柊斗は再び顔をクッションに埋め、くぐもった声で答えた。その声には邪魔されたことへの苛立ちが少し混じっていた。「あんなの体に塗ったらベタベタするし、汗かいたら気持ち悪いだろ」
奏は息を呑み、手の動きまで止めてしまった。
「お前、日焼け止め塗ってないのか?!」驚きのあまり声が二トーンほど高くなった。「気温38度の猛暑で、しかも屋外のクレーコートだぞ!テニスやってる奴なら誰だって大人しく日焼け止めを塗りたくるはずだろ!お前の肌はチタン合金ででも出来てるのか?日焼けも色ムラも全くないなんて、紫外線の物理法則に反してるぞ!」
一年中家に引きこもって光を避けている生粋のオタクとして、柏木奏は紫外線の殺傷能力に対して骨の髄まで畏敬の念を抱いていた。この生物学の常識に反する体質が、彼には全く理解できなかった。
「うるせえ」
柊斗の背中がイライラしたように動き、ぽっちゃりしたゴールデンチンチラを肩から直接振り落とした。「マッサージしろ、無駄口叩くな」
奏は心の中で深々とため息をつき、大人しく口を閉ざした。
彼は内心で毒づいた。このガキ、運動神経と体力ゲージがカンストしてるだけじゃなく、「紫外線ダメージ無効」のパッシブスキルまで持ってやがるのか。
リビングには再び、エアコンの吹き出し口の音と、猫のゴロゴロという喉鳴らしだけが響き渡った。




