58 限定特典CG(下)
実に絵になる光景だ。
だが、そのひどく無害そうに見える横顔を見つめながら、奏は内心で自分の推測をさらに確信していた。
このガキ、100パーセントまだ怒っている。
なぜなら、柊斗の猫を撫でる手つきは優しいものの、その視線は最初から最後まで、ロングソファのあるこちら側へ1ミリたりとも向けられなかったからだ。
そのわざとらしいほどのガン無視はあまりにも露骨で、いっそ「俺は今すごく機嫌が悪い」と書かれた看板でも立てておけばいいのにと思うレベルだった。
奏は手にしていたコントローラーを置いた。
彼は両手で本革ソファの座面をつき、お尻を少しずつ、まるでゆっくりと横歩きするカニのように、ソファの縁に沿って柊斗のいる一人掛けソファの方へとにじり寄っていった。
「あのさ……」
奏はコホンと咳払いをして、この息が詰まるような沈黙を破ろうと試みた。「今日はあんなに長時間テニスをして、しかも連戦連勝だったんだから、テニス魂を完全解放できた感じで、さぞかし楽しかっただろ?」
返事はない。ルルのゴロゴロという喉鳴らしだけがリビングに響いている。
奏はギリッと歯を噛み締め、作戦を変更して、今日の自分の貢献度をアピールすることにした。
「お前は知らないだろうけど、今日の午後2時の日差しがどれだけ凶悪だったか。俺はあの炎天下の中、風ひとつない屋外の休憩エリアで、お前の練習に丸々3時間も付き合って座ってたんだぞ!」
奏はそう言いながら手を伸ばし、すでに日焼けで赤くなっている自分の鎖骨あたりを指差して、相手の数少ない良心に訴えかけようとした。「見ろよ。この自己犠牲の精神、ちょっとした労いの言葉くらいもらう価値があるんじゃないか?」
柊斗の猫の背中を撫でる指は、相変わらず止まらなかった。
奏の恩着せがましい言葉を聞きながら、その瞳に一瞬、微かな光が走った。そして、彼は突然動いた。
だが、振り向いて礼を言うためではなかった。
柊斗は少し姿勢をずらすと、そのまま横を向き、玉のように美しく引き締まった、まだ少し水滴の残る裸の背中を、容赦なく奏の方へ向け、後頭部だけを見せつけたのだ。
柊斗の肩を突こうと伸ばしていた奏の手は、空中で固まった。
ほんっとうに面倒くさいガキだな!
奏は心の中で盛大に白目を剥いた。怒ったら背中を向けて無視するなんて態度、一体誰に教わったんだ?お前は小学生かよ?!
奏は手足を使ってその広い本革ソファの上に這い上がり、両足を揃え、極めて標準的な正座の姿勢で、ソファのクッションの上にきちんと座った。
両手を膝の上に置き、頭を下げる。
「申し訳ありません、千野様、俺が悪うございました。あなた様を怒らせるべきではありませんでした」
声はすこぶる誠実だった。
その言葉を聞いて、ソファの上の背中がようやく反応を見せた。
柊斗の猫を撫でる手が止まった。彼の体がわずかに揺れ、振り向くと、長いまつ毛に半分ほど隠されたその視線が、ようやく逸らされることなく奏の顔に向けられた。
「へえ?」
柊斗は片眉を上げ、笑っているような笑っていないような弧を口角に描いた。「じゃあ言ってみろよ、どこが悪かったんだ?」
彼の声は少し掠れていて、風呂上がりの気怠さを帯びていたが、その気だるげで上から目線な口調は、相変わらずぶん殴りたくなるほどムカつくものだった。
奏は言葉に詰まった。
彼は脳を高速回転させ、今日の午後に起きたすべてのことを必死に思い返した。他人に攻略法を提供するようなことは、彼からすれば人助けの範疇であり、決して間違いではない。それに寝ることも、人類にとって抗えない生理的欲求だ。
では、一体どこが間違っていたというのか?
数秒後、奏の目が輝いた。彼は自分なりに、つけ入る隙のない完璧な論理を見つけ出したのだ。
「俺の過ちは……」奏は顔を上げ、悪びれる様子もなく堂々と柊斗を見つめた。
「俺の過ちは、今朝出かける時、お前と一緒に行くって承諾するべきじゃなかったってことだ。俺は家でしっかり寝ているべきだったんだ。そうすれば、お前の学校に付き合う必要もなかったし、俺の行動でお前が怒ることもなかった。根本的な原因から解決する、これこそが最大のミスだったってわけだ」
言い終わるや否や、リビングの空気が一瞬で凍りついたかのように感じられた。
「チッ」
千野柊斗の喉の奥から、極めて小さく、しかし危険な意味合いに満ちた音が漏れた。
彼はそれ以上、一言も無駄口を叩かなかった。
次の瞬間、彼はそのまま立ち上がり、腕の中でまだ喉を鳴らしていたデブ猫を無造作に傍らへ置いた。
ルルは四つ足を天に向けたままクッションに沈み込み、何が起きたのか反応する間もなく、1秒前まで自分を撫でていた人間が大股で踏み出していくのを見た。
奏は相手の動きを目で追う間すらなく、視界が急にグラッと揺れた。
視界の中の天井とシャンデリアが激しく回転し始める。
「ドサッ!」
ソファが軋む鈍い音と共に、奏は自分が抗いようのない重みによって力ずくで押し倒され、背中が柔らかいソファに深く沈み込むのを感じた。
なんと、柊斗に真正面から押し倒されたのだ!
少年の両手は奏の頭の横に置かれ、膝は奏の腰の側面に押し当てられ、彼をこの狭い空間に完全に閉じ込め、身動き一つ取れない状態にさせた。
奏の瞳孔は激しく震え、脳はこの瞬間完全にフリーズした。
なぜなら、この角度はあまりにもヤバすぎたからだ。
柊斗の身体が、彼の上方のすべての視界を完全に占領していた。
仰向けになった奏の角度から見ると、先ほど暖かな光の下でとても美しく見えたその身体が、今は無視できないほどの威圧感を伴ってのしかかっている。
まだ拭ききれていない水滴が、柊斗の顎の輪郭に沿って、一滴また一滴と奏の鎖骨に落ち、かすかな冷たさをもたらした。
吐息がかかるほどの至近距離で、柊斗のくっきりと割れた腹筋、さらにはスウェットパンツの縁に消えていくVラインまでもが、奏の網膜で何倍にも拡大されたかのように、鮮明に見えてしまっていた。相手の少し荒くなった呼吸に合わせて、その身体が上下するたびに、すでにキャパオーバーを起こしている奏の神経をダイレクトに刺激してくる。
アアアアアア――
柏木奏は心の中で狂ったように叫び、視線をどこに向ければいいのかすらわからなかった。
相手の体から漂う清冽で冷たいミントのボディソープの香りが、満ちてくる潮のように押し寄せ、彼の鼻腔に入り込み、彼が呼吸するための空気を1ミリ残らず埋め尽くしてしまったのだ。




