55 回避と暴走(上)
コート上では、まだ恐怖から抜け出せない日向駆が無情にも王様コートから追い出され、王座を失ってから一分も経たないうちに、千野柊斗が恐ろしい支配力を纏って再び王様のベースラインに立ち戻っていた。
次の挑戦者は、長身で痩せ型の2年生部員だった。彼は先ほどコート外で、日向駆が得点する過程をはっきりと見ていた。
長身の部員は脳内で日向のサーブの動作を再生しながら、深呼吸をしてボールをトスした。
彼は意図的にトスの高さを抑え、日向駆の先ほどのリズムを完全に再現しようと試みた。
しかし、彼のラケットがボールに触れたその瞬間。
ベースライン後方の千野柊斗は、前回のようにリズムの変化によって硬直することはなかった。相手がトスを上げた瞬間に、すでに半テンポ早く、まるで疾走するチーターのように猛然と前衛へプレッシャーをかけてきたのだ!
同じ技は、トップクラスの学習能力を持つ「高知能ボス」に対しては、二度通用しないどころか、かえって最も致命的な隙となる。
「ドパンッ――!」
千野柊斗は、リズムの変わったテニスボールを道中で直接迎撃し、右腕の筋肉を張り詰めさせ、暴力的なハイボレーの姿勢で、長身部員の足元へ直接ボールを叩き込んだ!
ボールが着地して弾み上がった時の凄まじい衝撃は、長身部員の手からラケットを直接弾き飛ばすほどだった。
「遅すぎる!魂胆が顔に書いてあるぞ!」
柊斗の冷酷な声が、対戦相手の耳元に響き渡った。
---
その後の10分間は、完全に一方的な公開処刑ショーと化した。
触発された部員たちは、ある者はトスの高さを下げようとし、ある者は突然のドロップショットでリズムを変えようとした。だが例外なく、彼らを待ち受けていたのは、柊斗のさらに意地悪で、さらに凶暴な、容赦を一切残さない致命的なリターンだけだった。
発狂モードに入った千野柊斗の球速は、先ほどより丸々一段階上がっていた。打球の爆音がコートの上空で立て続けに炸裂し、まるで終わりのない雷雨のようだった。
「ハァ……ハァ……」
「もうダメだ……取れない、絶対取れない……」
一周の勝ち抜き戦が終わる頃には、先ほどまで元気いっぱいだったテニス部の少年たちは、すでに完膚なきまでに叩きのめされていた。コートのあちこちに大の字になって倒れ込み、指一本動かす気力さえ残っていなかった。
いつもは厳しい顔をしているコーチでさえ、体力が無限にあるかのような千野の恐ろしい姿を見て、思わず内心で舌を巻いていた。
「ピーッ!」
コーチは時計を見ると、ようやく慈悲の心を起こして首にかけたホイッスルを鳴らした。
「全員、15分休憩!水分補給!」
---
奏はベンチの影でぐったりとしながら、コート上に散乱する「死体」の山を見て、密かに首を振った。
「このプレイヤーども、メンタルも戦術実行力も低すぎる」
彼は心の中でゆっくりと低評価を下した。「せっかくボスのブレイク硬直期が来たのに、集中砲火で一気に削り切ることを考えず、逆に第二形態の発狂モードにビビり散らしている。チャンスを掴むってことを全くわかってないな」
コーチが休憩のホイッスルを鳴らした、その同じ瞬間のことだ。
コート脇のフェンスの外では、橘結菜が突撃のラッパでも聞いたかのように、隣にいた西野萌香の腕をガシッと掴み、力任せに前へ押し出した。そして、コートから降りてきたばかりの千野柊斗の方へ彼女を引っ張っていった。
柏木奏はサングラスを押し上げ、感心して心の中で拍手した。
「見ろ、これこそが戦術的素養に溢れた上級プレイヤーだ。ボスが戦闘状態を解除した後の、スキルのクールダウン(真空期)を狙うのが実にお上手だ」
西野は休憩エリアから数歩離れた場所まで押し出された。彼女は冷気で結露したスポーツドリンクのボトルをきつく握りしめ、心臓はまるで胸の中で激しいドラムを叩いているかのように早鐘を打っていた。
近づいてくる美少年の前で、彼女の元々可憐な顔立ちは、今や熟れたトマトのように真っ赤になっていた。
彼女は深呼吸をし、喉の渇きを感じながらも、懸命に優しげな笑顔を作り、蚊の鳴くような声で口を開いた。
「千野くん……お疲れ様。これ……」
そう言いながら手を上げ、念入りに選んだよく冷えたドリンクを差し出した。
しかし。
彼女が手を上げたその瞬間、ほんのりミントの香りがする温かい夜風のようなものが、彼女の頬をかすめていった。
千野柊斗の足取りは、半秒たりとも止まらなかった。
彼は脇目も振らず、冷たく、水筒を掲げた女子とすれ違った。その視線は相手に全く留まることなく、まるでただの存在感のない空気の塊であるかのようだった。
西野萌香の言葉は途切れ、ボトルを掲げた手は空中で凍りついた。彼女は完全にその場で呆然とし、顔の血の気は一瞬にして引いていった。
???
---
この悲惨な交通事故を目撃した奏は、心の中で誇張した感嘆詞を連発した。
「なんでこんな気まずいシーンになっちゃうんだ」
奏は黙って首をUVカットパーカーの中に縮めた。
「きっとあいつ、さっきの激しい運動の汗が目に入って、視覚システムに一時的なブラインドスポットが生じたに違いない。絶対にそうだ」
大勢の面前でガン無視されるという社会的死(公開処刑)の光景は、あまりにも殺傷能力が高すぎた。柏木奏は、今自分が光を反射するほど真っ黒なサングラスをかけているにもかかわらず、共感性羞恥で穴があったら入りたいほどの居たたまれなさを感じていた。
彼は慌てて指を伸ばし、サングラスをグッと掛け直して、何も見ていないフリをしようとした。
しかし、心の中でその感嘆の言葉を終える前に、頭上の日差しが突然、圧倒的な圧迫感を持つ巨大な影によって完全に遮られた。
強引で、驚くほどの熱気と攻撃性を帯びた気配が、柏木奏のいる狭い空間を一瞬にして完全に封鎖した。
奏の動きが固まった。
彼はゆっくりと手を上げ、人差し指で鼻筋のサングラスを少しだけ下にずらして隙間を作った。
濃いレンズ越しに視線を向けると、滝のように汗を流し、まだ胸を激しく上下させている長身のシルエットが、自分の目の前にピタリと立っているのが見えた。
千野柊斗は片手であの黒と赤のラケットを下げ、白いキャップを目深に被っていた。
汗が彼の顎のラインを伝って、ぽたぽたと地面に滴り落ちる。
そして、そのつばの陰にある、星のように輝く瞳には、今は危険で灼熱の凶光が燃え盛っており、瞬き一つせずに柏木奏を睨みつけていた。
明らかに、先ほどあの女子を無視してすれ違ったのは、汗が目に入ったからなどでは決してなかった。
この狂暴な野獣は、コートを降りたその瞬間から、視線をただ一つのターゲットにだけロックオンしていたのだ。
二人はこの危険な距離で2秒間見つめ合った。
柊斗は少し顔を伏せ、薄いタコのある指で、柏木奏のUVカットパーカーのジッパーの襟元を乱暴に掴んだ。
彼は目を逸らそうとする柏木奏の目をじっと見据え、薄い唇を動かすと、歯の隙間から氷のように冷たい言葉を吐き捨てた。
「説明しろ」




