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48 真夏、ほとばしる汗、そして猛特訓 (上)

奏がようやくペットボトルを下ろし、長く息を吐き出した時、柊斗が唐突に手を伸ばしてきた。その大きな掌は遠慮の欠片もなく奏の頭頂部をガシッと掴み、指をわずかに丸め、罰を与えるかのような力強さでガシガシと髪を乱した。


「ここにいろ」


柊斗は高みから彼を見下ろした。少年の声は極めて低く、ダッシュした直後の微かな喘ぎが混じっていたが、酷く陰鬱な響きを帯びていた。


彼はゆっくりと顔を近づける。その瞳には、ある種の執着に近い感情が渦巻いていた。そして、柊斗の口角が少しずつ吊り上がり、背筋が凍るほどタチの悪い冷笑を浮かべた。


「次また逃げようとしたら……柏木奏、俺は一生、さっきと同じ方法でアンタを担いで歩くことになっても構わないんだぜ」


その笑顔と危険極まりないセリフのコンボは、奏のただでさえ脆弱な神経を激しく逆撫でした。


柊斗は手を離し、立ち上がった。奏に反論の隙すら与えず、そのまま振り返り、長い脚を広げて大股で、完全に呆然としているチームメイトの群れへと戻っていった。


ベンチに取り残された奏は、飲みかけのペットボトルを握りしめ、サングラス越しにその背中を死ぬほど睨みつけた。


しばらくして、彼は呆れ果てて盛大に白目を剥いた。


(マジかよ……)奏は心の中でギリギリと歯ぎしりしながら咆哮した。(自分より年下で、法定飲酒年齢にも達してない未成年のクソガキが吐いていいセリフか!? どこの三流テンプレ御曹司ロマンス小説からパクってきたセリフだよ!)


『一生担いで歩く』だと? 俺は粗大ゴミか何かか?


奏は胃酸で荒れ狂う胸元をさすりながら、脳内で厳かに架空の『黒革の復讐ノート』を開いた。


【恨み帳:午後2時15分。青葉第一高校テニスコート。千野柊斗から非人道的な物理的追跡および精神的脅迫を受けた。千野のおばさんがヨーロッパ出張から帰国した暁には、食卓で涙ながらにこの暴君の悪逆非道を告発してやる! お小遣い減額の苦しみを味わうがいい!】


心の中で容赦なくバツ印を刻み込むと、奏の狂っていた心拍数も、日陰の涼しさの中でようやく落ち着きを取り戻していった。


コートの中央では、柊斗の先ほどの「100メートル逃走劇」からの「生きた人間のお持ち帰り」という凶行に度肝を抜かれた部員たちが、未だに我に返れずにいた。整列した隊列は水を打ったように静まり返り、何十もの目が探照灯のように、千野柊斗と日よけテントの下の柏木奏との間をせわしなく行き来し、恐怖とゴシップへの好奇心を剥き出しにしている。


「何をキョロキョロしている! 人が走っているのを見たことがないのか!」


色黒のコーチが真っ先に我に返り、気まずそうに二度咳払いをして、手にした作戦ボードをパンパンと叩いた。「総員、聞け! これから午後のフィジカルトレーニングを開始する! まずはこの4面のコートの外周を、全速力で20周だ! 手を抜いたり遅れたりした奴は、その場でシャトルラン50本追加だ!」


号令が下るや否や、少年たちは悲鳴を上げながら散開し、コートには瞬く間に無数のシューズが擦れる激しい音が鳴り響いた。


奏はベンチにだらりと倒れ込み、呼吸が徐々に整うにつれて、いつもの見慣れた「ダメ人間の生存フォルム」へと回帰していった。


表面張力を失った液体のように、ベンチの背もたれに沿ってズルズルと滑り落ち、最終的に頸椎に優しいねじれた体勢で、日陰に半身を横たえた。持て余した長い両脚を無造作に広げ、全身から「たとえ天が落ちてこようとも俺は絶対に立ち上がらない」という究極の怠惰オーラを放っている。


サングラス越しに、奏はコート上で繰り広げられる心肺機能の地獄のようなフィジカルトレーニングを冷ややかに傍観していた。


午後2時半の太陽は、人を溶かしてしまいそうなほど残酷だ。ゴムチップのコートからは肉眼で見えるほどの陽炎が立ち昇っている。半袖短パン姿の少年たちが灼熱の太陽の下を狂ったように走り、滝のような汗が顎や毛先から滴り落ちては、地面に落ちた瞬間に跡形もなく蒸発していく。


「ゼエ……ハア……コーチ……もう無理です……」


まだ10周もいかないうちに、体力の劣る何人かの部員は顔面を蒼白にし、その足取りは苦痛に満ちた引きずり足へと変わっていた。


奏は肺が破裂しそうな彼らの惨状を見て、思わず心の中で「チッ」と舌打ちをした。


大量の水分と電解質を失いながら行う激しい有酸素運動は、筋肉に乳酸を狂ったように蓄積させる。太陽の下でこんな自傷行為にも等しいエネルギー消費をしている連中を見ているだけで、奏まで自分の酸素がゴリゴリ削られていくような錯覚に陥った。


(疲れる……見てるだけで息が詰まりそうだ)


奏はのろのろとペットボトルを手に取り、水を一口含むついでに、集団の先頭を走る影へと視線を移した。


千野柊斗は相変わらずトップを独走していた。


苦悶の表情を浮かべる他の部員たちとは異なり、この体力モンスターは呼吸のペースすら乱していない。白いスポーツTシャツはすでに汗でぐっしょりと濡れ、背中に張り付き、しなやかで力強い肩甲骨のシルエットを浮き彫りにしている。


一歩一歩のストライドはほぼ均等で、そのピッチは驚異的なほど速い。スタミナが消耗している気配など微塵も感じさせず、こいつの身体構造は本当に人間と同じなのかと疑いたくなるレベルだ。


ちょうどその時、日よけテント側のトラックを走っていた柊斗が、唐突に顔を向けた。


十数メートルの距離と眩しい太陽の光を隔てて、その切れ長で鋭い瞳が、日陰に癱軟たんなんしている柏木奏を正確無比に捉えた。


柊斗は足を止めることなく、ただ通り過ぎる一瞬、奏の方に向かって挑発的にシャープな顎をクイッと跳ね上げた。


奏はゴロンと寝返りを打ち、彼に背を向けて、すでに視覚を喪失した死体になったフリをした。


(勝てないなら、逃げるが勝ちだろ)


そして事実が証明した。一般人なら吐血レベルのその20周の「ウォーミングアップ」など、このスポーツ強豪校の鬼畜トレーニングメニューにおける、ほんの最初の一皿(前菜)に過ぎなかったことを。


トラックでの拷問が終わるや否や、コーチのホイッスルが再び死神の宣告のごとく鳴り響き、汗だくの少年たちをコートへと追い立てた。


「全員! ベースラインからの扇形ダッシュ3セット、減速は許さん! その後すぐにメディシンボールのサイドスローとレジスタンスバンドのサイドステップに移れ! 動け動け! 急げ!」

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