2章4話:いない時間■主人公side
朝。
目が覚める。
「……」
静か。
当たり前の静かさ。
でも——違う。
横を見る。
何もない。
分かってる。
昨日から、いない。
でも、確認してしまう。
「……」
体を起こす。
部屋を見渡す。
変わってない。
家具も、配置も、匂いも。
全部そのまま。
なのに——
妙に広い。
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キッチンに行く。
コップを出す。
水を入れる。
飲む。
ただそれだけ。
味がしない。
「……なんだこれ」
小さく呟く。
答えは出ない。
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スマホを見る。
通知はない。
分かってる。
連絡なんて来ない。
来るわけない。
あの終わり方で。
「……」
画面を閉じる。
置く。
数秒後。
また取る。
意味もなく。
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仕事に行く。
いつも通り。
問題ない。
むしろ、集中できてる。
余計なこと考えなくていいから。
効率は上がってる。
はず。
「……」
でも。
ふとした瞬間。
手が止まる。
理由は分からない。
でも、止まる。
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帰る。
ドアを開ける。
静か。
当たり前。
「……」
靴を脱ぐ。
中に入る。
電気をつける。
全部、同じ動作。
なのに——
どこか、抜けてる。
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ソファに座る。
無意識に、隣を見る。
何もない。
分かってる。
でも、見る。
「……くそ」
小さく吐き出す。
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夜。
ベッドに入る。
目を閉じる。
眠れない。
いや、眠れる。
でも——
眠るまでが、長い。
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考えたくないのに。
浮かぶ。
あのときの言葉。
「金も出しただろ」
自分の声。
はっきり思い出せる。
「……最低だな」
呟く。
その通り。
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助けたかった。
それは本当。
でも——
言い方も、タイミングも、全部間違えた。
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「……」
天井を見る。
何もない。
ただ、時間が過ぎる。
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気づく。
遅すぎるけど。
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“支えてた”つもりで。
“必要とされてる側”に、なってた。
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「……」
笑う。
乾いたやつ。
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それが、なくなっただけ。
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それだけなのに。
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やけに、空っぽだった。




