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森の案内人

1. 元の大きさへ

 

「では、貴殿たちを元の大きさに戻そう」

ダールが、手を翳す。

闇の力が、静かに俺たちを包む。

そして体が、大きくなっていく感覚。

視界が変わり、周囲のものが小さくなっていく。

元の大きさに戻った。

「ありがとう、ダール」

俺が礼を言う。

「いや、礼を言うのは吾輩の方だ」

ダールが、優雅に頭を下げる。

「ところで……貴殿たちは、最果ての塔に行くのであろう?」

ダールの表情は確信に満ちていた。

「この森に来たのも天落山に向かう途中だと推察する」

「ああ。天落山に向かうため飛行機という空を飛ぶ機械で飛び越えようとしたが、途中でコントロールできなくなって、この森に不時着してしまった……」

あの時、咄嗟にルーシェンが風の魔法で衝撃を和らげてくれなければ、危なかった。それに……。

「身体が小さくなったせいもあるかもしれないが……一度、エリシアが木に登った際、天落山が見えなくなっていた」

「ふむ……」

ダールが少し考えた後、口を開く。

「この森には、感覚を狂わす魔力が渦巻いている場所が各地にある」

「そこの彼女は魔導人形であるがゆえ、特に影響を受けやすい」

ということは……。

「つまり山が消えたのではなく、エリシアに見えなかっただけか」

「おそらくな」

ダールが頷く。

「普通にこの森を抜けるのは、厳しかろう」

「どうすれば……」

この深い森でエリシアの方向が宛にできないのは厳しい。

しかし、ダールは微笑む。

「マイロなら、方向を間違えることなく天落山まで案内できる」

「ワン!」

マイロが、尾を振る。

「ペンダントの件で世話になったこともある。マイロに案内させよう」

「本当か!?」

それはとても助かる。

「さらに……」

ダールが、取り返したペンダントを俺に渡す。

「このペンダントは、闇の力を注ぎ込めば使用者含め指定した対象を小さくしたり、元に戻したりできる。これを貴公に預けよう」

「ただし、貴殿の今の闇の力では……せいぜい人1人か2人分の質量が限界であろう」

「試してみるとよい」

俺は受け取ったペンダントを胸の上で握り、自分を小さくなれと念じる。

俺の闇の力がペンダントに流れ、体が縮んでいく。

「これは……結構力を使うな……」

30cm程の大きさになるが、それだけでも使う力が多い。

そして、元に戻る。元に戻すのはそれほど力はいらないようだ。

自分1人を小さくするだけでも、結構疲れることがわかった。

「ペンダントは人間だけでなく、無機物も小さくできる。色々試すといいであろう」

ダールが、指を立てて助言をしてきた。

 

2. 遺跡での一夜

 

「時間的にも、もう夕方だ。吾輩の研究所で一晩泊まっていくといい」

ダールが、提案する。

「この部屋に4人は難しくないか?」

ある程度の広さはあるとはいえ、ダールの部屋はさすがに4人も泊まるには厳しい。

「吾輩の力を、忘れたのか?」

ダールが、ニヤリと笑う。

そして、研究室の奥からおもちゃのような建物を出してくる。

「身体を小さく出来るということは、このようなことも出来る」

おもちゃの建物を床に置くと俺たちに力を使う。

「おお!?」

俺たち4人が小さくなると、目の前には先程のおもちゃのような建物が立派な建物としてそびえ立つ。

「これはすごいな……」

「なるほど、こんな使い方がありますか……」

「すごいですね……」

ルーシェンとファルマも感心している。

建物の中に入ると、中も綺麗に整備されていた。

「すごく綺麗ですね」

ファルマも喜びを隠せないようだ。

――この部屋は安全である。ゆっくり中で休むといい――

上からダールの声が聞こえてくる。

部屋も広くベッドもフカフカであり、シャワーまである。

「至れり尽くせりですね」

エリシアも機嫌が良さそうだ。

「いつものように2部屋に別れて休もうか」

「そうですね」

俺たちはそれぞれの部屋に入った。

 

3.闇の力の考察

 

「しかし、闇の力で縮小化までできるとは……やはり闇の力の可能性は素晴らしいですね!」

部屋に入ると、目を輝かせたルーシェンが話しかけてきた。

「確かにな」

そういえば、バエルも闇の力で腕を作り出したりしていたし、自分が思っている以上に闇の力は様々なことが出来るのかもしれない。

「おそらくそのペンダントも、縮小の力を使う媒介でしかないのでしょう。榊さんが力を極めれば、ペンダント無しでも再現できる可能性があります」

「可能性か……」

俺はまだまだ闇の力の本質がわかっていない気がする。

「闇の力ってなんだろうな……」

「それを解き明かすのが、私の研究の目的です」

ルーシェンが真剣な顔でこちらを見る。

「邪神の力と呼ばれている闇の力……ですが、本当に邪神なのでしょうか?」

「しかし今まで私が見た闇の力は、到底邪悪な力とは思えない」

「邪悪な力とされたこと自体、隠された理由があるように思えるのです」

闇の力を邪悪と決めつける神々……生命の神の蘇生のような欺瞞もある。必ずしも善や悪という括りでは片付けられないものがあるのではないだろうか。

「そうだな。そのためにもルシエラに会って、俺の闇の力の本質を見て貰わなといけないな」

「ええ、まずはこの森を抜けなければなりません。飛行機も今夜のうちに修理を終わらせておきましょう。明日からはまた忙しくなりますね」

そう言って部屋の中に飛行機を出すルーシェン。

飛行機を修理する傍ら、話しながら俺たちは休むのだった。

 

4.別れ

 

ダールの遺跡で一晩過ごし、元の大きさに戻った後遺跡を出発することになった。

別れ際、ダールが俺に告げる。

「また再び、相まみえることがあるだろう」

「そうだな」

俺もダールとはいつか再会する予感がする。

「最果ての塔のルシエラは、生半可な相手ではない。気をつけるのだ」

真剣な顔で忠告される。

「祝骨と戦って、もう思い知ったさ」

あれは本当に心が折れそうだった。

「ふむ、もう祝骨に出会っておったか……では、達者でな。マイロよ天落山まで彼らを導くのだ」

「ワン!」

マイロが任せろというように吠え、ダールが手を振る。

ダールの背後で、遺跡の魔力が静かに脈打っている。

かつて神々と戦った存在の威圧は、まだ森に残っていた。

こうして、マイロ先導の元――

森の中を天落山に向けて、歩き出すのだった。

 

 

 

遺跡の入口に残るダールは、榊たちが小さくなって行くのを見つめていた。

「……あの男の闇の揺らぎはやはり……」

踵を返す。

「ならば……吾輩も休んでばかりいられぬな」

その表情には、かつて神々と相対した時と同じ覚悟が宿っていた。





縮減しゅくめつ


ダールが持つ闇の力の一つ。対象の大きさを自在に縮小、または元の大きさへ戻すことができる。

ダールほどの力量があれば山すら縮めることが可能とされるが、榊の現在の限界は成人男性二人分ほどの質量まで。

力の大半は「縮小」に消費されるため、元に戻す際の負担は比較的軽い。

縮小速度は調整可能で、剣程度の物体であれば一瞬で掌に収まる大きさへと変えることができる。



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