表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/109

イスムル族

1. 誤解


砂漠装束の男と剣を交える。

「俺は神の尖兵じゃない!」

攻撃を受け止めながら、必死に呼びかけた。

だが――

「また甘言で、仲間を連れ去るか!」

男は、余計に激高する。

一方、周りの男たちに囲まれた、ルーシェンとエリシアたち。

男たちが、斬りかかってくる。

それを防ぐ、エリシア。

「なんだ、あの刃は!」

「気をつけろ!かなり素早いぞ!」

腕から刃を出すという見たことない姿に、警戒する男たち。

「ええっと、麻痺毒、いやでも弛緩薬の方が……」

ファルマは、毒を準備するが相手が人間であるため、どの毒を使うのか迷っていた。

「下がってください」

ルーシェンが、ファルマを下がらせる。

明らかに魔法使いなルーシェンに周りの男たちも、身体に薄く闇の力を纏い、身構える。

「確かに、闇の力は魔法を弾きますが……」

ルーシェン淡々と魔法を行使する。

結界が、男たちの攻撃を防ぐエリシアごと覆う。

「まさか……!」

驚く、ファルマ。

「二酸化炭素魔法を使います」

ルーシェンが、呟く。

次の瞬間、男たちは全員膝をつき苦しそうにしている。

「気を失わない程度の濃度は、これくらいですね」

満足気な、ルーシェン。

「エリシアさんごとって……!」

ファルマは思わず言葉を失った。

「エリシアさんには効果ないですから」

しれっと言う、ルーシェン。

そして俺に攻撃をしながら、仲間の男たちが膝をついているのに驚く男。

「クソッ!なんだあの魔法は!」

「話を聞いてくれ!」

呼びかけるが、

「話を聞こうが、どうせ粛清だろう!」

そう叫び男が剣に、自分が持つ闇の力を纏わせ、死なば諸共と突っ込んでくる。

それに対して俺も、闇の力を解放して防ぐ。

刃と刃がぶつかり、火花が散る。

「なっ……⁉」

自分の全力を軽く超える闇の力を見て驚く男。

そして俺が男を弾き飛ばすと、

「俺も、闇の力を持つ者だ。だから神の尖兵じゃない」

俺が言うと、男はしばらく迷う素振りを見せたが、剣を下ろし戦意を喪失した。

「俺は……どうなってもいい。だから、仲間を助けてくれ……!」

男が懇願する。

「元々、戦うつもりもなかった」

俺は男に手を差し出す。

「お互い、闇の力を持つ者として……分かり合えないか?」

男は、頭を垂れた。


2. イスムル族の集落


「俺は、ハリムという」

男が名乗る。頭の布をとった顔は浅黒い肌で思ったより若く、精悍な顔つきをしていた。

「榊だ。こちらは、ファルマ、エリシア、ルーシェン」

お互い、自己紹介をする。

「俺はイスムル族の族長の息子だ。そっちの三人は……」

ハリムが、ルーシェンやエリシア、ファルマに目を向ける。

「彼らは、俺の闇の力を知った上で受け入れてくれている仲間だ」

俺は誇りを持って伝える。

「はい!」

「そうです」

「私は榊様の仲間です」

ルーシェンたちが、頷く。

ハリムは、しばらく黙って俺たちを見ていた。

そして、ぽつりと呟く。

「俺も……そんな仲間が欲しかった」

気を取り直したように、ハリムが奥を指さす。

「イスムル族の集落まで、案内しよう」

ハリムについて行く。

その間、他の男たちが後ろから警戒したように着いてくる。

「大分警戒されているな」

「みな、お前の闇の力が大きくて驚いているだけだ」

ハリムが、振り返りながら言う。

「闇の力が……大きい?」

「イスムル族は全員、闇の力を持つ。だが、その力はそれほど強くない者がほとんどだ」

ハリムが、続ける。

「俺が一族の中では一番闇の力が強いが……お前には到底及ばない」

「そうか……」

「詳しい話は、族長に会ってからしよう」

ハリムが、案内する先は、泉より少し離れた所に作られた、地下施設だった。

「これは……遺跡か?」

「ああ。過去の遺跡を利用している。そこを居住区として使っているんだ」

そして、遺跡の中に入る。

入ってすぐのところで、衛兵役の男2人がいた。

「ハリム様!?」

「この者たちは!?」

ハリムが部外者を連れてきたことに、驚いていた。

「こちらは、闇の力を使える同胞だ」

ハリムが、言う。

すると同情したような顔になり、二人が励ましてくる。

「そうか、ここに逃げ込んで来れたんだな」

「よく砂漠を超えて来れたな」

その姿を見ながらハリムが、

「闇の力に目覚めて、命からがらこの砂漠に逃げ込み……何とかここまでたどり着いた人間も、わずかながらにいるんだ」

と説明する。

そして、意外と広く金属質な壁の地下遺跡を進む。

光源虫とは違う光が、廊下に灯っているのを見て――

「これは……?」

まるでSFの施設みたいだ。

「遺跡の奥にある動力がまだ生きている。白銀界ゲートもあり、そこから漏れる魔力を利用して明かりをつけているんだ」

「白銀界ゲートに遺跡……!それは興味深い」

ルーシェンの瞳が好奇心に光る。

「まずは、族長に会おう」

ハリムが、奥に進む。


3. 族長アサム


奥の部屋では――

床に座った壮年の族長が、待っていた。

(意外と……若いな)

少し驚く。もっと老人だと思った。

「何を驚いているんですか?」

ファルマが、聞く。

「なんとなく、老人が族長やってるイメージだった」

「?」

ファルマが、疑問符を浮かべる。

「あなたの元の世界の感覚ですね」

ルーシェンが、突っ込む。

「まあ、そんなところだ」

そう言われるとちょっと恥ずかしいな。

「私は、アサムという。闇の力が使える同胞を、歓迎する」

族長が名乗る。

「何用で、このオアシスを訪れた?」

「最果ての塔を目指している」

俺が、答えると、

「なんと、最果ての塔!?」

驚く、族長。

「何か空を飛ぶ乗り物を使っていたと、ハリムが言っていたが……」

「見られていたのか……」

まさか見られていたとは……。しかしこのイスムル族が気になる。

「イスムル族について、教えて貰えないか?」

「そうだな。闇の力が使える同胞としては気になるだろう」

そして族長が、イスムル族について話し始める。

「イスムル族は皆が闇の力が発現してしまった一族だ。迫害や粛清を逃れ……隠れて旅をした一族がこの地にたどり着き、以後このオアシスをテリトリーとしている」

「こんな砂漠の奥地まで来る神の尖兵もそうそういない」

「ここでなら、闇の力を隠さず生きられる」

ルーシェンの家族のように一人が発現することもあれば、一族皆が発現することもあるのか。

「それでこの地に……」

アサムが両手を広げる。

「同じ闇の力を持つ同胞だ」

「大したもてなしはできないが、一晩泊まっていくといい」

そう族長が、言ってくれた。


4. ハリムの妹


空いてる部屋を、案内するハリム。

何も無い部屋だった。

「この遺跡には砂漠蠍も入って来れない。安全だけは保証する」

そうハリムが、言う。

その途中、

「お前の闇の力の強さは、規格外だ」

「出来れば、一族に加わってくれないか?」

そう勧誘してくる。

「申し出はうれしいが、今はやることがある」

たしかに、この世界で初めて会った同胞と呼べるかもしれない。しかし、まずは最果ての塔に向かう必要がある。

「ただ、俺が何か力になれることがあったら言ってくれ」

しばらく考えたハリムは、

「病人を治せる薬は、無いか?」

ハリムが、聞いてくる。

「私は薬師です。診てみます」

ファルマが、手を挙げる。

「私もよければ見ましょう」

ルーシェンもファルマに続く。そういえば病気にも詳しかったな。

「薬師か!それは助かる。こっちだ!」

そして、案内された部屋では一人の少女が、寝かされていた。

その少女は、咳をしながら――

「兄さん……その人たちは……?」

と聞く。

「彼女はアーシャ、俺の妹だ」

ハリムが、沈痛な表情で言う。

「病に冒され、徐々に弱っている。だが、俺たちの知識では分からない病気で困っていた」

「何とかならないか?」

縋るように、聞く。

診察する、ファルマとルーシェン。

「この病気は……まさか……」

顔が曇るファルマ。

「……これは」

ルーシェンの顔は、今まで見たことのない表情をしていた。

それは、かつて失ったものを思い出した



イスムル族


昔、一族の中で闇の力が発現してしまったため、粛清を避けて各地を転々としていた一族。一族の秘密が漏れ、追い詰められた末に赤砂の砂漠へと逃げ込み、外部からは全滅したと思われていた。

命からがら遺跡のあるオアシスへたどり着き、そこで細々と一族を存続させている。遺跡周辺のオアシスは魔力の影響か植物の成長が早く、食用になるものも多い。加えて砂漠サソリなどの動物性たんぱく質も得られるため、食生活は決して悪くない。

砂漠に人が住んでいるという話は都市伝説程度に語られているが、ごくまれに噂を聞きつけた闇の力の同胞や神の尖兵が現れることもある。ただし、今のところ一族の存在が大きく知られる事態には至っていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ