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グループ作成

 エレベーターで地上へ降りると土産物屋の明るい照明の前に四人の姿があった。


「あ、湊くん遅いよー」


 結愛が少しだけ頬を膨らませて駆け寄ってくる。


「ごめん。おじいさんと少し話をしてたんだ」


「展望台で黄昏てたのか?変なヤツ」


 灰がニヤニヤしながらからかってくる。


「うるさいな。さ、駅に向かおうぜ」


 すっかり日に焼けている江の島の参道を俺たちは歩き始めた。

 昼間の喧騒が嘘のように静まり返った道には海風が心地よく吹き抜けていく。

 色違いのTシャツを着た五人が並んで歩く足音が夜の江の島に響いていた。


「そういえば、さっきおじいさんに撮ってもらった写真」


 俺がスマートフォンを取り出しながら言うと四人が一斉にピタリと足を止めた。


「見たい見たい!湊くん、私に送って!」


 結愛が俺の腕をぐいっと引っ張って画面を覗き込もうとする。


「湊くん、私にも送ってほしいな」


 美咲ちゃんも遠慮がちに自分のスマートフォンを取り出した。


「あたしにも頼むわ」


 灰もポケットからスマホを取り出して見せてくる。


「……個別で送信するのは極めて非効率的ね」


 雪乃宮さんがスマートフォンの画面をタップしながら冷静な声を上げた。


「いっそのこと、この五人でグループラインを作ったらどうかしら」


「お、それ名案じゃん!」


 灰が賛同し結愛もパッと顔を輝かせた。


「いいね!じゃあ私が作るね!」


 弁天橋の街灯の下で俺たちはQRコードを読み合い次々と連絡先を交換していった。


 結愛の素早い操作で俺のスマートフォンにグループへの招待通知が届く。

 画面に表示されたグループ名は『サバイバル』となぜか少し物騒なものになっていた。


「なんでサバイバルなんだよ」


 俺がツッコミを入れると結愛がいたずらっぽく笑った。


「だって今日一日、お猿さんの襲来とか色々あって命がけだったでしょ?」


「……確かにいろいろ生命の危機は存在したわ」


 雪乃宮さんが真顔で頷くので俺は反論を諦めた。

 俺は新しくできたトークルームに先ほどの記念写真を送信した。


 ピロン、ピロンと四人のスマートフォンが一斉に鳴る。

 画面の中には展望台の美しい夜景を背にお揃いのTシャツを着て笑い合う五人の姿があった。


「……ふふっ。悪くないわね」


 雪乃宮さんが画面を見つめながら小さく微笑んだ。


「なんか、あたしたちめっちゃ仲良しみたいじゃん」


 灰が少し照れくさそうに鼻の頭を掻く。


「すごく綺麗に撮れてるね、湊くん」


 美咲ちゃんも嬉しそうに画面をスクロールして写真を拡大している。


「うん、最高の記念だね!ね、湊くん」


 結愛が俺の隣に並び同じスマートフォンの画面を見つめてきた。


「ああ、そうだな」


 色々な修羅場はあったが、この写真を見ていると不思議と悪い気はしなかった。

 今まで全く交わることのなかった別々のベクトルを持つ人たちが『サバイバル』という一つのグループに収まっている。


 俺たちはスマートフォンの画面を眺めながら再び駅への道を歩き始めた。

 真夏の夜の海風が俺たちの火照った体を優しく冷ましていく。

 波乱に満ちた長い一日は確かな思い出の形となって俺たちのポケットの中に収まっていた。

「あれ、俺は?」

「俺たちは敗北したんだ......ならば!俺たちでグループを作るのみ!」

「いや......それただの個人チャットじゃん」

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