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規格外

 「いくぜぇぇぇっ!」


 ゴリの雄叫びと共に第二回戦の幕が開いた。


 審判を押し付けられた俺が笛を吹くよりも早く、彼はボールを空高く放り投げた。

 そのボールが真夏の太陽を完全に隠す。

 砂浜を蹴り上げたゴリの巨体が重力を無視したかのような滞空時間で宙に舞った。


「雪乃宮選手!さて、その軌道を計算できるか!?」


 俺がコートの外から叫ぶ。


「……初速、角度、風の抵抗……あり得ないわ。あの質量と推力は人間を逸脱している……ッ!」


 日傘を放り出した雪乃宮さんの顔に初めて明確な焦りの色が浮かんだ。

 彼女の頭脳が弾き出した弾道予測が目の前の現実の前に次々とエラーを引き起こしているのだ。


 「俺の、湊への愛を受け取れぇぇぇっ!!」


 ドゴォォォォンッ!!

 ゴリの丸太のような右腕がボールを粉砕せんばかりの勢いで振り下ろされた。

 ひしゃげたボールが摩擦で炎を纏っているかのような錯覚すら覚える。


「灰さん!避けて!」


 雪乃宮さんの悲痛な叫び声が響いた。

 直後、雪乃宮さんと灰の間の砂浜にボールが着弾した。

 ズドォォォォン!!

 爆発音が江ノ島のビーチに鳴り響き、巨大な砂煙が雲のように舞い上がった。


「ゲホッ……ゲホッ……なんだこれ!?」


 灰が咳き込みながら砂煙を手で払う。

 煙が晴れた後には隕石でも落ちたかのような巨大なクレーターがぽっかりと口を開けていた。


 ボールは砂の奥深くにめり込みシューシューと謎の煙を上げている。


「嘘でしょ……」


 美咲ちゃんが震える声で呟いた。

 彼女の渾身のスパイクすら可愛く思えるほどの圧倒的な破壊力だ。


 「ハッハッハ!見たか!これが俺の湊への愛の力だ!」


 ゴリが自慢の大胸筋をピクピクと躍動させながら豪快に高笑いしている。

 その隣ではスパイクの風圧だけで吹き飛ばされた健太が白目を剥いてピクピクと痙攣していた。

 何一つプレイに貢献していないのに親友のライフはすでにゼロだ。


「私の……完璧な計算が……」


 雪乃宮さんが砂浜に膝をつき両手で頭を抱えている。


「あんなの自然界のバグよ……計算のしようがないわ……」


 学年トップの氷の女王が単なる筋肉の暴力の前に完全に敗北した瞬間だった。

 俺はコートの外で結愛と美咲ちゃんと一緒に完全にドン引きしていた。


「ねえ湊くん……あのお猿さん、私が海に沈めてきてもいい?」


 結愛が漆黒の笑みを浮かべながらとんでもなく物騒なことを提案してくる。


「やめとけ結愛。あれはもう人間の手に負える生き物じゃない」

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