アリス君とクラスメイト
僕はアランさんについて龍使徒棟の廊下を歩いて行く。
さっき訓練場で挨拶を終えて、今度は僕が一緒に学んでいく同年代の龍使徒に会いに行く。
ドキドキするな。
僕が一応同期になる今年龍使徒になった人たちは全部で11人いるそうだ。
龍使徒になったと言っても戦い方も何も知らない僕はこれから三年間色んな事を勉強してそうして本当に龍使徒になる。
「さっきは立派だったぞ。」
アランさんにそう言われて僕は恥ずかしくなる。
自分では精いっぱいやろうとしたけど、緊張してボロボロだったって分かるから。
それに何より、エトとの差がありありと分かってしまった。
龍使徒になると決めた日から全然エトと喋れてない、エトはあんな風に思っていたなんて。
・・・僕は。
「ほら、ここだぞ。」
アランさんが戸を開く。
少ないけど机が並ぶそこは教室だった。
中にいたのは全部で11人、その視線が僕に集まる。
「じゃあ、俺は行くからな。上手くやれよ。」
「ありがとうございます。」
僕の頭に手を置いてからアランさんは出ていった。
「来た来た! よろしくな、アリス! すげー、近くで見てもそっくりじゃんかよ。」
僕はあっという間に囲まれてる、話しかけてくれるのは僕より一回り背の高い男の子だ、栗色の髪で優しそうな顔をしている。
「俺はロロナ・クルー・アリス、よろしくな。」
「うん、よろしく。アリス・ハイズ・アリスです。」
差し出された手を握って挨拶する。
分かっていたけど、みんな名前の最後にアリスって付くのは変な感じがする。
「ん・・・んん。」
「どうしたの?」
ロロナが困った様に目をそらす。
「いや、どうもしないけどさ。やっぱりくるなーって。」
「来るって何が?」
「ふん、バカみたい。ただ見た目が似ているだけでしょう。あんな弱い力で龍使徒だなんて。」
強い言葉に僕は口を閉じる。
それは紺色の髪を一つに束ねた女の子だった。
僕より背の高いその子の目から逃げない様にちゃんと見る。
「ごめん。ズルいっていうのは自分でも分かっているから。」
「そんな事言ってないでしょ!!」
「!?」
近くで大きな声を出されて驚いてしまう。
「カナデ、吠えるのはいいけど、顔赤いぞ。」
「バカなこと言わないで! あなたこそ、顔赤くしてたくせに!」
ロロナと言い合う女の子は口を尖らせて本当に顔を赤くすると教室を出ていった。
「・・・あっ。」
「気にしなくてもいいぞ、アリス。あいつも本気じゃないから、ああ、あいつはカナデ・アイリ・アリス。」
「・・・でも、本当の事だよ。」
それに覚悟してた事だ。
「別に気にしなくていいと思うぞ。ほら、あそこがお前の席な。教科書は机に入ってる。」
横に4つずつ並ぶ机が3列で12人分、僕は窓際の後ろか。
早速座ってみると隣にロロナが座った。
「隣は俺な、分かんない事があれば教えてやるから聞けよ。」
「うん、ありがと。ロロナ。」
「お、おう。」
それからみんな順番に話に来てくれて挨拶出来た。
みんな笑顔で話してくれて安心する。
「あんまりみんな僕の事気にしてない?」
「いや、どう見たって気にしてるだろ。」
僕の疑問にロロナが優しく笑って返してくれる。
「そうじゃなくて。」
もっと嫌われるのかと思っていた。
「そういう事か、むしろラッキーだったと思ってるぜ。なんて言ったって炎龍イシュタリフが認めるくらいのそっくりさんなんだからな。」
「あのさ、僕ってそんなに似てる?」
正直金髪と目の色位な気がするんだけど。
「は? 自分では分からんくても今までも散々言われてただろ?」
「んー? 似てるって言われる事はあったけどそこまでじゃなかったよ。」
「ふん、田舎から出てきたからでしょ。ここみたいな大きな街じゃないと英雄像がないから正確な龍帝アリスの容姿なんて分からないのよ。」
不機嫌そうな顔でそう言ったのはカナデさんで、僕の前の席に座る。
「お前、もう戻って来たのかよ。」
「当たり前よ、授業が始まるじゃないの。」
「あの、アリス・ハイズ・アリスです。よろしくお願いします、足を引っ張らない様に頑張りますから。」
「ふん。カナデ・アイリ・アリスよ。そうしてちょうだい。・・・何かあれば聞いてくれていいから。」
「なあ、お前また顔赤いけど、それがツンデレってやつなの?」
「うるさいわね! そんな訳ないでしょ!」
口を尖らせてカナデさんは前を向いてしまうから僕はその背中にお礼を言った。
「ふん。」
「本当素直じゃないやつ。」
龍使徒の座学は神子の人が教師役をしてくれるらしい。
教わるのは一般教養、魔物学、龍と龍使徒について、歴史と多岐に亘るが座学はこの一年で終わって来年からは実技中心になるそうだ。
午前の座学を終えて食堂でご飯を食べながらロロナが教えてくれる。
同じテーブルには何故かカナデさんもいる。
午後からは実技だって。
「実技は神子の学生も合流するんだぜ。かわいい子も多いからな。」
「ふん、男って最低!」
うわーカナデさんの眉間に凄い皺が、普通にしてれば凄い綺麗な子なのに。
・・・エトも来るのかな?
「うるせーな、あの中に将来のパートナーがいると思えば気になるのは仕方ないだろ。」
「ふん。」
パートナー、僕はエトと一緒に・・・なれるのかな?
差は大きくて・・・。
違う、なるんだろ、その為に龍使徒になったんだ。
「エト・クラナ・ドール、あの子も来るのかしら。」
「ああ! あの子か、凄かったよな! そんですげー可愛かったぜ!」
カナデさんが口にしたエトの名前に僕は震えてしまった、二人が僕を見る。
「アリスは知り合いなのか?」
ロロナに対して僕は頷く。
「うん、幼馴染。ここにも一緒に来たんだ。」
「そう、凄い神子の力だったわね。」
思い出しているのかカナデさんがしみじみと言う。
やっぱり、そうだったんだ。
もしかしたら僕の身内びいきとかかもしれないって思ってたんだけどな。
「でも、本当に凄かったわ、13神徒のハク・トキ・ドール様が見ている前で神子の頂点になるなんて他の誰にも言えないわ!」
誰が話しているのかと思ったら僕の後ろに見知らぬ神子の女性がいた。
っていうか、色々知らない人に囲まれてる!
「そう! 新人が大きな口を叩いた筈なのに全然嫌とは思えなくて、むしろ痺れたわ! 何故か泣いてたもの私!」
今度は別の龍使徒の女性が言う、そっかみんなエトの話だから集まって来たんだ。
「甘いな! 俺なんて身体が痺れまくってちょっと漏らしちゃったぜ!」
「汚いわね! 何自慢げにしてるのよ! あっちに行きなさい!!」
あわわ、なんでエトでお漏らしした人がいるの!?
隅に追いやられていく龍使徒の人を目で追っていくと、何人か合流していく、えっ? おしっこ仲間!? 本当に? なんか女性も混じってるんだけど。
なんか凄い仲間意識が芽生えてる!?
「ふん、見た目だけのあなたじゃとても釣り合わない幼馴染ね。」
カナデさんの言葉に空気が止まる。
分かってる、そんなの分かってるんだよ。
僕がカナデさんを見ると目が合う。
ポンって音が聞こえるみたいにカナデさんの顔が赤くなった。
「えっ?」
「ちが! そういう意味じゃないから!」
「ええっ!?」
ガタっと立ち上がるカナデさんは顔を隠して走って行った。
えっと、僕じゃエトには釣り合わないんだよね?
他にどんな意味があるの?
「くはは。」
僕が固まっていると横でロロナが笑った。
ロロナだけじゃなくて後ろでも何人かが笑う、バカにした笑いじゃなくて微笑ましいものを見た様に。
「?」
「あいつは意地張ってるだけで、別にアリスが嫌いな訳じゃないんだよ。だから、あんまり気にしないでやってくれよ。」
「う、うん。」
カナデさんの言った事は僕には正しく思えるから気にするも何もないんだけど。




