後日談
元救世主っちは、精霊魔法が元の世界でも使えるようになった……りはしなかった。
ただ、息子くんの嫌いなプールの授業がある日の雨率が上がったり、親子で船釣りに行く時にちょっと曇りでちょっと風がある絶好の釣り日和になる確率が異常にあがったり、不自然なほど魚が食いつくようになったりはした。
異世界の方はどうなったかというと、王国は精霊魔法で精霊を使役して農業などに活用していたのだが、そのインフラは全て使えなくなったのみならず、精霊力が弱い不毛の荒野に王国全土がなった。
野良精霊にしてみれば、ここにいるととっつかまって奴隷になる、と覚えてしまったのである。精霊魔法使いの存在に敏感になり、精霊魔法使いのいるところは、土地は痩せ海は荒れと住むには厳しいところとなった。
この事態は救世主っちが予見して他三国には伝達済みであるため、他三国は自国と王国の国境線を封鎖し、王国民、すなわち精霊魔法使いが自国領に入らないようにして自国の大地を守った。
その後、放置しておけばそのうち王国民は全滅するから、と何もしない方針と、積極的に皆殺しにして旧王国領に精霊を呼び戻し自国に編入しようと考える方針とが生まれたが、結局放置する派が優勢となり、王国民は介錯される機会もなく最後まで苦しんで滅んでいった。
一部の王国民は荒れた海を超えてとある島に辿り着き、そこでも荒れた土地で長らく生きた、という御伽噺が生まれた。
後世、王国民と思しき遺跡がとある島から発見されたときは、御伽噺は真実であったかと話題になったが、それだけであった。
この世界から精霊魔法使いは完全に消えた。
歴代の救世主っちたち。
例外なく王国に懐柔され、手先になり、接待攻勢で良い目にもあいながら、役目が終わったら速攻さり気なく暗殺されていた。力も弱かったので、帰還方法に気がついたものはいなかった。
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