もれなくついて来る
人里に降りてから一週間、結局俺たちは勇者パーティーと共にずるずるとこの町に留まっていた。
理由は二つ。
一つはただ単にお金が無かったから。
もう一つは情報が余りに足りなかったから。
俺としては直ぐにでも魔族を捜しに行きたかったのだが流石に何の情報もなく闇雲に突っ走っても駄目だということでこの町で目星をつけておくことになった。
一週間の情報収集の結果はこんなものだ。
この町はホチュアというらしい。
名前の由来は単純。
ホチュア(巨大ミカン)の栽培が盛んだからだ。
地方にしては発展している町で森林開拓の拠点になっているとか。
で、その開拓を押し進めている、この国はネスモイ王国といってアグネス大陸の三分の一程を占めている大国で教会の本拠地。
とんでもないところに来てしまった。
「ご主人様、今日はホチュア貰ったんだよ」
まあ、町の人たちは良くしてくれるのだが。
依頼をする度に知り合いが増えていく。
今は同じ“兎と子猫”に泊まっているものの別々の依頼をしているので夕方、勇者たちに聞かれないように部屋の中でモリオンと情報交換が日課になっている。
未だに魔族の話は一つも聞いてないが。
「食べよ?」
にこにことしながらモリオンが差し出すのは巨大ミカン。
それ、お前が卵だった時のサイズな。
ひょいっと受け取ると部屋に備え付けのテーブルにそっと置く。
一日目、乱雑に置いてテーブルを壊したのは記憶に新しい。
見た目の割にそこまで重くないとは思っていたのだが単に魔族と竜の怪力で軽く感じていただけだった。ショック。
「今日は魔族の手がかり、少しだけ聞けたよ。教会の偉い奴が西の火山の近くに怪しい影ありっていう占い結果を出したとか」
初めてそれっぽい情報が手に入った。
火山よりも西には首都がある。
万一勇者たちがついてきても誤魔化せるだろう。
だから、
「…ご主人様、そろそろさ、町を出ない?」
ホチュアを切りながら言ったモリオンの言葉に一も二もなく頷いた。
***
「そっか、二人はそろそろ首都に行くのね」
「はい。今までありがとうございました」
「待ちなさい。あたし達も行くわ」
「首都は教会の偉い人がた…」
「見つからなきゃいいのよ」
「でも、色々あるん…」
「変装とかするわ」
「いや、でも」
「行•く•わ」
「はい」
声をかけろと脅されていたから勇者に話かけたらこうなった。
断る隙なんて存在しない。
なんかもう、確定事項だったんだなと諦めるしか無いようだ。
魔族救出の難易度が上がる。
「…ご主人様、流されやすいの?」
否定出来ない。
***
“兎と子猫”の食堂は狭い。
とはいえ都会のファーストフード店に比べればよっぽど広いが、四つしかないテーブル席を占領して話をするのはかなり邪魔だろうということで遅い時間に集まった。
俺たちと勇者パーティーは出発を決意してから僅か一日で準備が整えた。
元々着の身着のままでアグネス大陸に放り出されたので荷物がほとんど無かったから俺たちの準備はさっさと終わった。
食料もモリオンが集めてくれた。
依頼で手に入れた人望のお陰だろう。
なのに、それより早く勇者たちの準備が終わっていたのは何故だ?
「あたし達もOKだから明日には出発出来るわ」
ついて来るな。
とか言ったら三途の川に観光に逝くことになりそうだ。
この世界の重要人物はみんなこんなに理不尽なのだろうか。
神がアレじゃ、勇者もこれで仕方ない…のか?
「それじゃひとまずお休み。カトレヤちゃんとモリオンくん」
置き土産に精神的ダメージを残して勇者たちは部屋に戻っていった。
「…やっぱり、迷惑ですか?」
と思ったら禿頭の大男、カルロスは残っていた。
「…そりゃ、ね」
パーティーメンバーはいつもあの勇者に振り回されていて嫌にならないんだろうか。
ハリスに至っては暴力も振るわれてるし。
「何というか、すみません。悪い子では無いんですが…」
カルロスが弁解する。
何であんなのを庇うんだろう。
勇者だから?
何か違う気がする。
惚れてるから?
それも何か違う気がする。
うーむ…
「それじゃあ、また明日」
謎の人望か。
「…ご主人様、ぼくたちも部屋に戻ろ?」
そういやモリオンも謎の人望があるよな。
町の人たちもそうだし、地底人たちにもすぐ気に入られた。
ひとの心を掴むというのは一体…
「モリオン、心って何だと思う?」
「ご主人様、休んだ方がいいよ」
悪かったな。
またもや更新が次の日に…
あと少しで学校が始まります。
忙しくなりそうなので更に更新が…
頑張ります。
次回予告
噂をすれば影、自称神様の夢をみる




