エレナはやっぱり子供
服を着替えて(やっぱりゴスロリ)モリオンと話す。
「…で、試験ってなんの?」
「えーと、確か、魔王として生きて、仕事をしていいか、だった筈だよ」
結婚して二百年も経つのに上の兄弟がいない理由がわかった気がする。恐ろしい。
いや、でもさすがに…あり得るのか?
「モリオンさん、魔王の仕事とは何ですか?」
「多分、地底人の村の食料問題が一番最初なんじゃないかな?」
アンはイヤリングに戻ることは出来るらしいのだが今は人型でいる。
「分かりました」
美人が部屋に増えたのは嬉しい。
いや、人じゃないけど。
そういえばアンは“神器”だけど、
「アンは食べ物いるの?」
「いりません」
あ、やっぱりいらないんだ。
物だしね。
「ぼくも質問いい?」
「はい」
やっぱり知らないことは聞いてみたい。
質問攻めにしてやる。
「“神器”は全部で三つだよね、残り二つもアンみたいに自我、あるの?」
「分かりません」
とはいえ、アン自身も分からないことは知りようがな…あ、今度自称神様に遭ったら聞いてみよう。
「…カトレヤ様、お食事の……あら」
と思ったところでエレナが入ってきた。
そういえばアンのこと話してなかった。
「カトレヤ様も女のひとがお好きで…」
「……違うからな?」
***
「…なるほど。赤いグラマラスな服を身にまとった女のひとがカトレヤ様にかなり近いところで座っていたものでつい、そういった趣味に目覚めてしまわれたのかと思いました」
あ、うん。そだね。
「マスター、そういった趣味とは何ですか?」
「…知らなくて良いから」
「…そう、ですか」
残念そうに言うなよ。
ぐだぐだ騒ぎながら皆で食堂に向かう。
「そういえばカトレヤ様、試験合格したそうですね、おめでとうございます」
「ありがとう、エレナ」
「ね、ご主人様は明日から魔王として仕事をするんだって、働くってどんな感じなの?」
そういえばエレナは色々アレな所があるものの社会人だ。参考までに聞いておきたい。
「そうですね……でも私の仕事と魔王様の仕事は全然違いますよ。あ、ですが自分のやったことの責任は問われますよ?」
それは知っている。
醤油とソース、間違えた責任とかね。
「特に魔王様は魔族を統べるお方、責任はとてつもなく大きいです」
そうだな。
一つの決断が沢山の命を左右してしまう。
「だからといって誰もやらない訳にはいきませんからね。全部、そうですよ?」
いつもどうしようもない失敗ばかりしているエレナがやっぱり大人なんだなぁと思った。
いや、精神年齢なら俺も十分大人なのだが。
「まぁ、難しいことはさておき、今日のメニューは……あ、これ美味しいんですよ!」
あんまり大人じゃないかも。
給食がカレーで嬉しかった小学生に見える。
そろそろ幼女時代を終わらせます。
まだ仕事させたりはしますが。
次回予告
初めてのお仕事