恋人探し
「…という訳で魔王様とアイリス様には手を焼いているんです」
翌日、エレナに愚痴られた。
何やら疲れているようだったのでどうしたのか聞いたら一時間くらい如何に魔王夫妻が困ったさんなのか力説されてさっさと逃げ出したモリオンを少し恨みつつ、話を何となく理解するとさすがに可哀想かなぁとも思わなくもない今日この頃。
一息で言えない人は肺活量を鍛えよう。
「最近、そう、天人族の方がいらっしゃった辺りからさらにラブラブ度が増した気がしますし…」
あ、俺の作戦とかがエレナを苦労させた感じ?
…自分の不幸を予感して無意識に邪魔するとか、エレナならあるかもしれない。
転んだのも、ソースと醤油間違えたのも。
恐るべし、エレナ。
「私も誰かとラブラブしたいんです!」
エレナに嫌われると寿命が縮みそうだ。
ひとつ、協力しておこう。
怖いから。
「エレナの好みのひとってどんな?」
といったってエレナより知り合い少ないけど。……アンディ辺りと並べたら?
相乗効果でさらにヤバくなりそうだからやめよう。
「そうですね…強さと愛嬌を兼ね備えていて…」
モリオンよ、よもやエレナに助言してもらったのではあるまいな?
「でも、とっても心が綺麗なひとがいいです」
心が綺麗とか言われても……
「あと艶々な髪の毛のひと」
髪の毛フェチらしい。
「カトレヤ様みたいに」
背筋が凍りついたのは何故だろう。
「誰か思いつきますか?」
……ラドルフ?
強いし、からかうと面白いし。
なんだかんだ言って手伝ってくれるし。
「うん」
「え!? 誰ですか?」
ラドルフの冥福を祈ろう。
***
「今、なんか寒気が……」
「風邪でも引いたんですか、団長?」
休憩中のラドルフとラルクだ。
「嫌な予感がする」
「ふ、不吉なこと言わないでくださいよ」
ラルクは思いっきり怯えている。
大丈夫か? 魔王専属騎士団?
***
「…というひとがいるの、会ってみない?」
「強い剣士で、面白くって、なんだかんだで手伝ってくれる面倒見のいいひと、ですか」
「そうそう」
一度言っただけで全部暗記しやがった。
好きなことは嫌いなことの十倍覚えられる理論だな。多分。
「髪の毛は?」
「艶々?」
まあ、これでいい。
「会いたいです、庭ですね?」
確認すると直ぐに飛び出していった。
ガンバ、ラドルフお兄さん。
***
追い付いたら三竦み状態だった。
エレナが値踏みするようにラドルフを見つめ、ラドルフは唖然としてラルクを見つめ、何故か顔が赤らんだラルクはエレナを見つめている。
「エレナは蛇で、ラドルフが蛙、ラルクはナメクジのお面をつけて貰おう」
思わず呟いてしまった。
「あ、カトレヤ様、このひとがそうなんですか?」
その声に気づいてエレナが質問する。
「あ、あの、このお嬢さんは?」
ラルクも質問。
「何がどうなってこうなった?」
ラドルフも。
「えーと、エレナは恋人がほしいんだって」
三人の目線に俺が何とかそれだけ言うとラドルフとラルクはエレナをじっと観察する。
「まぁ、顔は悪くないよな」
「その、可愛らしい方ですね」
ラドルフはまあまあ。
ラルクは相当気に入ったようだ。
「あの、カトレヤ様」
この際どっちでもいい。
「何で、男なんですか?」
へ?
「その、何で女の子じゃないんですか?」
性同一性障害(lesbian)……てこと?
「艶々な髪の毛の女の子がいいんです!」
………最初から言え。
「ぇ、そ、そんなぁ~」
本当に哀れなのはラルクだった。
“心が綺麗なひと”の所で“心が綺麗なひも”って打ちそうになりました。
もういっそ、ひもでいいかなとか思っちゃいました。
次回予告
そろそろ洞窟探検させる




