訓練奮闘記
ラドルフの強さは高度な魔法と剣の混合戦法にある。鍔迫り合いの最中であろうとも呪文を唱え、容赦なく相手を追い詰める。
今がそうだ。
“影爪”は闇色の狼の爪で発動させると俺の両腕にまとわりついている巨大な爪、という形になる。
かなりの硬度があり、ラドルフとの鍔迫り合いでもヒビ一つ入らない。
え? 大の男と鍔迫り合いって俺が怪力過ぎる? 仮にも魔王種なんだからいいだろ?
と、そこでラドルフは唱え終わった“火球”を放つ。
俺は咄嗟に“影爪”で迎撃する。
ついでにもう片方の“影爪”で反撃。
しかし落ち葉のようにひらりとかわされ、ラドルフの剣が眼前に迫る。
寸止め。
あ、また負けたな。
「駄目だ、お前は魔法が戦闘の中心だろ?
近寄られた時点でアウト」
分かってはいても体が追いつかない。
始まって直ぐに距離を詰められたら対処できない。斬られてもある程度再生することは分かっていたがばっさりやられたら終わる。
「それと、“影爪”はお前が動かないと何もできない。お前みたいのじゃ、体勢が崩れて狙い放題になるぞ」
じ、自覚はありました。
「次、モリオン」
先は長そうだ。
何せ、これはまだ地上戦。
羽が有る以上空中戦もやらなければ。
ちなみにモリオンは空中戦も出来る。
もっとも、前世の記憶では竜として戦闘していることが多かったらしく、“人化”状態ではまだまだラドルフに負けてしまう。
そろそろ勝ちそうだったが。
***
「カトレヤたち、頑張っているわね」
「そうだな。あの年であれだけ出来るのは凄いことだ」
魔王夫妻は優雅にお茶を楽しみながら、娘の奮闘する姿を眺めている。
テーブルには湯気をたてる魔香茶と山積みの羊皮紙。仕事中だった。
「まだ、尻尾で迎撃することは出来ないみたいね」
「便利なのだがな」
尻尾は鞭でもあり、槍でもあり、盾だ。
自在に操れれば後ろからの攻撃は殆ど受け流せる。
「その内、羽を使っての迎撃も出来るようになってほしいわ」
羽も飛ぶだけが使い道ではない。
迎撃は勿論、攻撃に使う者も少なくない。
強すぎる相手に逃げるときは蜥蜴の尻尾切りのようにわざと羽で攻撃を受ける事だって出来る。腕や足と違い、簡単に生えるし。
「魔法も、基本が出来ていれば問題ないわ。いっそ闇属性だけ極めればいいのに」
「ああ、便利な火属性の魔法も覚えてもらいたいがな」
基礎的な魔法が使えれば後は得意分野を伸ばすだけだ。
カトレヤはアンディに基礎的な魔法は使えるようにたたき込まれたので得意な火と闇を伸ばすべきだ。
「……仕事さえなければ」
「言うな」
物凄く口を出したくなったアイリスにつられない内にさっさと黙らせる魔王。
口をとがらせて文句を言うアイリス。
それを見て少し頬を染める魔王。
二人の距離はだんだん近づいて、重なった…訳ではなかった。
「仕事してください」
お茶のおかわりを持ってきたエレナがムスッとした顔で注意したからだ。
魔王夫妻は大人しく従う。
数日間頼み込んで、やっとテラス(あのお茶会もここでした)で仕事を二人でしてもいいという許可がでたのだ。
また別々の部屋での仕事なんて嫌だ。
「はぁ…何気にちゃんと終わらせてるから文句言えません……」
彼氏いない歴=年齢のエレナは毎回、同じ様なシーンに出くわすのでたまったものではない。
***
「うぅ、疲れたぁ……」
「ご主人様、まだ夕ご飯、食べてないんだから寝ないでよ?」
俺と全く同じ訓練をしているにも関わらず、さして疲れた様子のないモリオンを尊敬する。さすがドラゴン。
「カトレヤ様、夕食の用意が…うわぁっ!?」
外で雑音が聞こえた気がする。
眠い。寝よう。
「ご主人様まだ寝ないでよ? エレナ、大丈夫?」
眠い……
「怪我はないみたいだよ、ご主人様…って寝てる!」
「お、起きてください、カトレヤ様」
「ぅ~」
騒がしくて目が覚めた。
モリオンが大きなため息をついた。
「夕ご飯、食べにいこ?」
訓練後でも元気すぎるモリオンがやたら疲れているようだった。
何故だ?
今回は戦闘描写ありです。
今までは読むばかりで初めて書きました。
戦闘も戦闘描写も研究と練習あるのみですね。
次回予告
恋がしたいエレナを手伝います




