お茶会
謁見はほぼお茶会と変わらなかった。
「あ、このお茶、魔大陸で作られているお茶の中でも最高峰と名高い“魔香茶”ですね、美味しいです!」
実にフレンドリーだ。
「そうよ、収穫量が少ないからなかなか手には入らないの」
そして普通の謁見と違って家族全員で参加している。
天人族の次期当主、国賓だからな。
「ええ、聖大陸にもそういったお茶はありますよ、次に来る機会があったら持って行きますね」
そんなお方がこんな話をするために来たんじゃないだろう。
「そろそろ本題に入ってくれないか?」
魔王もいい加減、話を進めたいらしい。
「…はい。
僕が魔大陸に来た理由から話しましょう。
先日、天人族の当代当主、僕の父にあたりますルーカスが魔王様に提携の旨を伝えてこいと」
「提携だと?」
「はい。魔族が弱っている今の状況は天人族にも好ましくありません。富に飢えた人間は我々にとっても脅威です。魔族を蹂躙した人間の欲の矛先が天人族に向かないとも限りませんから」
生々しい。
天人族も魔族も生きるのに必死なのだ。
「それで、提携か」
「はい。天人族は表向き人間の教会に神聖視されている神の使いですが実際はあなた方とさして変わらない存在です」
人間は群れるとやたら強くなるからな。
「悪い話ではないはずです。勿論、目立つような、兵士を出すなどといった支援は出来ませんが資金面、供給面でのサポートはするつもりです」
矢面に立つのは魔族、裏で手伝うのが天人族。いい感じだ。
「……分かった。それはこちらとしても有り難い申し出だ。今後困ったことがあったら手伝って貰えると助かる」
魔族と天人族。
明らかに仲良くなれそうにない種族だがそうでもないようだ。
共通の敵というのもあるのだろうが。
「ありがとうございます、明日には当主に伝えに戻ります」
何にせよ、これは良かった。
「いつでも遊びに来なさいね」
友好的なのは何よりだ。
「はい。その時にはカトレヤ様と」
あ、遊ぶの俺なんだ。
そりゃそうか。
次回予告
未定←こら!