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迷宮建築士  作者: 冷やし中華はじめました


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8/15

革命の始まり

ロスが10層に休憩所を建設してから、わずか三日後——ギルドには驚くべき報告が相次いだ。


「10層の攻略成功率が倍以上に上がりました!」

「中ボス『岩砕きの巨像』を撃破したパーティが、過去最多を記録!」

「負傷者の搬送数が三分の一に減少!」


リリアが慌ただしく書類を整理しながら、報告を読み上げる。彼女の声には興奮が混じっていた。


「ロス、見てよこれ! あなたの休憩所のおかげで、10層の死亡率が激減してる!」


「そうか。それはよかった」


ロスはいつも通り、ツルハシの手入れをしながら、淡々と答えた。彼にとっては、それは当然の結果だった。安全に休める場所があれば、冒険者は体力を回復でき、判断力も保てる。それだけで成功率は上がる。当たり前のことだ。


「当たり前じゃないよ! ギルドの統計によると、これまで10層で最も多くの冒険者が命を落としていたんだ。それが、たった一つの施設でここまで変わるなんて!」


リリアは興奮してまくし立てる。彼女の声に釣られて、周囲の冒険者たちも集まってきた。


「おいおい、本当か? 10層の休憩所って、あの石の箱のことか?」

「あれがそんなにすごいのか? 俺も使ってみようかな」

「ただし会員制らしいぞ。ロスさんが管理してるって話だ」


冒険者たちの間で、ロスの休憩所は瞬く間に話題となった。実際に利用した者たちの証言は、さらにその評判を後押しした。


「あそこで一晩寝たら、体力が全回復したよ!」

「水が綺麗で、飲みやすいんだ。ダンジョンの水はたいてい濁ってるのに」

「魔物の気配が一切しない。まるで聖域だよ」


これらの証言は口コミで広がり、やがてギルド全体の話題となった。ギルドマスターのドレイクも、その報告に驚きを隠せなかった。


「……たった数日で、ここまでの成果を出すとは。ロス、お前の価値は、俺が思っていた以上だ」


ドレイクはロスを呼び出し、そう告げた。彼の顔には、珍しく笑みが浮かんでいる。


「評価に感謝します。ただ、まだ始まったばかりです。10層だけでなく、他の層にも同じような施設を作るべきだと思います」


「それは俺も考えている。だが、その前に一つ聞きたい。お前は、この休憩所をどうやって運営するつもりだ?」


「会員制にします。利用料を取って、その収益で施設の維持と拡張を行う。貧しい冒険者には無料枠も設ける予定です」


ドレイクは感心したように頷いた。


「……ビジネスとしても成立させるつもりか。ただの職人ではないな」

「職人だからこそ、作品を持続させる方法を考えないといけません。作って終わりじゃ、意味がない」


ドレイクは大きく息を吐き、そして言った。


「よし、好きにやれ。ただし、ギルドとしても協力する。何かあれば、いつでも言え」


ロスは軽く頭を下げ、部屋を出た。彼の頭の中では、すでに次の計画が動き始めている。


その日の夕方、ロスは再び10層へ向かっていた。休憩所の様子を確認するためだ。中に入ると、そこには数人の冒険者が寝ていた。彼らは深い眠りについており、安堵の表情を浮かべている。


「……よく眠れてるな」


ロスは小声で呟き、彼らを起こさないように静かに退室した。外に出ると、ちょうどカイルたち新人パーティがやってきた。彼らは10層の攻略に挑むつもりらしい。


「ロスさん! あの休憩所、すごいですね!」

「俺たちも使わせてもらいました。一晩で疲れが取れて、今日は万全の状態で挑めます!」


カイルは目を輝かせて言った。彼の後ろの仲間たちも、同じように興奮している。


「それはよかった。だが、無理はするなよ。中ボスは強いからな」

「はい! でも、こういう場所があるってわかってるだけで、心の余裕が違います!」


ロスは彼らの背中を見送りながら、ふと何かを思いついた。10層だけでなく、もっと深い層——例えば20層や30層にも、同じような施設を作れば、もっと多くの冒険者が助かるかもしれない。


「……よし、次は20層だ」


彼はその場で決意し、すぐに地上へ戻って準備を始めた。

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