第二章幕間『帰還④』
「なんだが今日のリンさん嬉しそう…」
朝の光が窓に注がれる中、リンとその友人であるノアは朝の定例集会に向かうために会議室へ向かっていた。
ふと話題が尽きたとき、ノアは今日のリンはいつもと違うと、そう言った。
「そう…? やっぱりユダが遠征から無事に帰ってきたからかな?」
リンは屈託のない笑顔を見せて、ノアに答える。
ノアは合点がいったように呟く。
「やっぱりユダさんって人がリンさんの彼氏なんだ……」
「え…? ……いやいや、そんなこと絶対ない!!」
ノアの突拍子もない発言にリンは必死に首を振って否定する。
「うぅ…あたいが悪かったから怒らないで…」
元々おっとりとしていて気が弱いノアは、リンが少し声を荒らげたように見えただけで、すぐに廊下の隅で縮こまってしまう。
その様子はさながら、叱られた小動物のようだった。
「も、もう! 怒ってないってば。ほら、顔を上げて?」
リンは慌ててノアの前にしゃがみ込み、困ったように苦笑いを浮かべた。少しからかわれたくらいで本気で怒るはずもないのだが、ノアのこの極端な気弱さにはいつも調子を狂わされてしまう。
「本当に? 嫌われちゃったかと思った……」
おずおずと顔を上げたノアの潤んだ瞳を見て、リンは優しくその肩をポンと叩いた。
「嫌うわけないでしょ。ノアは私の大切な友達なんだから。それに、ユダのことは……その、本当にただの仲間だから、変に勘違いさせちゃったら悪いなと思って、ちょっと焦っただけだよ」
「そっか……よかった。あたい、リンさんに嫌われたら生きていけないよぅ」
ふにゃりと安堵の笑みを浮かべるノアを見て、リンは「大げさなんだから」と呆れつつも、愛おしそうに目を細めた。
「さ、仲直りしたところで早く行こ? 隊長が待ってる会議室に遅刻したら、それこそ本当に怖い目に遭うんだから」
「うわぁ、あたいもうアリサ隊長に怒られたくないよ〜!!」
ノアは慌てて立ち上がると、今度はリンの手を引くような勢いで歩き出した。さっきまでの縮こまっていた姿が嘘のような変わりっぷりに、リンは小さく吹き出しながら、その後に続いた。




