EP575:伊予の物語「庚申の色夜(こうしんのいろよ)」 その8~伊予、謎解き怪談を聞く~
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これは、私が大学寮の同級生・穂経斗から聞いた話です。
彼の兄は有名な貴族なんですが、名前は伏せさせていただきます。
一月のある日、彼の兄を伊呂波さんとしますが、その伊呂波さんの屋敷の主殿の南廊下で、ビリビリに破られた緋袴が置いてあるのを朝、通りかかった侍女が発見しました。
前日、その主殿の南廊下を通ったときは何もなかったそうです。
その夜は主である伊呂波さんは別の女子の屋敷で過ごし、主殿には誰もいないはずだったので、夜中に何者かが破いた緋袴をそこへ置いたという結論になりました。
これだけなら破れた袴を繕おうとして持ち歩いていて、落としたのかな?ぐらいで済ますことができたんですが。
ちょうどその日に同級生の穂経斗が兄の屋敷を訪れ、侍女から破れた緋袴の話を聞き、持ち主を探そうと屋敷をうろついていると、東の対の東廊下で主が大切にしてた唐渡の青磁が粉々に砕かれた状態で見つかりました。
いつから青磁が置かれていたのかを雑色にたずねても、わからないとのことでした。
さらに西の対の西廊下では小袖が引き裂かれた状態で見つかりました。
さらに調べると北の対の北廊下では伊呂波さんの妻である北の方の櫛が歯を折られた状態で見つかりました。
黒漆塗りに金箔で文様を施した高級なものだったそうです。
穂経斗は北の方にその櫛をいつ失くしたのかをたずねると、わからないと答えたそうです。
緋袴や小袖を持って誰のものかを屋敷中たずね歩いても持ち主は現れませんでした。
穂経斗はここである共通点に気付きました。
それらの物は屋敷の東西南北の端にあたる廊下に置かれていたのです。
東西南北に置かれたことに何かの意味があると考えた穂経斗は
「さらに以前に、何か置かれてなかったか?」
の聞き込みを始めました。
ある侍女は
「そういえば・・・・二か月ほど前?でしたかしら?
東の廊下に生卵が割れて落ちてました。
誰かが膳を運ぶ途中に落としたのかと考えて掃除しましたけど、よく考えればあの廊下を通って膳を運ぶことはありませんわ!」
ある雑色は
「変なものが廊下に置かれてなかったか?
ええ、ありましたよ。
二か月ぐらい前だと思いますがね、朝、庭の手入れをしてたらね、主殿のねぇ、南廊下の階段を上がった、ちょうど目立つところにねぇ、誰の嫌がらせか知らねぇですが、ミミズがいっぱい絡まって糸玉みたいになったのがね、置かれてまして、鼠か鳥が咥えてきて落としたか、ミミズが勝手に階段を登ったんだと思って土に捨てておきました。」
その雑色はさらに
「あっ!あれも同じ日ですかね!
西の対の西側の廊下にね、蜥蜴がばらばらに引きちぎられてまかれてました。
あれも鼬かなんかの獣の仕業かね?
北の対の廊下ですか?
そりゃ知りませんな。
奥様の侍女に聞いてみるといいですよ。」
北の方の侍女に話を聞くと
「え?二か月前ですか?
変なものが北の対の北側廊下にあったか?ですか?
そうですわね・・・・二か月前?っていうと、庚申の日が明けた日ですか?
昨日も庚申でしたものね?
ですから今も眠くってっ!
侍所で私たち使用人は集まってお菓子やお酒を食べながらおしゃべりして徹夜してもいいことになっていましてね。
眠ったのは夜が明けてからでした!
ええっと、何の話でしたっけ?
二か月前の庚申の翌日?
そうそう!
その日は、朝、掃除をしてると、生臭い小魚が数匹バラまかれてました。
猫か鼬がくわえて運んできたんだろうと思ってすぐに庭に捨てました。
変なものってそれぐらいですわね!
え?さらに二か月前?というと九月ごろですか?
そのころには、あっ!そうですわ!思い出しました!
青菜が廊下にばらまかれてたんです!
全く誰の仕業でしょうっ!
わざわざ食材?を厨から盗んで廊下にばらまくなんてっ!
嫌がらせにしても悪質ですっ!
意味も分からないしっ!」
穂経斗がさっきの雑色に九月に廊下に置かれたものがあったかをたずねると
「九月の庚申の翌朝ですか?
あっそういうことですかっ!
変なものを置かれたのは今日も十一月も庚申の日の翌日でしたね!
いや~~~昨日もそうですが、守庚申の集まりは楽しいですね!
飲んで食って徹夜して、夜通し宴会なんてね!
殿はいつも他所の女子のところでお過ごしですが、北の方は若君姫君と徹夜してらっしゃるようですしね。
質問は何でしたっけ?
ああ、そうそう!
九月の庚申の翌日ですね、ええ~~~っと・・・・は覚えていませんね。
いや、まてよ・・・・なぜか南廊下に皿が置いてあって中に黒い種?のようなものがありましたね。
太郎さまのおやつか何かだと思ってましたが、何の種でしょうな?」
言い忘れてましたが、伊呂波さんには太郎君と一の姫がいます。
穂経斗は九月の庚申の翌日に、西側廊下と東側廊下に置かれてた物についても、聞きこみしましたが、誰も覚えてませんでした。
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元佐さんはここで話すのをやめ、みんなの顔を見渡し
「では、誰が、何のために、あんなものを廊下に置いたのか、わかる人はいますか?」
う~~~ん、と考えてみる。
まず、守庚申の翌日に、東西南北の端に変なものを置かれた、のね?
整理すると
一月(穂経斗が訪問)、十一月(二か月前)、九月(四か月前)
東:青磁、 生卵、 ?
西:小袖、 蜥蜴、 ?
南:緋袴、 蚯蚓、 皿の中に黒い種
北:櫛、 小魚、 青菜
どれも引き裂かれたり、粉々だったり、バラバラにされたり壊されたりしてるものが多い。
守庚申の集まりで使用人は侍所で宴会して過ごしてたので、内部の人間も外部の侵入者も、屋敷内を簡単に移動できたってことね?
アレ?
でも使用人は長屋で、家族は各々の対の屋で寝静まってる普段の日のほうが動きやすいか~~~!
そもそも・・・・・と考えて、ハイッ!と手を上げ
「普段使っていたのは北の対は奥様、主殿は伊呂波さん、若君と姫君はどこを使ってるの?」
(その9へつづく)




