EP563:伊予の物語「砂上の雲母(さじょうのきらら)」 その4~伊予、はしゃぐ演技が上達する~
気合を入れて、膳に並ぶ酒瓶をとりあげ、まずは『前歯二本』に向かって
「お酒をどうぞ!」
愛想を振りまきながら酒瓶を傾けると、『前歯二本』が杯を持ち上げ
「おうっ!ありがとっ!」
注いだ酒を美味しそうに飲み干した。
『スゴいっ!感心したっ!』という意味を込めた、いかにも!な作り笑い+声+表情で
「わぁっ!美味しそうに飲まれますねぇ!
お酒がお好きなんですかぁ?
皆さんで飲まれるんですかぁ?
庭の荷車にたくさん積んでありましたものね~~?」
『前歯二本』が表情を曇らせ、口をつぐんだ気配を察知し
ヤバッ!
詮索だと思われた?
と焦り、慌てて無邪気な女子を演じ
「私ぃ、ビックリしたんですぅ!
あんなにたくさんの食べ物ぉを~~見たのってぇ生まれて初めてなんですぅっ!!
ここへ来たとき、庭の荷車に米俵とか、干物とか、お酒の入った甕とかぁ、食べ物がたっっくさん積んであってぇ~~~!
いいな~~~!お腹いっぱい食べてもまだあるな~~~~!って羨ましくってぇ~~~~!」
竹丸を想像して、『心の底から憧れてる!』って感じで瞳を輝かせてジッと見つめると、『前歯二本』は警戒を緩め打ち解けた表情に戻り、笑顔で
「ハハハ!
細っこいのに、食いしん坊なんだな!
羨ましいだろう?!
これもぜんぶ兄貴のおかげなんだ!
うちの兄貴はいいシノギを見つけてくれて、オレたちを腹いっぱい食わせてくれる、立派な偉い人なんだ!!」
そうそうっ!!
その『シノギ』が何かを知りたいのっっ!!
次の言葉が漏れ出すのを期待してジッと見つめ続けてると、反対側の隣に座る『美男子もどき』が、
「おいっ岩木っ!
シノギの話を知らねえヤツにするんじゃねぇっ!
いつも兄貴が言ってるだろっ!
誰にも言うんじゃねぇって!
秘密がバレたらオレたちは食えなくなるってっ!!」
「あっそっかっ!やべぇっ!!」
『前歯二本』改め岩木が困ったように頭を掻いた。
ちっ!残念!
悔しがってると、臺与と話してる『兄貴』こと吾妻丈夫が
「おいっ!岩木、若間津、知ってるか?
この女子の話によるとな、都の生白い貴族の坊ちゃんたちは、薬がねぇとアソコが使い物にならねぇらしいぞっ!
お前らはどうだっ?!
別嬪を前にしても役立たずな腑抜け野郎がオレたちの仲間に一人でもいようものなら、いい笑い者で即追放だぜっ!なぁ?
ガハハハハハッッ!」
自分の話に自分で笑って、グビグビと杯を飲み干した。
手下の岩木と若間津(こと『美男子もどき』)は、愛想笑いで満面になり
「へへへへっ!ほんっとにそうですねぇ!」
「兄貴の言うとおりでさぁ!」
吾妻丈夫が呂律の怪しい上機嫌な声で臺与に
「なぁねぇちゃんっ!
薬といえばだなぁ、『雲母』はどうだい?
よく知らねぇけど精神安定剤になるんだろ?不眠にも効くんだろ?
要るかい?
要るなら安く譲ってやるよ!
なんたって大量に採れちまうからなぁ!」
臺与は子供っぽい可愛らしいしぐさで首を傾げ
「そうね。
『雲母』ってキラキラ光って綺麗なのよね?
塗料に混ぜて使ってもいいのよね?
じゃ欲しいわ!
薬は臺与には必要ないけれど、都には必要な貴族や妻たちがたくさんいるのよ!」
それを聞いた吾妻丈夫が臺与の肩に腕を回してグイッ!と引き寄せ、ヒソヒソと耳打ちし、臺与がクスクス笑ったあと
「やだぁーーー!」
と吾妻丈夫の胸を叩く、というイチャイチャを見せられた。
ハッ!と自分の仕事を思い出した私は、
『雲母が採れる』
という吾妻丈夫の言葉について考えてみる。
う~~~~ん。
ということは、吾妻丈夫の資金源は、もしかして・・・・アレ?
でもそれを確かめるには場所を聞きださなくては!!
というわけで、二人の若い『荒くれ者』に微笑みかけ、テンションの高いウキウキした声で
「ね!私たち三人で遊戯をしましょ?」
岩木が酔っぱらってきたのか顔全体を真っ赤にして目がすわった状態で
「よぉ~~~し!やるぞっ!!」
若間津はまだ酔いが回ってないのか膳の焼き魚をつまみながら
「いいけど、どんな遊び?」
私はキャピキャピを最大値に調節した高い声で
「こうやって手を叩いて、調子にのって、順番にお題の言葉を言ってくの!
例えば、お題は『知ってる国の名前』だとすると」
パンッパンッ!
と二回手を叩き
「山城国っ!」
パンッパンッ!
とまた二回手を叩き
「次の人が『伊予国っ』とか、答えるの!
答えられなくなった人が負け、で罰としてお酒を飲むのよっ!」
岩木と若間津は顔を見合わせ、若間津はウンと頷き、岩木が
「簡単だなっ!やってやるっ!」
よしっ!引っかかったっ!
ほくそ笑み、さらに声をキャピキャピさせて私が
「じゃ、私からねっ!お題は『知ってる川の名前』ね!行くわよっ!」
パンッパンッ!
手を叩き
「桂川っ!」
パンッパンッ!
手を叩くと、岩木が
「ええっと、鴨川っ!」
パンッパンッ!
若間津が
「あーーっ!阿武隈川っ!」
パンッパンッ!
私が
「宇治川」
パンッパンッ!
岩木が
「ええっ?あっ松川っ!
やべぇーー!」
パンッパンッ!
若間津が考え込みながら、黙り込んでブツブツと
「え~~~~っと、あ~~~~~、ん~~~~~!
思いつかねぇっ!!」
楽しくてたまらないっ!って感じで私が指さし
「あ~~~~っ!じゃあ若間津さんの負け!お酒を飲んでねっ!」
と言いながら杯にお酒を注ぐと、若間津がグイッ!と飲み干した。
パチパチパチパチ・・・・・
「スゴイスゴイ~~~~~!いい飲みっぷりっ!」
大げさに拍手して褒めたたえた。
岩木がのってきて、
「よぉ~~~し、じゃ次はオレからだっ!
お題は『知ってる魚の名前』いくぞ~~~~!」
・・・・・・
って感じでその『知ってるxx』を順番に言い合う遊戯は三人で大いに盛り上がった。
(その5へつづく)




