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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の物語(恋愛・ミステリー)

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550/614

EP550:伊予の物語「黒鉄の拘泥(くろがねのこうでい)」 その8~伊予、すぐバレる嘘にあきれる~

は??


やっぱりそうなの???!!!


がっくり落ち込んだ。


ウソだったんだ・・・・。


臺与(とよ)を抱いてない、なんて、嘘!


影男(かげお)さんの言うように、男なんてみんな性欲にすぐ負けるんだ!


(へこ)みきったし、真実も明らかになったので、臺与(とよ)(へや)から立ち去ろうと、モタモタと立ち上がる。


ちょうどそのとき、宣耀殿(せんようでん)の妻戸の方から低い、硬い、男性の声で


臺与(とよ)どのに取り次いでもらいたい。」


ドキッ!


と心が震えた。


臺与(とよ)もビックリしたように眉を上げ、蒼白になってる私を見てニヤニヤして


「あら噂をすれば影ね?今行きますわ~~~!」


区切る几帳をずらして(へや)を出ると妻戸へ近づく。


私は焦って、南の母屋側の金ぴか鶴模様の屏風をずらし宣耀殿(せんようでん)の母屋に移動し待機するハメになった。


でもこれは絶好の機会っ!!


時平さまと臺与(とよ)の行動を盗み見るチャンスは二度とない!


ドキドキと鼓動が速く打ち、息が苦しくなった。


ふぅ~~~~と細く息を吐いて落ち着く。


屏風をずらして、わずかな隙間を作り、盗み見できるようにした。


サヤサヤという二人分の衣擦(きぬず)れの音のあと、時平さまの声で


「三日後の参議たちとの会合の件だが、藤原有実(ふじわらのありさね)殿は三国志の特に曹操を好むそうだから、『求賢令(きゅうけんれい)唯才是挙(ゆいざいぜきょ)』あたりを抑えればいいだろう。

あと、源号(みなもとのごう)には足を使う仕事を与えてやれ。

何か調査すべき問題はあるか?」


声は聞こえるけど、見えるのは臺与(とよ)(ひとえ)の後ろ姿とその向こうに重なった時平さまの直衣(のうし)の膝ぐらい。


臺与(とよ)が考える間があり、鈴の音のような高い弾んだ声(私の時とは大違いの!)で、


「市でいかがわしい取引が行われてるそうですわ!

十歳前後の少女が、いかがわしい取引に関わっているそうです。」


時平さまの関心の薄い乾いた声で


「また小児性愛者が少女を買春してるのか?

検非違使(けびいし)に捕縛させよう。

場所は?」


臺与(とよ)が鼻から抜けたような声で


「いいえ!違うんです!

不浄の少女たちが、小屋で一日中過ごし、その小屋の家主の中年女がその月の(けが)れを集め、少女たちに銭や米を支払うそうです。」


恥ずかしそうに、ためらいがちに呟く。


でも、絶対、『猫かぶってる』わよね!


臺与(とよ)がそんなことで恥じらうとは思えない!


時平さまが考え込む間があり、こちらは平然と


「経血・・・・を?何に使う?

生薬か?」


臺与(とよ)がハッ!と(ひらめ)いたように


「避妊にも使えるそうですわ!その辺の薬の取引実態を市で調査しましょうか?」


「いや、それよりその家主の中年女の身元を調べてくれ。

使い道を知りたい。」


「はい。では手配いたします。」


ん?


ということは、数日前、左大臣邸の侍女たちが話してた


『妹が一日中小屋にいるだけで、自由にすごすだけで一合の米をもらえた』


という会話は、『少女の経血売買』のこと?


ん~~~~~???!!!


何かが頭に引っかかる!!!


臺与(とよ)が知り合いからもらったという鉄釉(てつゆう)の陶器と、枇杷屋敷で見たそれを作った陶芸家・天目(てんもく)


その陶芸家・天目(てんもく)は十歳前後の幼な妻と結婚するほどの『少女好き』。


その趣味嗜好が今だ変わらず、こだわりのある陶器づくりに活かしてるとすれば?


ハッ!


と一つの考えが私の頭の中に浮かんだ。


でも確かめるには臺与(とよ)にあることを聞いてみないと!


今すぐに?!それとも後にする?どうしよう?


悩んでるうちに、


ガサゴソッ!


と時平さまが立ち上がる気配がし、臺与(とよ)の頭の向こうに立ち姿の半分が見えた。


「うむ。よろしく頼む。では直廬(じきろ)に戻る。」


「あっ!お待ちください!いいお酒がありますのよ!」


臺与(とよ)の焦った声。


「いや、結構だ。今夜は早く休みたい。」


上ずったなまめかしい声で


「今夜は冷え込みますわ!

ここで、温まっていらして!人肌で温めて差し上げたいのです。」


臺与(とよ)が袖にしがみつき、後姿(うしろすがた)の時平さまが立ち止まる。


(あき)れたようにため息をつき


「何度も言ってるだろう?

私は女子(おなご)に不能だと。

試してみたが無駄だったじゃないか!」


はぁっ???!!!


じゃ、やっぱり・・・・!!!


胸のドキドキが大きくなり音が向こうまで聞こえないかな!?と心配になった。


臺与(とよ)が泣き出しそうな甘え声で


「いいえっ!心配なさらないで!もう一度試してみましょう?!

そこへ横になってくださいな。

それにもし今回もダメでもわたくしはあなたを、軽んじたり、侮ったり、決してしません!

誓いますわっ!さ、どうぞ横になってちょうだいっ!

わたくしを信じて、もう一度試してみましょう?!

ね、安心なさってください!

どんなあなたでも、もし、そうでも、臺与(とよ)はあなたを愛しております。

この先も、お慕いし続けます。

誰かと違って、決して見捨てたりしません。

あなたを男性として立派な殿方として尊敬しておりますわ!」


悲劇のヒロインみたいに半分悲鳴のような声で切々(せつせつ)と訴える。


けど、内容から察するに、兄さまの言う通り、『臺与(とよ)を抱いてない』のは確かなのね?!


疑ってごめんなさい!


それに臺与(とよ)ったら『私なんてモチロン最後まで済ませたわ!』なんてすぐにバレる嘘をなぜつくの??!!


だけど、どうするの??


もう一度?試すの??!!


ドキドキがとまらず、息をのんで目の前の光景に釘付けになる。

(その9へつづく)


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