EP545:伊予の物語「黒鉄の拘泥(くろがねのこうでい)」 その3~竹丸、意外な本性を露にする~
竹丸がルンルンしながら横に並び
「知ってますか?今年は柿と蜜柑が食べ放題なんです!
鈴なりにできたので!
ってことは来年は収穫が少ないかもですが、今のうちに腹いっぱいに食べてるのでいいんです。
ホラ!手が黄色くなりました!」
むっちりとした手のひらを私に見せてくる。
「よかったわね!」
愛想笑いで微笑み、気まずいので会話の糸口を探りながら、でも聞きたいことを、曖昧に聞いてみる。
「あのぉ~~、竹丸って、女子が好き?それとも男子?」
竹丸がギクッ!と焦り、ムッとしたように
「な、なんですかっ!どっちでもいいでしょっ!姫に関係ないでしょっ!」
私はう~~~んと考えながら言葉を選び
「ん。まぁ、いいんだけど、その、好きになったら、その人としか、その、そういう行為ってできないものなの?
それとも、恋愛中でも、誘惑があれば、そういう行為はできるものなの?」
竹丸が怪訝な表情で私を探るように見つめ
「どういう意味ですか?
姫は浮気するつもりなんですか?
誘惑って影男の事ですか?」
ヤバッ!
ウウンと必死で首を横に振り
「違うわよっ!一般論を聞きたいのっ!」
竹丸は肩をすくめ
「それなら、そうですね、八割の普通の男なら誘惑にのります!
据え膳食わぬは男の恥といいますからね!
よっぽど性欲が弱いとか、男性として自信がないとか、機能に問題がある場合を除けば、ですけど。」
言ったあと、私をチラッと糸のような細い横目で見て含み笑いして
「あとの二割の男は誘いにのらないでしょうね。
律儀に恋人に貞操を誓ってるとか、病的にひとりを愛してるとか。」
えっ?!
今度は私が焦り
「そ、そうなの?!そんなこともあるのね~~~!
で、竹丸はどうなの?」
口では平気なフリをした。
竹丸は困ったように腕組みして
「う~~~ん、そうですね~~~~。過去にそれほど一途になったことがないのでわかりません!
あっ!でも好みのタイプが現れればそっちに心変わりすると思います!!
一度きりの人生、後悔したくないので、すぐに乗り換えますっ!」
キッパリと言い切ったけど、胸を張ること??!!
「複数と付き合うってこと?」
竹丸はウンと頷き
「そうです!経済的に余裕があれば側室なんて多ければ多いほどいいですからね~~~!」
ムチムチコロコロで可愛らしいと思えるほど温和でのんきな雰囲気の竹丸から、側室は多いほうがいい!なんて過激な言葉が飛び出したので、違和感?裏切られた感?にギョッ!としてちょっと距離をとった。
私が引いてるのにも気づかず、夢中になって独り言のように
「でも私の好みは姫のようなガサツな女子じゃないですよっ!!
姫って身だしなみがだらしないでしょ?汚部屋だし、片付けられない人でしょ?
私は、どこからどう見ても!の美人で、優雅な仕草の端々に気品が溢れ出て、なおかつ線が細くて柳腰でこまやかな気遣いができて有能で頭の回転が速くて会話が面白くて色っぽくて優しくて・・・・・」
際限なく寝ぼけた戯言をしゃべり続ける。
はぁっ??!!
そんな高性能・好条件な希少人材が竹丸を好きになる??!!
寝言は寝て言えっつーーーのっっ!!
馬鹿げた妄想の『理想の恋人像』をまくしたてる竹丸を無視して歩いてるうちにあることを閃いた。
「そうだっ!竹丸っ!これから枇杷屋敷に行くことにするから!」
源昇さまのお屋敷と反対方向なので立ち止まると、竹丸が呆れたように
「はっ??!!もう二条大路まできたのに!引き返すんですかっ!」
「じゃ、ついてこなくていいからっ!!一人で行くねっ!」
手を振って別れようとすると、イラ立ったように口をとがらせ
「四郎さまと約束してるんですか?!それとも予約なしで押し掛けるんですか?」
「約束はしてないけど、どーーーーしても、今すぐ、聞きたいことがあるから!」
足早に歩きだすと、小走りで竹丸が並んで歩き
「若殿に告げ口しますよっ!いいんですねっ?!」
フンッ!とソッポを向いて
「好きにすればいいわっ!」
私たち別れたんだからっ!
と口から出かけたけど、あとがうるさいので言葉を飲み込んだ。
ネチネチと責められることは火を見るよりも明らか。
竹丸って結局『時平さまガチ勢』なのよね。多分。
枇杷屋敷に到着し、門前で竹丸と別れた。
門番はいないので、門から中に入り、侍所を訪ね来訪を告げる。
雑色の定和さんが出て来てくれて
「あれ?伊予さん?四郎さまとお約束がありましたか?」
「いいえ。突然お邪魔したんです!
忠平さまに聞きたいことがあって。
御在宅ですか?」
定和さんが微笑み
「ええ。ですが今、来客がありまして。
四郎さまのお知り合いの有名な陶芸家の天目さんだそうで、毎回、作品を直接持ってきていただいて、そこから何品か購入なさるのです。」
へぇ~~~~!!!
有名な陶器?!ちょっと見たいっ!
「じゃ、ここで終わるまで待とうかな?!
と思ったけど・・・・!
あっ!いいこと思いついたっ!
ねっ!こういうのはどう?」
と定和さんに手を合わせて、あることをお願いすると、一瞬、渋い顔をしたけど許可してもらった。
早速、厨に立ちよって白湯と菓子を盆にのせ侍女のフリをして主殿に近づいた。
侍女のフリをして驚かせる作戦!
主殿の前の廊下に座り、話しかけようと機会をうかがう。
御簾の中から忠平さまと男性の声が聞こえる。
(その4へつづく)




