EP539:伊予の物語「痴嫉の骨(ちしつのほね)」 その5~伊予、遊戯にさそわれる~
はぁ??!!
耳にするだけでキモいっっ!!キショいっっ!!寒気がするっっ!!
嫌悪感で鳥肌が立つっ!
下衆で粗野で乱暴で野蛮な、人道に悖る行いを、嬉々として語るなんてっ!!
嫌忌と憤りとで思わずブルッ!と身震いした。
そいつらの名前を頭に刻み込もうと、竹丸に名前を確認する。
「源号と源寄と誰ですって?ふんふん・・・・藤原保家と藤原俊方?よしっ!憶えたっ!!
一生忘れないし会ったら会ったで他の女子にもこの話は伝えて、この世の全ての女子がそいつらを無視するように仕向けて、事実上宮中から、いえ地上から男として排除してやるっ!!」
と鼻息荒くして息巻いてたけどアレ?って引っかかって
「臺与?って言ったわよね?臺与がその会合に参加してたの?」
竹丸が当然!というようにウンと頷き
「臺与はいつも若殿にくっついて参加してます!
というか若殿が臺与にお願いしてついていってもらってるんです!
ご年配の男性を篭絡するには魔性の女パワーは必需品ですからっ!」
「はぁっ??!!ってことは十日前の会合にも参加してたのっ??!
尚侍の仕事がクソ忙しいときにもっ??!!」
竹丸がギクッ!と青ざめ
「あっ!これは内緒にするはずでしたっ!若殿には言わないでくださいっ!」
ということは・・・・もしかして・・・・・っっ!!
フツフツと怒りが沸き上がり
「もしかして、今日も、臺与がここに、この源昇さまのお屋敷に、その会合に、参加してるのっ??!!」
私を十日近く無視してっ!その間、臺与と一緒にあちこちで酒宴っっ??!!
ついでにそのあとは一緒に朝まで過ごすのっ??!!共寝っ??!!同衾っ??!!
どこかで二人っきりでイチャついてるってワケっっ??!!
はぁ~~~~~???!!!
い~~~い度胸ねぇっっ!!!
怒り狂って、はらわたが煮えくり返り、『何と言って兄さまを問い詰めよう?』と血が煮えたぎるような怒りで頭がいっぱいになり上の空になってると、竹丸が
「で、若殿が姫を無視してた理由ですけどね、実は・・・・」
と言いかけると、中門廊から
「伊予さんっ!!芳子さまがお呼びですっ!」
と顔見知りの侍女に呼びかけられた。
ハッ!と我に返り、怒りでのぼせ切った頭を冷やそうと深呼吸して、無理してニッコリと微笑み
「はい、今行きます!」
返事して、竹丸には
「わかった。教えてくれてありがとう。」
手を振って別れた。
後ろから竹丸の間延びした声が
「あのぉ~~~!姫ぇ~~~~!まだ続きがあるんですけどぉ~~~~!」
と呼びかけるけど、私の頭は『どう兄さまを問い詰めるか?』でいっぱいだった。
椛更衣のいる東北の対に着くと、南側の妻戸が閉まったままだけど、廊下に臺与が座って中に話しかけてた。
はぁっ??!!
さっそく最大の敵に遭遇っっ!!??
ってまた怒りで頭に血が上りそうだったけど、深呼吸していったん落ち着く。
臺与の側に立ち何事もない平静な声で
「あの、椛更衣に御用ですか?元尚侍の臺与さん?」
臺与が私の方を見て、一瞬イラついたように頬を痙攣させたけど、すぐに平静を保ち
「あら!本当に伊予さんもご一緒だったのね!?
いいえ、大した御用じゃないのだけど、つい先ほど重要な会合が終わったばかりでね、公卿様方はお帰りになったのだけど、左大臣さまと歳が近い若君たちがいらして、親睦を深めるためにご一緒に遊戯をなさることになったから、椛更衣もどうかしらとお誘いに来たんです。」
もちろん、帝の妃である椛更衣が若い殿方に混じって顔を曝して遊ぶなんて言語道断な愚行!!
几帳の後ろに隠れてたって、得体のしれない若い殿方と同席するなんてもってのほかの規則違反っ!!
なので、オホンッ!と咳払いし
「芳子さまは尊いご身分であることはご存じよね?
あなたのようにどこへ行くにも殿方同伴なんて考えるだけでも汚らわしい!
お断りよっ!早くどこかへ行ってちょうだいっ!!」
シッシッ!
と追い払う仕草をし、嫌悪感に満ちた表情で臺与を見つめる。
私の敵意剥きだしのあからさまな侮蔑にも、臺与はひるまず余裕の笑みを浮かべ
「まぁ!もちろん本当に椛更衣をお誘いしようなんて思ってないわ!
ただ左大臣さまがあなたがいるなら声をかけた方がいいからとおっしゃって、私を使いに出したのです。
あなたはどうなの?
私がいる場所の同じ空気は吸いたくないなら来なくていいわよ!
そうね、やめた方が利口かも?!
同席すれば私と彼の親しい関係を見て嫉妬で気が狂うかも?!フフフッ!お気の毒さまっ!」
楽しそうにクスクス笑う。
はぁっっっ???!!!
いま完っっっ全っにっっ!喧嘩売ったよねっ??!!
こーーーなったらいってやるっ!!
見せつけてみろってのっ!!
私の目の前でイチャつけるもんならイチャついてみろっっ!!!
と怒りで顔を真っ赤にして、頭から湯気を出して、椛更衣に
「ちょっと行って兄さまを懲らしめてきますっっ!!」
とだけ言い残して、臺与について西の対へ渡った。
西の対には、北側の御座に狩衣・立て烏帽子姿の兄さま、東側に高級な狩衣の若者二人、西側に一人が座ってた。
入ってすぐの南側にある御座に座るように臺与が指し示すので一応扇で鼻から下を隠しながら会釈して
「姫様の侍女の伊予です。皆さまよろしくお願いいたします。」
と言って着席した。
臺与は何の挨拶もなく北側の兄さまの隣に着席した。
プチッ!
さっきから際限なく怒りの神経?堪忍袋の緒?が切れ続けてる気がする。
(その6へつづく)




