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肩越しの青空  作者: 蒲公英
蛇足。
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粗品進呈

熊の一人称です。

静音が差し出したトランクスは熨斗のラインがあり、中央に「粗品」と書いてある。

「会社の宴会の景品。サイズがXLだからさ、当たった子が要らないって」

俺もこんなもの、欲しくない。熨斗つきは結構だが、中身の問題だ。

「粗品なのか、俺は?」

「知らなーい。豪華なわけ?」

豪華かと訊かれると、肯定するには日本人として謙譲の美徳が許さない。

「口に入れてるじゃないか、上にも下にも」

「そういう言い方、アリ?大体、そういう時は既に臨戦態勢っていうか……しげしげと見るもんじゃないし」

つまり、普段の状態を見たことがないから、という意味か。

「見るか?」

「いらない」

にべにも無く断られると、是が非でも見てもらわなくてはならない気分になる。

粗品だと認定されると、かなり悲しいが。


ちょいちょい、と肩を叩いて、スウェットを下げてみせると、腹にパンチが来た。

「何その変態行為!しまいなさい!」

「いや、粗品かどうか、だな」

「比較対象がないのに、わかるわけないじゃないの!」

「弟がいるだろうが」

「見るか、そんなもん!」

そんなもん扱いしたら、男が可哀想じゃないか。

それに、言いながら静音の視線はそこに固定している。

男は女の身体を興味深くしげしげと観察するけど、見られることは意外に少ない。

う、なんだか自分の行為がちょっと・・・あ、なんか雲行きが・・・


「変態」

「生理現象だ!」

もしも静音の腹の中から出てきた息子ならば、独り立ちは祝うべきものだ。

けれどもこの息子さんは俺が生まれた時から、俺自身と一緒に仲良く育ってきた。

そいつが今、独り立ちなさろうとしているわけだ、静音の視線の下で。

まだ早いと焦って言い聞かせても、反抗期の息子は聞く耳なんか持たない。

静音の、ものすごく冷たい視線に晒されながら、息子さんは完全独立なさった。

粗品扱いされたので、見栄を張ったのかも知れない。


こうなると、息子さんは当然行き場所が欲しいわけだ。

片手に粗品熨斗つきトランクスを握り、スウェットは腰の下のまま、静音を肩に担ぐ。

「ちょ……昭文、降ろせっ!」

「いやまあ、この際だから」

「何の際よ!」

「粗品進呈と行こうと思って」

「いーらーなーいーっ!」

じたばたしている静音を担いだまま、俺は居間と寝室の間の引き戸を開けた。


fin.

くだらないって、怒んないでね。

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