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ブルーウォーター公国物語(続グランディ王国物語のそのまた続き)  作者: 雷鳥文庫


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夏来ぬと目にはさやかに見えねども。見えなくとも見張っちゃう。

「そうですか、海に行くんですか…」

ショコラさんが夜、話を聞いて羨ましそうにした。


「カレーヌ様のお気持ちがわかるだけに、私はご一緒出来ませんからねえ。」

下を向いて複雑な顔をしながら、厨房の片付けを手伝ってくれている。

「ふふん、今度ヨーゼフの野郎と行けばいいじゃねえか。アイツは自分の筋肉美をアピールできて嬉しいだろうよ。」


アンちゃんが薄く笑う。その手はシルバー(銀食器)を磨いている。

(子供達は今、母が寝かしつけてくれている。)


…うん?もう一緒に住んでるだろうに筋肉美も何もないんじゃ?


「…ショコラの水着姿を見せたくないと反対するかもしれませんねえ。」

ブラッキー君が苦いものを噛んだような顔で言う。

その手は高速でテーブルを拭いていた。


なるほど。ショコラさん巨乳だからな。


「何言ってンのよ。兄さん。」


ショコラさんは苦笑した。


「ええー、海かあ。良いですねえ。」

心の底から羨ましそうな声をあげたのはロランだ。

皿を拭いている。落とすんじゃないわよ。

「そうか。貴方達もくる?アニーやリサも。」

「良いんですか!レイカ様!」「嬉しい!」

二人とも奥から顔を出した。


「…いいなあ。」

おや?じっとりとした視線を感じる。

コハク国の双子、スピカさんとアルク君だ。


カッシ、カッシ。

この音は?


わあ。包丁を研いでいるのか。


「じゃ…じゃあ貴方達もくる?」


「いいんですか!」

「かいすいよくなんて、うきうきです!」

「アッハイ。」

二人の足はステップを踏んでいる。

包丁はちゃんと置きなさいよ。つるぎの舞かよ。


「おい、はしゃぐなよ。ホコリが立つだろ。仕方ないなあ。お義母さんのところのドギマギも連れていくかあ。」

アンちゃんが苦笑する。

「ええ、会いたいです。」

リサの目が輝く。


「同じ孤児院出身だものねえ。」

ショコラさんがおっとりと笑う。


「大人数だな。ハンゾーとオレだけじゃな。…ブラッキー、オマエも来い。」

「はっ、アンディ様。」


きゃあきゃあとはしゃぐ子供達。

「そんなに嬉しいのか。」

ブラッキー君が呆れている。

「兄さん、リサはね。孤児院にいたときからドギー君を慕っていたみたいよ。」

ショコラさんがヒソヒソ声で言う。


「え、そうか。」

「兄さんはニブイからね。」

「それよりショコラ、オマエこそヨーゼフの奴とは上手くいってるのかよ。」


「まあ。」

ショコラさんが目を丸くしてそして艶然と微笑んだ。

「野暮なこと言うわね。もちろんよ。

そりゃ、エメリンのことは気になったけど。」

なんと。

「何を今更。」

ブラッキー君が呆れ顔をしている。


「だからね、こないだ覗いてみたんですよ。」

「え?まさか覗いたって?」

「ふふ、レイカさん。ちょっとね?」


ショコラさん?指でお皿を回してるの?

まるで、

「いつもより沢山回しております!これでギャラおんなじ!」

の芸みたいだよ。


「ケッ。ショコラお前、学校を警備してる忍びの若いもんが驚いてたぞ。

ショコラさんが学校を見張ってますが、何事ですか、特別の任務ですか?ってな!」

アンちゃんが吐き捨てる。

「ここ二、三日、エメリン先生を尾行してたよな?」


まあっ。


「おい、ショコラ。」

動揺するブラッキー君。

舌を出すショコラさん。そして皿を置いた。


「やはりアンディ様にはお見通しで。でも、ま。エメリン先生は全くヨーゼフさんに興味がないし。彼もそうみたいでした。」


「だろ。」


「ええ、でも学校のエメリンは良い先生ですね。生徒たちに慕われるのは良くわかります。

ミルドル坊ちゃんだけじゃなくて、他の男生徒にも。」

真顔になる。


「まあなア。他所の国から来て言葉が今ひとつの子供達に、補講をしてあげたり、課題プリントを出してるだろ。

熱心だよな。」

「ええ。」


マーズさんがせっせとあちこちの孤児院から、少年合唱団をスカウトしていると聞く。

天使の歌声には期限があるからね。継続的に勧誘しているのだ。

表向きは、

「王妃様の御命令で少年合唱団を存続する為です。」

となっている。


もちろん、そのあと音楽コースに進んで将来そういう仕事につけるのだ。

それでどんどん他所の国から歌が上手い孤児が入ってくるのである。

(不幸な孤児も減ると言う訳だ。)


「もうレプトンの野郎には未練が無いといいな。

あの先生が新しい恋を見つけて、またポエムを書いてくれないかな。

王妃様が次作を期待してらっしゃるんだ。」

アンちゃんが苦笑した。



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