それは言霊(ことだま)。
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「ところでヴィヴィアンナ様。少しお痩せになったのでは?」
母の言葉に、
「ええ、産後まもないと言えばそうですからね…」
頷くヴィヴィアンナ様。
「そうですね、短期間で五人のお子様ですからね。お身体は大事になさってください。」
メアリアンさんが真顔になる。
…私もそう思う。
本当、リード様。少しは考えなさいよ。
出産は女性の身体に負担がかかるのだ。
そりゃまだヴィヴィアンナ様はお若いし、鍛えておいでだったから体力もおありだろうけどさ。
王家の血を継ぐ子供達がいくら必要とはいえ。
「うーん、最近胃が疲れているみたいで。こってりとした…会食が多かったですから。」
儚げに笑うヴィヴィアンナ様。
なるほど…お子様のお祝いに、国の内外から要人が駆け付けられて来られたのですね。
ヴィヴィアンナ様ファンのあの王族とかこの王族とか。
それのお相手でお疲れになったと。
アアシュラ様好みの料理は重たいからね!
「ヴィヴィアンナ様!王妃様もお好きなとろろ蕎麦やおろしそばはどうですか?
胃に優しいですよ。
アミラーゼやジアスターゼが貴女を守ってくれるはず!」
「ええと?」
目をパチクリとさせるヴィヴィアンナ様。
「もちろん。それだけではタンパク質が足りません!茶碗蒸しもつけちゃいます!
もうすぐお昼ですわ。是非召し上がっていってくださいな。」
「そうですわ。コハク国のスピカさんとアルクさんの作る蕎麦は絶品ですわよ!」
母の後押し。
「おいちいよ?」
ランの上目使い。
「ふふ。みなさんにそんなにお勧めされるなら断れませんね。」
強引にヴィヴィアンナ様にお食事をお出しした。
とろろ蕎麦である。茶碗蒸しと大根の煮物付き。
「…美味しい。胃に優しいです…。それにモルドール夫人やレイカさんの方から、優しい神獣様の気を感じます。
それが染み込んでいて…」
ほっとした顔になる麗人。
ええ、私も母も貴女のことを想っておりますよ。
「ふふ、王妃様がお気に入りなのはわかります。このお蕎麦も、ここのレストランも。」
「…いつでもでまえいたします!」
「わたくしどもにおまかせを!」
コハク国の双子も口を揃えるのだった。
「ええ。みなさんありがとう。」
微笑みを残してヴィヴィアンナ様はお帰りになった。
そして本当にお蕎麦の出前を頼まれることが、その後何度かあったのである。
「ねえ、レイカちゃん。ワタシ少し心配になったワよ。」
夜、寝室でポツリとアンちゃんが言う。
「…ランのこと?」
「そう。ヴィヴィアンナ様に魅せられたのはまあ、いい。」
「…つまりお子様のフロル王子様にも惹かれるかも?てことね。
将来。」
「…うん。」
そこでアンちゃんはため息をつく。
「フロル様はご次男であるし、長男のエドガー様はお相手のミネルヴァちゃんと立派にお世継ぎの夫婦になるだろう。
万が一、ランがフロル様と結ばれても表舞台には立たなくていいだろうけど。」
そこで私をじっと見る。
「出来るなら王族には嫁がせたくないな。」
わかってる。
「でもアンちゃん。さっきヴィヴィアンナ様がおっしゃっていたけども、フロル様はリード様似なんでしょ。」
「あ。そうか。」
アンちゃんが肩からチカラを抜く。
「ディアナ様は…ヴィヴィアンナ様にそっくりだったわよね。」
私の言葉に頷くアンちゃん。
「ああ。あまりお会いした事はないけど。」
リード様の第三子、ディアナ様はウチの子より三ヶ月後にお生まれになった。
ヴィヴィアンナ様にクリソツの美少女ぶりに誘拐されてはいけないと、ほとんど外に出されてない。
私だって二回か三回しか会ってない。
「同じ学園に通う同級生になられるわよね。
いくらフロル王子様が学園でうちのランに寄って来られても…ねえ?」
「なるほど。ヴィヴィアンナ様にそっくりの女友達の方に夢中になるかもしれないナア。」
アンちゃんはニヤリとした。
「こればっかりはわからないけど。」
でも、目に浮かぶのだった。
アンちゃん仕込みの護衛術を身につけた我が娘が、
「我が姫♡お守りいたします!」
とディアナ姫を守る姿が。
さて、どうなることやら。
「愛の言霊」から。




