無敵の人。
誤字報告ありがとうございます。
「レイカ様。こちらに枇杷もございますよ。」
ショコラママがカゴに山盛りになった枇杷を持ってきてくれた。
「うふふ。作業室の中に布を掛けておいたのです。
白狐様に気が付かれなくて良かったですわ。」
ショコラさんが微笑む。
「ありがとう!ショコラさん!」
「今、さくらんぼでお腹いっぱいでしょ。お土産にお包みしますからね。」
ああ…嬉しいわ。
「ねえ、レイカ。そんなに枇杷が好きだったの?」
母が不思議そうに言う。
「お母さん…これは前世からの好みなの。
庭に枇杷を植えたいくらいだったのよ。
でも迷信があって義理の母がいい顔をしなかったの。」
なんかねえ。イチジクにも通じる迷信だけど。
病人が出るとか死人が出るとか…人のうめき声を聞いて育つと言うとか。
んな、馬鹿な。
「あらア。じゃ今度キューちゃんに生やしてもらいましょ。
ウチの庭に。さくらんぼと枇杷の木をね。
それくらいの場所はあるわよ。」
母が手をたたいて言う。
「…いいわよ、お母さん。とんでもない。」
顔の前で手を振る。
「…はは、ははは。お義母さんの言う事なら聞いてくれるかも知れませんが。」
アンちゃんの顔も引き攣っている。
「そうだわ。龍太郎ちゃんにも口添えしてもらいましょ?枇杷とさくらんぼをお裾分けすると言えばねえ?」
やめて。
「ははっ。龍の字はそりゃ、果物を分けなくてもお義母さんの頼みならひと肌脱ぐでしょ。」
ははっ。とオクターブ高い声で乾いた笑いを漏らすアンちゃん。
その笑い声。舞浜のおネズミ様のようでしたよ。
「御母堂様、こちらの枇杷はラーラさんに。」
「ありがとう、ショコラさん。」
「とにかく、お母さん。私の為に二大神獣へのおねだりはやめてよね!」
真顔で釘をさして帰宅した。
なのに。
「レイカ。はい、枇杷とね、さくらんぼ。枇杷はね、ジャムも作ってみたわよ?それとこっちはコンポート。ゼリーにいれるといいわ。」
三日後にニコニコして私にフルーツを差し出す母。
――――やりやがったな。
「うわあ。このビワ大きいこと!色が金色みたいですよ、黄金ビワですか、これは。」
アンちゃんの声は呆れている。
黄金枇杷。
琵琶法師が持つ金ピカな楽器じゃないわよね。
なんか頭がくらりとして思考が混乱しているワタクシ。
でもこの枇杷の大きさ。美しさ。
みずみずしさ。
「色が濃いわあ。濃いオレンジ色、金褐色かしら…」
「ほら、枇杷が貴女に食べて!っていってるわよお!」
「お母さん、枇杷は口を聞きません。」
「まあ、冷めてるわね。
龍太郎ちゃんなんか大喜びだったわよ。キューちゃんもね、すぐ生やしてくれたの。」
「やはり天使の分け前付き?」
「そうそう。」
ニコニコして話を続ける母。
「昨日ね、指輪でキューちゃんを呼び出したの。」
「アッハイ。」
「その前にシンゴ君からハイド君を通じて龍太郎ちゃんには連絡してもらったの。
そしたら文字通り飛んできてね。」
目に浮かびます。
「お母さん…二大神獣に私の為に迷惑をかけるなんて…」
「龍太郎ちゃんは嫌がってなかったわよ。」
そりゃ、お母さんの前ではそうかもねえ。
「もちろん、龍の字は自分も食べたいから、キューちゃんに頼んでくれたんでしょう。」
アンちゃんはため息を吐く。
「そうなの。あの子食いしん坊だから。」
そうですね…。
目に浮かぶわあ。
「パイセン。オッカサンの頼みダ。オイラも頼むヨ!」
龍太郎君がニコニコしながらキューちゃんに頼む姿。
「それにね。ミルドルにお友達も呼ぶように言ってたの。
美味しいものはみんなで食べるといいでしょ。」
「ザックとか?リッキーとドンとか?」
「もちろん、ケイトちゃんもね。」
まあ、それは。
「相変わらずみんなで仲良くしてるみたいよ。
それでね、さくらんぼや枇杷をみんなでとってたべて。
子供達が楽しそうだから、キューちゃんや龍太郎君も喜んでいたわ。」
「一度に鈴なりになったでしょうからね。枇杷は足が早いですし。」
アンちゃんの声に、
「そうなの。食べたあとはみんなでジャムやコンポートにしたの。
ケイトちゃんにカレーヌ様にお裾分けを届けてもらうように頼んだわ。
あの子、まだカレーヌ様のお店で働いているみたいなのよ。」
母が頷く。
「荷物が重たくなったから、男の子達が持ってあげてついていったの。」
「そうですか。」
アンちゃんがニヤリとする。
ふうん。相変わらずケイトちゃんはモテてるんだな。
「カレーヌ様もスイーツに枇杷のジャムやコンポートを使えて、喜ばれたでしょ。」
アンちゃんの言葉に私も頷く。
コンポートはゼリーにしておやつにした。
美味しかった。




