黄金のさくらんぼって。ありそうで(ウフン)無さそうで(ゴックン)。ほらほーら白狐が見えてきた。
誤字報告ありがとうございます。
次の日の早朝。
六月の爽やかな朝。ツユクサを見ながらお出かけです。
さあここはどこ?果樹園です。わくわくドキドキのさくらんぼ狩りなのよ!
さくらんぼ狩りは前世含めて初めてよ、嬉しい。
「レイカ様…アンディ様。そしてお子様方。良くぞおいでくださいました。」
ショコラママ達がお手伝いしている農園に来たよ。
農園主がお出迎えしてくれている。
人の良さそうな初老の男性だ。
その顔が引き攣っているのは黒い悪魔のアンちゃんが怖いのかな。
ごめんなさいねえ。
「ふふん、一家で押しかけて悪かったワね?」
「いいえ、アンディ様。フルーツ狩りは朝の方がようございます。
昼になると果物が温まってしまいますからね。」
そうなの。
前世でもイチゴ狩りやみかん狩りを何回もやったけど(子供が小さい頃ね)、お昼になるとイチゴがぬるくなってたわよ。
ああ、好きだったわ。石垣イチゴ。
初めて見た時には、
「これが!教科書で見た石垣イチゴ!これなのね!」
と感激、感心しちゃいましたよ。
(ちなみに近くの登呂遺跡を見て「ああ、これも教科書で見た…」
三保の松原に寄っては「あの昔話で有名な…」と心が震えたものです。)
閑話休題。
「さあ、お子様達は届かないところは取ってもらってね。」
綺麗でツヤツヤしたさくらんぼです。
美味しそう。佐藤錦みたい。
アメリカンチェリーよりもそっちに近いなあ。
「ランちゃん、アスカちゃん、ガルドルくん。はい、どうぞ。」
「これなんか美味しそうですよ。」
ブラッキー君とショコラさんがニコニコして取ってくれる。
今日はガルドルは母が連れて来た。メアリアンさん夫婦が仕事なのでね。
「きれえ。」
「つるぴか。」
「おいしそう!」
子供達も大喜びだ。
「ちゃんとタネは出すんだよ。」
父も声をかける。
あらまあ、美味しい。
「やっと食べられて良かったわね、レイカちゃん。」
うん、うん。
「あらま、泣く事ないじゃないの。レイカ。」
母が呆れ顔で言う。
な、ナミダなんかじゃないわ。私の頬を伝うのは。こんな事で泣いたりしない。
と、脳内を松山○春の曲が流れていく。
「美味しいものを食べて感極まったのよ。」
「そんなにウチのさくらんぼを気に入って下さるとは!」
農場主も感激している。
「本当、美味しいわ。ラーラさんにもお土産に少し買って帰りましょうね。」
と母が言い、
「そうですね。」
ショコラさんが微笑む。
その時、アンちゃんが片眉をあげた。
「背中がうずく…」
え?どんな厨二病?
「背中のツッチーが反応してるのよ。」
説明しよう!
アンちゃんの背中にはツチノコのツッチーが張り付いているのだ!
薄く固く、鎧代わりになる。
「ネモさんが来るワね。」
なんと。
そこに青い光が満ちる。
「おはようございます、みなさん。」
肩に白猫のタマちゃんをのせ、キューちゃんを従えてネモさんが現れた。
「こ!これはネモ様!」
農園主が平伏する。
「久しぶりだね。立派なさくらんぼの農園になったね。」
微笑むネモさん。
「そうか。ブルーウォーターの農園だものネ。ネモさんが関わってないわけないかあ。」
アンちゃんが頭を掻く。
「あら、キューちゃん。今日は容赦なく食べないでね。」
キュー…。
母の指摘に耳をペタンと伏せる。
気まずそうだぞ、可愛いぞ!
神獣に文句を言える母に驚く農場主にショコラさんのご両親。
「ははは。モルドール夫人。大丈夫ですよ。」
ネモさんが肩の上のタマちゃんに手をやる。
白猫は顔をネモさんの手に擦り付けて甘えている。
「タマにゃんが教えてくれたのですよ。レイカさんが食べたがっていたさくらんぼをキューちゃんが食べてしまったのだと。」
「そういえば、タマちゃんがドアから顔を半分出してのぞいていたワ…」
アンちゃんが口に手をあてる。
何、その猫版家政婦は見た!は。
「だからね?キューちゃん。レイカさんたちに特別なさくらんぼを食べてもらおうね。」
キュー。
「うん、この中央のところが良いんじゃないかな。」
ネモさんの声に近くの枝のさくらんぼをパクパクと食べるキューちゃん。
そして、
フッ!
タネを吐き出す。
みるみるうちに芽がでて膨らんで、はーなが咲いて…♫
というよりも。
「花咲かじいさんのポチ?」
さくらんぼのタネからさくらんぼの木が生える。
花が咲く。ああ、桜の花だ。
「わ、私は夢を見てるのでしょうか。」
「きっとそう。」
ショコラママとパパは口をあんぐりとあける。
「神獣様…何というお力。」
農場主は座りこんでいる。腰が抜けたのかな。
そして満開の花は実をつけていく。
早送りの映画を見ているようだ。
そういえば理科の時間で植物の成長の過程をテレビで見たような気もする。それに近い。
(モヤシだったかな?)
「実の色が黄金色?」
アンちゃんも流石に驚いている。
「サービスだそうですよ。」
微笑むネモさんの後ろでたわわに実った枝が、ゆれる。
黄色いさくらんぼ…いや、やはり黄金色に輝いている。
「この枝はね、キューちゃんの取り分だそうですよ。」
てっぺんの枝のさくらんぼがふっ、と消えた。
「実がなるたびにキューちゃんのお口に自動的に入るそうなんです。」
ネモさんの声でキューちゃんを見ると、あら、ほっぺが膨らんでいるわ。
「天使の分け前というワケね。」
アンちゃん、ウイスキーじゃないんだから。
その後、白狐とネモさんは消えていった。
残された私達はお腹いっぱい黄金のさくらんぼを食べたのだった。
「黄色いさくらんぼ」
私の記憶にあるのはゴールデンハーフだったかな。




